情緒溢れる「人×怪異」の物語を鮮やかに描く、ろびこ先生の新境地
学生ラブコメとはまた違う、人と怪異だからこそ生まれる決定的な相違、そして背負った運命が引き起こす、愛しくて切ない連作短編集となっています。
第1話「吸血鬼ちゃん」から全開な“ろびこワールド”
人生に絶望し、自殺寸前のところを女子高生に救われたおじさん。気づけば部屋に連れ込まれており、目の前にいる女子高生にいきなり「血をくださいよ」と言われてしまう。実は彼女、吸血鬼。しかも、借金取りに追われている、ミステリアスな少女です。
短編という制約の中で、キャラクターの魅力や会話のやり取りから生まれる面白さ、そしてあっと驚くような物語の構成を見事なまでに整えて仕上げる手腕、さすがろびこ先生です。
「博士と人狼」は前後編の“大作”! 一冊を通して楽しめる連作ならではの醍醐味も
何やらわけありなヴェロクと、人狼を使って何を研究しているのか……謎に満ちた研究者の早瀬。最初はひたすら反発するだけだったヴェロクが、少しずつ早瀬と交流を深め、実験にも協力するようになる。けれども――
感情を揺さぶる名作「博士と人狼」、さらには、元猫だった小説家と男子高校生の「猫又おじさん」、父とサトリの息子を描いた「夕闇の庭」と、各話それぞれ人物とストーリーに個性があってめちゃくちゃ面白い作品が続きます。けれど第1話「吸血鬼ちゃん」に登場した女子高生吸血鬼とおじさんのふたりも、本作におけるファーストインパクトという効果とも相まって短編1話での退場はもったいないくらい魅力溢れるキャラクター。たった数十ページの出番なんて贅沢すぎると、余韻を引きずりながら読み進めていた、そんな私を思わぬかたちで喜ばせてくれたのが、彼女たちの再登場でした。
そう、本作は連作短編集。つまり全話が同じ世界の中で繋がっていて、第1話のふたりだけでなく、各話のキャラクターたちが様々な場面で顔を出してくれるのです。
短編集には短編集の魅力があります。その中でも、連作短編集の素晴らしいところは、短編の中で主役を担うキャラクターたちが相互に別話へと登場し合うことで、一冊を通して「オールスター集結」のような豪華さを味わえる点。そしてもう一つ、キャラクターや舞台(アパートや研究施設、喫茶店など)が変わっても、すべては繋がっているというワクワク感が生み出される点です。
最初に、あるキャラクターの再登場シーンを目にしたときは、思わずほくそえんでしまいました。これ見よがし、あるいは盛り上げるような描写など一切加えず、ナチュラルにそこにいる、という演出も最高なのです。
ファン(私)感涙! 巻末には『となりの怪物くん』番外編も収録!
ろびこ先生がこれまでの環境を変え、怪異という新たなジャンルに挑み、月刊ヤングマガジンにて短期連載した意欲的な本作。そのチャレンジが見事に結実したと言っても過言ではない、愛しくて切ない、可笑しくて悲しい4組5話の物語。『となりの怪物くん』番外編というプレゼントをスパイスに、新境地を開拓した最新のろびこ先生をぜひその目で確かめてください!








