ヤンマガwebで連載中の『双星のアポクリファ』は、正統派のファンタジー作品だ。ヤンマガ本誌派の自分はすっかり見逃していて、もしかしたら本誌派やコミックDAYSサブスク派にも気づいていない人がいるかもしれない。異世界転生でもなく、小説原作のコミカライズでもない。骨太なオリジナルハイファンタジーである。
舞台は「ダゴナリア大迷宮」の外域にある街・エルウッド。主人公のアルクとヒロインのリリィは冒険者ギルドの受付として穏やかに暮らしている。
物語の舞台のエルウッドは「大迷宮の外域」という設定で、冒険者がランク制度のもとで動いている。青銅級から始まって、銀、金、白金、ミスリル、オリハルコンと続くランク体系は、王道といえば王道なのだけど、きちんと機能している。A級とかS級とかはよく見かけるけれど、そういった紋切型を持ってこないところに世界観を大事にしている印象を受けた。
そして本作は冒頭からハードでとってもセクシーな表現が飛び交っている。この頃よく見かける小説原作のコミカライズでみられる牧歌的な感じではなく、気を抜くと死んでしまうピリッとした空気感すら感じられるのだ。
もうひとり、序盤から印象的なのがイノセア。盲目のエルフで、ミスリル級の魔導士という設定のキャラクターだ。目が見えないのに高ランクの実力者で、しかも「距離感がとても近い」という描写があってキャラクターとして立っている。彼女は2巻の表紙も飾っているが、下着……?ではないか、ふんどし?前掛け……?のような下履きの紐や胸の……ブラジャー的な?なんと言えばいいんだこの衣装?がうっすらカラダに食い込んでいるようなむちむちとした肉感を生々しく描いていたりと、かなり際どいストライクゾーンを攻めてくる「癖(へき)」に溢れたお姉様キャラクターだ。
第2巻からは王都での調査パートに入り、アルクが「精霊契約」を目指すことになる。ここで登場するのが月兎の精霊、ルピナ・モルナで、単純に「契約してくれる仲間」じゃなくて、種族間の因縁を抱えた相手として出てくるのがいい。人間と精霊の間にある、簡単には消えない過去の軋轢。こういう設定に、ちゃんと厚みを持たせようとしているのが伝わってくる。
本作を執筆しているあび先生自身がインタビューなどで語っているのだが、本作の敵(魔物)は「共感できる存在」として描くのではなく、「生存本能に基づいた純粋な脅威」として描くというアプローチをとっているとのこと。読んでいるとたしかに実感できる部分である。
ゴブリンクイーンの描写には理由や背景をむやみに持ち込まない。怖いのものは怖い。脅威は脅威として機能する。そして人間の命が虫のように軽い。最近のファンタジーって「実は敵にも事情が」みたいな方向に寄ることが多い印象があって、それはそれで面白いのだけど、本作のように「脅威は脅威」とわりきった描き方をされると、緊張感が途切れなくていい。
リリィの正体……は読んでいればすぐにわかるとしても、アルクの違和感の正体。二人を引き裂こうとする「災厄」の正体。伏線が丁寧に積まれていて、「あの描写、そういうことだったのか」という瞬間が来るのが楽しみになっている。









