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2026.02.10

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老舗蕎麦屋の娘と異国帰りの御曹司──恋に不器用すぎる二人の大正ラブコメ!! 『カツオブシ・ロマンチカ』

大正時代に生まれていたら、どんな毎日を送っていたのだろう。
これまで一度も考えたことがなかったのに、この作品を読みながら、ふとそんな思いが胸をよぎりました。

お話の舞台は、大正時代の浅草。
蕎麦屋の娘・梅子(17)の日課は、かつお節を削ること。家業の手伝いではありますが、梅子はかつお節を削ることが、とにかく大好きなのです。

そんな梅子が、女学校の帰りに出会ったのが、きれいな顔立ちの学生・譲(じょう)。
草履の鼻緒が切れたところを助けてくれたのですが、なぜか彼は不機嫌。
初対面の男性の膝に足を乗せるのは、かなり恥ずかしいと思うのです。
そのせいか、現代ではまずお目にかからないシチュエーションなのに、妙にロマンチック。
しかし、ちょっとした行き違いから、この出会いは最悪なものになってしまいます。
その後の再会は、梅子の実家の蕎麦屋でした。
相変わらず、つれない譲。
譲は、長いこと外国で暮らしていたため、和食が口に合いません。
ところが、梅子が作った「かつお出汁」を飲んだ瞬間……
これはロマンスの始まりか!?と思いきや、梅子の胸中は「変な人だ…関わっちゃダメなやつだ…」。

そんなとき、両親は梅子に見合いをさせようと画策します。というのも、姉が見合いをすっぽかして駆け落ちをしてしまったからです。

大正時代は、見合い結婚が主流だったようです。『鬼滅の刃』などの影響で、時代の空気を知った気になっていましたが、実際の暮らしや恋愛観となると、自分が何も知らなかったのだと思い知らされます。

けれど、私の祖母も大正生まれだったと思い出したとき、この話がグンと身近に感じられました。
私がこの時代に生まれていたら、どんな恋愛をしたのだろう。
きっと、この梅子のように感じたに違いありません。
譲は、やることなすことがどこか突拍子もなく、「また会えた」「やはり運命だ」などと、人を惑わせるような言葉を無自覚のうちに口にします。
こんな自由な譲に、梅子は興味を持ち、彼が探し求める“味”を一緒に探したいと思うようになります。

恋と呼ぶにはまだ早いけれど、確かに心の中で何かが芽吹き始めているのが伝わってきます。

ただ、相手は異国育ちの御曹司。銀座にも行き慣れていて、カフェのオーナーとも知り合いという家柄。
一方の梅子は、家業を継ぐ立場の娘です。
梅子が惹かれそうになるたびに、「大丈夫なの?」と、読んでいるこちらの方が思わずブレーキをかけたくなってしまいます。

そして、料理がまるでダメな梅子を支える、幼なじみのカッちゃんの存在も見逃せません。彼はかつお節屋で、梅子も譲もお得意さま。ふたりの仲をとり持つあまり、梅子に対する気持ちに、気づいていないのではないかと感じました。
このお話は大正11年3月某日から始まり、ほぼ1ヵ月ごとに出来事が綴られます。
なぜ、大正11年なのだろうと調べたら、翌年に関東大震災があったことを思い出しました。

当たり前の毎日が一瞬で壊れてしまったことを思うと、このお話に出てくる梅子たちの穏やかな日常が、急に愛おしく感じられます。

子供のころ、我が家にもこの作品に出てくるような「かつお節削り」がありました。かつお節を削るのは本当に難しくて、私が削るとボソボソ。だから当時は好きではなかったのですが、読み終えたあと、無性に削り立てのかつお節をまぶした「おかかご飯」が食べたくなりました(笑)。

家柄や常識など、いろいろなしがらみがあるこの時代、彼らがどのように生き抜いていくのか。
かつお節が取り持つ縁が、やがて恋へと変わっていく様子を見守りたいと思いました。

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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