『みいちゃんと山田さん』(以下、みい山)を読んだ人なら、新宿・歌舞伎町のキャバクラ「Ephemere」の店長を覚えているはずです。はげ頭に眼鏡、蝶ネクタイのおじさん。トラブル続きのみいちゃんを雇い入れたのもこの人です。とはいえ物語の中心はみいちゃんと山田さんで、店長はモブキャラもいいところでした。
売上のプレッシャーに理不尽な客、トラブル続きのキャスト。表向きは穏やかでも、内心は不満だらけ。店長のストレスはいつも限界寸前。そんな店長が終電後の街に出て、深夜メシでその日の疲れを清算していくグルメ+α漫画です。
1話は本編で見た、みいちゃんがグラスを割る場面から始まります。みいちゃんを追っていた目線が少しずつ店長へ移り、背景にいた人の顔にだんだんピントが合っていく。この入り方でまず吹き出します。原作のモブもいいところだった店長が、こんな脚光を浴びる日が来るとは。
続いて出てくるのが、本編の冒頭を完全にオマージュした「これは店長がストレスを解消するまでの12か月のお話」という見開きです。本編を読んだ人は、この一文で少しぎょっとしてしまうかも。
作画は『犯人たちの事件簿』の船津紳平先生
みい山を読んだ人は、本編での店長のふるまいも知っています。だからストレスまみれの姿を見ても、素直にかわいそうとは思いきれない。その居心地の悪さまで笑いにしてしまうところも、犯人たちの事件簿と同じ作りです。そして亜月タッチの再現もすごい。みいちゃんが降臨して走り回っています。
さて、この作品のテーマがストレス解消です。そしてストレス解消といえば、まずは食べること。そして後先考えずたくさん食べること。できればいいものを。であろうと思います。店長もすき焼き、餃子、カレーと、仕事終わりの空きっ腹に入れたいものを次々に食べていきます。
高い肉の値段に一瞬ひるんで「疲れた日こそ奮発する」と自分に言い聞かせるところなんて、勤め人としては身に覚えがありすぎます。肉を焼いて卵を溶いてくれる店員さんに、おふくろの姿を重ねたりもします。カレーの回では最近太ってきたのを気にしていて、それでも行ったれと突撃するのも身につまされます。
また、新宿・歌舞伎町あたりに行ったことがある人なら「これ、あのお店がモデルかな?」という場面がちょこちょこ出てきます。1話のすき焼き店「みいくら」も、看板の雰囲気や名前の響きでピンとくる人がいるはず。
夜の歌舞伎町らしいピンクな話や大人向けの話題も出てくるので、電車で読むときはちょっとだけ周りに気をつけてください。
原作の副読本として
本編はみいちゃんと山田さんの目線で進むので、店の内情や店長の事情はほとんど描かれていませんでした。本作では、あの1年のあいだ店長がどんな夜を過ごしていたのかがわかります。本編が完結したあとにこういう形で読めるのはうれしいですし、面白い取り組みだと思います。
みい山を読み終えて少し寂しくなっている方、歌舞伎町の夜の空気が好きな方、仕事終わりの一食に救われたことのある方におすすめしたい1冊です。








