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2026.10.30

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引退した「伝説の勇者」はダンジョンの測量士になっていた──。地図で無双するダンジョン攻略

名作と呼ばれる物語やロールプレイングゲームなどを通じて、「ダンジョン」というものを知った方も多いと思います。現実ではそうそう足を踏み入れる場所ではありませんが、ファンタジーの世界においては必須と言えるほど、その存在感は大きくなりました。

本作では、そんなダンジョンに焦点を当て、当然のように用意されている“ダンジョンの地図”の秘密や、地図に関わる極秘プロジェクトに触れつつ、測量士として活躍する元“伝説の勇者”と、彼と行動を共にする低ランクの女性勇者を描く冒険譚です。

Eランク勇者と元伝説の勇者がバディを組む!

20年前の国王軍と魔王軍による壮絶な戦いで勇者と魔王が相討ちとなり、戦争は休止。国王軍は来るべき魔王軍との再戦に備えて毎年勇者を育てている、というのが本作の世界設定。そして10年ぶりに誕生した女性勇者・ダリアがストーリーを牽引します。

この世界の勇者の条件とは、伝説の剣に選ばれること。伝説の剣を抜くことができれば、勇者と認定されます。彼らを中心にパーティを組み、ダンジョンを攻略してモンスターを倒すことでランクが上昇。しかしダリアだけは最低のEランクから上にいけず、いつしかパーティメンバーからも見限られてしまい、手持ちの地図を頼りに、ソロでダンジョンを冒険しているというのが現状です。

そんななか、ダンジョン内で行き倒れている男を発見。介抱しようと近づくと……
出会いは最悪、ってやつです。この、二日酔いの飲んだくれたおっさん、こう見えて手には勇者の紋章を宿し、ダリアでは太刀打ちできない強敵モンスターも軽々と一刀両断。実はこのおっさん、かつて伝説と呼ばれ、魔王と一戦交えた偉大な勇者・グラハムだったのです。
確かに強いが、二日酔いでゲロを吐く……。ダリアは、憧れていた勇者像との乖離に戸惑いながらも、彼が抱える問題、そして彼の本当の意志を知り、いつしか彼女自身にも変化が起きていることに気づく。

落ちこぼれ勇者であるダリア、そして昔と今で大きく変わった、飲んだくれの元勇者グラハム。不遇のエピソードや謎も散りばめて、ふたりのキャラクターに対する興味がむくむくと湧いてくる、物語のオープニングにふさわしい展開に期待も高まります。

測量士の仕事が果たす、重大な役目とは

伝説と呼ばれた勇者は、他の勇者とは異なり、モンスターたちを倒しレベルを上げるためダンジョンにいるのではなく、ダンジョンそのものが目的でした。彼はダンジョンを調べ、測量して、地図を作っていたのです。
憧れていた伝説の人は、もう勇者としての役を降りている。でも、これまでのダリアの冒険を支えてきたのは、憧れなんていうふわっとした存在としての勇者ではなく、勇者をやめて測量士となったグラハムが作り続けていた地図だと気づくのです。

勇者からダンジョン測量士への転身自体、ユニークではありますが、その理由に一本筋が通っているところに、本作に対する信頼感が芽生えてきます。

魔王との戦いを経て、測量士に行きついた理由。端的に言えば、人材不足です。王国が育てた勇者たちは、ダンジョンをなかなか攻略できず、レベルも上がりません。その結果、SランクやAランク勇者が枯渇してしまったのです。魔王は滅びたわけではありません。いずれ再び相まみえる時がくる。しかし、優秀な勇者が不足していては、国王軍の敗北は火を見るよりも明らか。

そこで後輩勇者たちがダンジョンを攻略しやすいよう、地図を作って陰でサポートしていたのが、グラハムだったのです。
勇者であった自分の後に続く者たちへ、その道筋を整えるべく、一つひとつのダンジョンを地道にコツコツ踏破しながら地図を作る。誰に手柄をアピールするでもなく、ただ名もなきひとりの測量士として――。
目の前でゲロを吐いてたおっさんとは思えないくらい、眩しく見える……!

彼と行動を共にし、未知のエリアで遭遇する強大なモンスターたちを、グラハムの力も借りつつ倒していくことで、ダリアもEランクから卒業どころか、Sランクも夢じゃない。そんなグラハムの檄に感化され、少しずつ成長していくダリアの姿も、本作の大きな見どころとなります。

元伝説勇者にはタイムリミットが!?

グラハムはなぜ勇者を降りて、測量士になったのか。もちろん前述のように若き勇者たちがレベルアップに苦戦している現状はあるにせよ、伝説と呼ばれた勇者であれば、たったひとりでも大きな戦力には違いありません。この欠員は国王軍にとって大きな痛手です。

実はグラハムには、勇者を続けられない理由がありました。
魔王の呪い。今はまだAランクのモンスターでも軽々と倒せますが、いずれはこの呪いによって、弱小モンスターにすら勝てない身体になってしまうのかもしれません。

グラハムがそれを探しているようには見えませんでしたが、果たして、呪いを解く方法はあるのでしょうか。グラハムの勇者復帰を待ち望んでいる存在も明らかになり、話はより複雑な展開へと進んでいきます。

一方でグラハムも、どうやら単独で動いているわけではなさそう。グラハムの地図作りの背後には一体何があるのか。ダリアは勇者として覚醒できるのか。グラハムやダリア以外の勇者たちの存在も気になるところ。

勇者、そして測量士。それぞれが自分に課せられた役割を引き受け、様々な問題を抱えながらも目的に向かい進んでいく姿は、たとえEランクでも、飲んだくれでも美しくてカッコいい。彼らの生き様をしっかりと目に焼き付けたくなる、渋くてアツいファンタジーです!

レビュアー

ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。

X(旧twitter):@hoshino2009

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