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2026.02.28

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特別な血を持つ少女と雷神様の、時を超えた和風ファンタジー『かみなり様の恋衣』

先日、SNSでユニークなスタンプがバズっていました。ギリシャ神話の神々のビジュアルをモチーフに、「感謝の神アザス」「論破の神ドセイロン」といった具合にそれっぽい名前の神を作り上げていて、思わず購入。こんなふうに気軽に“神”と戯れ、それが受け入れられるのも、八百万(やおよろず)の神がいるとされる日本ならではの文化なのかもしれません。。

そんな、私たちにとって身近な存在といえる神様が登場する『かみなり様の恋衣』。異世界ヒロインファンタジーレーベルからリリースされた本作は、女性を主人公に神と妖怪、そして人間が暮らしながら、時に憎み、特に愛を育む世界を描いた作品です。舞台設定はおそらく明治・大正期の日本。名家の強欲と古い因習の犠牲になりかけたヒロインが、神様と出会ってあらたな人生を切り開く物語。

稀血(まれち)という宿命を背負ったヒロイン

稀血と呼ばれる珍しい血が流れる本作のヒロイン・明乃(あけの)は、幼い頃に両親を妖(あやかし)に殺され、叔父のいる朝霧原(あさぎりばら)家に引き取られます。この朝霧原家は退魔の名家として歴史があり、彼女の稀血は妖退治に役立つとされ、定期的にその血を捧げていました。
すべては、引き取ってくれた朝霧原家のため、そして恋心を抱く従兄の崇光(たかみつ)のため。しかし、明乃への想いはあっさり裏切られます。

退魔の一族でありながら、自らの繁栄のために妖と手を組んでいた朝霧原家。
「稀血の明乃」を妖に引き渡し、代わりに「家の繁栄」を得る、悪徳トレード交渉の場で談笑する妖、そして朝霧原家当主&崇光。別名「おぬしも悪よのう」の図。

さらに(相思相愛を匂わせていた)崇光からのトドメの一撃。なんという外道っぷり。
妖の好物となる稀血を持つがゆえ、名家の欲望のため散々利用されたあげく、最後は妖に差し出されてしまう。すでに両親はなく、愛する人にも裏切られて人生絶望しかない。そんな彼女を窮地から救い出すヒーローが、本作のタイトルにもある、雷の神様です。

雷神なのに「カワイイ」だと……!?

明乃と雷の神様の出会いは、妖&朝霧原家会談より少し前のこと。伏線として物語序盤で崇光が、雷を司る狂暴な妖・雷様(ライサマ)の存在を明乃に伝えています。人間にとって警戒すべき対象とされるライサマ。

そんな中で訪れた、それはまさに電撃的なシチュエーションでの出会いでした。稀血に誘われた巨大な妖が、今まさに明乃を食べようと襲い掛かる、その瞬間――
雷一閃! この一撃を放ったのが、雷の神様。明乃にとって命を救ってくれた存在ということになります。食われる寸前での救出、なんというドラマチックな出会いでしょうか。

さらに、この出会いはもうひとつ、ギャップという強烈な印象を残します。たった一撃で巨大な妖を撃破する、この凄まじい能力の持ち主こそ崇光が言っていたライサマでは? そう考えた明乃でしたが、目の前に現れたのは……
化け物を倒す壮絶な攻撃力と、キュートな小動物ビジュ。これぞ、ギャップ。しかもカワイイ×生意気な言葉遣いまで盛り込まれ、ギャップ萌えの供給が止まりません。

命の危機というシチュエーション、そして強くてカワイイというギャップ。このふたつの衝撃とともに、明乃はライサマと出会ったのです。

頼もしい! カッコイイ! ミステリアス! ライサマの魅力が全開

この出会いの後、さらなる衝撃が訪れます。ライサマのポテンシャルはこんなもんじゃないのです。朝霧原親子の裏切りが発覚した夜、そこから逃げ出した明乃ですが、崇光に捕まってしまいます。そんなふたりの前に現れたライサマは、明乃に「お前を俺のモンにするのは…どうよ?」と、命の恩人(2回目)と言っていい、まさに“神”提案。けれど明乃は、崇光に裏切られたショックで意気消沈、自暴自棄。
「生きる」というある種の壮大な目標を見失い歩みを止めた者へ、飯炊きや耳掻きなど、ささやかながらも現実的かつ具体的な行動を示すことで、一歩踏み出すことを促すという見事な説得術。そして、絶望に対してポップな切り返しで空気を変える度量の持ち主。あ、この人にならついていってもいいかも、と思わせてくれる頼もしさも感じます。きっと同じことを思ったであろう明乃は、彼の提案を受け入れます。すると、「よぉし 決まりだな!」というライサマの言葉を合図に、激しい落雷が発生。その直後、そこにいたのは……!?
そう、イタチor猫なビジュアルだったライサマが、人間の姿になって登場するのです。この後に続く見開きページでは、フルカラーで(※電子版のみの描写となります)見つめ合うふたりというトキメキ120%なシーンが展開。

朝霧原家のもとを離れ、ライサマと暮らすことになった明乃。ライサマの家へ戻る道中、ふたりは“いい感じ”。しかし彼女を見たお付きの妖が「お嫁さんですか!?」と声をかけると、空気一変。
そこまで強烈に人間を拒むには、何か理由がありそうです。彼は自らを「雷蔵(らいぞう)」と名乗るのですが、その名の由来にも秘密が……!? 本作冒頭で描かれる、明乃が何度も見るという、とある男と抱擁する夢にヒントが隠されている様子。徐々に明かされていくであろう、雷蔵の謎も気になるところ。

雷蔵の旧友・烏天狗の黒丸(くろまる)が、とある事情から稀血の明乃をさらってしまう事件が発生した際、雷蔵が見せる表情に思わずゾクッとしてしまいました。
怒りに震えるその横顔に明乃への想いがうかがえて、ビジュとしても、そして感情としても最高にセクシーな雷蔵ショットです。

明乃と雷蔵の関係性がどう変化していくのか。そもそも、人と妖は分かり合えるのか。種族の歴史や個人の体験を織り交ぜながら綴られる、異種族間ラブファンタジー。まだまだ登場する新たな妖、そして交差する愛の矢印の行く末に注目です!

レビュアー

ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。

X(旧twitter):@hoshino2009

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