『迷子の子猫にくちづけを』の主人公・天崎宙(あまさきそら・20歳)は、そんな矛盾を抱えています。
信じていた相手に妻子がいて、自分は単身赴任中の遊び相手にすぎなかった――。そんな裏切られた過去を持つ宙は、毎晩マッチングで出会った男たちと刹那な関係を繰り返していました。
その姿はまさに「迷子の子猫」そのもの。
そんな宙の前に現れたのが、警察官の朝霞要(あさかかなめ・24歳)でした。
ただし、要の恋愛対象は女性。いわゆるノンケで、彼自身も恋人と別れたばかりでした。
正反対に見えるふたりが、どうやって距離を縮めていくのか。ノンケの攻めが、どのように宙を特別な存在として意識していくのかも見どころのひとつです。
要は最初、半分自暴自棄で危なっかしい宙を「放っておけない」と感じたのだと思います。
要の優しさに触れ、宙の中で張りつめていたものが、少しずつほどけていきます。その変化が丁寧に描かれています。
そしてふたりが訪れたのが、「さっぽろ雪まつり」でした。
初めて見る雪像に目を輝かせる宙。
この何気ない一言に、私は胸を締めつけられました。
母親は死別、父親は失踪。宙はきっと、人に甘えることができず、我慢ばかりして生きてきたのではないでしょうか。
だからこそ、ずっと行ってみたかった場所に好きな人と訪れた喜びが、痛いほど伝わってきました。
要は、この笑顔をもっと見たいと思ったに違いありません。
誰かを守りたいという気持ちが、いつしか恋愛感情へと変わっていく。その過程で見せる要の愛情表現が、とても素敵なのです。
詳しくは本編で確かめて欲しいのですが、「こんなことされたら、絶対に好きになってしまうな」と思いました。
ところが宙は、自分の存在が警察官である要の負担になるのではないか、本当にここにいていいのかと悩み始めます。
素直に愛を受け入れられない。その不器用さがいじらしい。宙の生い立ちを思えば、なおさら胸が痛みます。
そして、宙が危なく犯罪に巻き込まれそうになったとき、助けてくれたのはやはり要でした。
迷子だった子猫が安心して生きていける場所――それは、要の隣だったのです!
この作品の舞台は冬の札幌。静かに舞う雪景色が、物語に優しい情緒を添えています。
私自身、雪まつりを見に行ったことがありますが(1人でしたけど・笑)、冬の札幌の空気感まで伝わってくるようでした。
泣き顔の可愛い受けが好きな方。包容力のある年上攻めが好きな方。そして傷ついた心が少しずつ癒され、幸せになっていく物語が好きな方。そんな方には、ぜひ読んで欲しい作品です。







