バレエで成り上がる! 人生どん底兄妹の逆転物語
ちなみに、本作のタイトル「Toi Toi Toi」とは、オペラやバレエなどで、出番前の出演者に向けて送る「がんばって」「うまくいきますように」といった相手の成功を祈るおまじないのこと。
しかし、本作はそんな華やかさや可愛らしいおまじないとは縁がない、どん底を生きる少年が主人公。自分たちを捨てた母親の借金を背負い、風俗街の片隅で暮らすアキラとコウの兄妹。面倒を見てもらっている風俗店店長との約束で、14歳になったら風俗店で客を取らざるを得なくなる、この歳にして詰んだ人生。
しかしある夜、ひょんなことから名門・ロシア国立ヴェリーキー・バレエ団のプリンシパルを務めるキングこと桐谷黎士と出会ったことで、ふたりの人生が大きく動き出します。
「親の蒸発」「借金」「風俗店」と「バレエ」「プリンシパル」という陰陽のワードが生むコントラストが、本作をドラマチックに演出。競技系作品に欠かせない努力や技術論に人生逆転要素が加わり、男性バレエ人口2万に1人しかなれない超狭き門であるプリンシパルを目指すという状況とも相まって、人生を賭けたヒリヒリする成り上がりストーリーが誕生。美しい芸術を描きながら、とことん泥臭い。ここが本作の大きな見どころのひとつです。
感情が宿る! 肉体が躍動する! 大迫力のバレエシーン
キングは、たまたまアキラが踊った『スパルタクス』という演目でのダンスを見て、あえて自身も同じ演目をアキラの前で踊ってみせます。ローマ軍の捕虜となったスパルタクスの慟哭と苦悩。不条理への嘆きはやがて怒りへと変わる。そんな感情を見事に踊りで表現したキング。
なんと3連続見開きページという大胆な構成で描かれる『スパルタクス』での情熱的な踊りは、“人生を変えてやる”というアキラの、そして“本物を描く”という作者・山田大和の覚悟が伝わってきます。
圧倒的存在感とクセの強さが魅力! キングというキャラクター
アキラたちの才能をこのまま埋もれさせるのは惜しいと語るマダム・ヤンに対する、キングの辛辣(しんらつ)なコメントがこちら。
さらに、アキラの借金を肩代わりすると言い出したキングに、気味悪がった風俗店店長がその目的を問うシーンでは、こんな描写も。
華麗な芸術であり、裕福な家の子が習うイメージが強いバレエ。しかしダンサーにとっては、プリンシパルを目指してしのぎを削る激しい競争の世界であり、月謝を払うどころか日々の生活すら必死だった兄妹にとっては本来縁遠いもの。運命に導かれるように、プロの道へと歩みを進めたアキラたちの、美しくも泥臭い下克上の物語を、王を倒すその瞬間まで見届けたいと思います。








