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2025.12.11

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もやしもん×ミシュランスターシェフ! 奇跡のコラボが生んだ、発酵美食レシピ38品

発酵食品をもっとおいしく食べたい

「毎日、発酵食品を取り入れましょう」といろんなところで耳にする。そして私は毎日なにかしらの発酵食品をせっせと食べているが、実は「発酵食品をそのまま食べる」ことがとても多い。

納豆、ぬか漬け、キムチ、チーズ、ヨーグルト、お味噌汁(これは一応“調理”はしているが)。そのままで食べないのは、酒・酢・みりん・醤油・アンチョビ・塩麹あたりか。他の発酵食品はダイレクトに食べてしまう。せいぜい「ごはんと一緒に食べる」や「トッピングしたり、されたり」くらいだ。ひねりがないというか、そのままでもおいしいだなんて、やっぱり発酵食品はすごいなあと感心するというか。

そんな発酵食品を美食の視点でとらえた料理本が『スターシェフがおいしさ醸す もやしもん公式 発酵美食レシピ』だ。ミシュランの「星」をもつ3人のシェフが発酵を使った家庭料理を考案し、写真とレシピで紹介してくれる。和食は新宿・荒木町「鈴なり」の村田明彦さん、中華は渋谷・広尾「老四川 飄香(ピャオシャン)」の井桁良樹さん。そして洋食は渋谷・代々木「Regalo(レガーロ)」の小倉知己さん。

どのレシピも家庭のための料理なので、食材は簡単に手に入るものばかりで、作るステップもシンプルだ。レシピの通りに作ると、ちゃんとおいしくできる。しかも肩がフッと軽くなるような優しい味わいで、それなのに「この調味料は何?」と正体がすぐにはわからない仕上がりになるので面白い(そして「この調味料は何?」は、すごくおいしいお店の特徴だと思う)。毎日作って、毎日食べて、おいしさが記憶に残る家庭料理のレシピだ。

本書の発酵美食に華を添えるのは漫画『もやしもん』の“A・オリゼー(黄麹菌)”や“A・アセチ(酢酸菌)”といった菌たち。
目次がむちゃくちゃかわいい! それぞれのレシピごとに、関連する菌が並んでいる。意外と多いんだなあ。

そして、それぞれの料理の写真はこんな感じ。
それぞれの料理に対応した菌たちがフワフワと漂っている。『もやしもん』の主人公・沢木が見ている世界はこんな感じなのだろう。この写真の「豆腐の塩麹ソース」は今まさに仕込んでいるところだ(冷蔵庫で数日寝かせ中)。塩麹にはA.オリゼー(黄麹菌)とA.ソーエ(麹菌)が関係しているんですね。

豆腐も、塩麹も(我が家ではもっぱら鶏肉の下味で活躍中)、ロメインレタスも、私は全部口にしたことがあるのに、合わせてサラダにしたことはなかった。思わず作ってみたくなるレシピばかりだ。

イカの塩辛で炊き込みごはん

最初に作ってみたのは、村田明彦さん考案の「イカの塩辛とバターの炊き込みごはん」。
そういえばイカの塩辛は発酵食品なのだ。そして私はときどき無性にイカの塩辛が食べたくなるのに、ごはんにのせて食べるばかりで、炒め物にもあまり使ったことがなかった。もちろん炊き込みごはんにも入れたことはない。でもごはんとの相性のよさは知っている。今回、作るために買い足した食材はイカの塩辛だけだった。あとは台所にいつもいるメンバーばかり。

ところで、イカの塩辛は1パック100gほどだと個人的には「賞味期限内に食べきれるだろうか」と心配になる(なにせごはんのお供なので……)。このレシピではイカの塩辛を60g使う。ごはんのお供に少しいただいたら、残りは炊き込みごはんでたくさん使えるのはとてもありがたい。これからは安心してイカの塩辛を買える。

できあがったのがこちら。
イカの塩辛とバターが入っているのに塩気はとても優しい。ごはんと一緒に炊き込まれたじゃがいもがフカフカ。もうひとつ入っているある食材のおかげで味がボンヤリしていない。そして冒頭でも触れたが「イカの塩辛が入っている」とは私にはわからないところに感動した。名指しできない「おいしい存在」が確実にいるのだ。それこそ「かもすぞー」と言いながら飛んでいるゴキゲンなあいつらが! 2合炊いて、1合をあっという間に食べてしまった。冷めてもおいしい。

ヨーグルトでザワークラウト風サラダが楽しめる

2025年の秋は、去年の年末とちがってキャベツがとても安い。ありがたく大きなキャベツを丸ごと買っている。そんなキャベツをおいしくいただく発酵美食レシピがこちら。
小倉知己さん考案の「ヨーグルト風味のザワークラウト風」。プレーンヨーグルトのやわらかい酸味がおいしいサラダだ。クミンやレーズンがアクセントになっている。

それぞれのレシピには、おいしく作るための一言ポイントが添えられている。「ヨーグルト風味のザワークラウト風」のポイントは「キャベツを塩でよくもんで水分を追い出し、代わりにヨーグルトを吸わせるイメージで作ると◎」だそう。ポイントのことを考えながらぜひ作ってみてほしい。料理の工程とその意味が結びついて、とても楽しい気持ちでキッチンに立てる。

通常のザワークラウトは常温で数日かけて発酵させるが、すでに発酵しているヨーグルトを使って仕上げるこちらは即日いただける。
ザワークラウトといえば、じゅうじゅう焼けたソーセージが欠かせない。ほんのり甘くて酸っぱいサラダだ。味の強いソーセージとの相性ももちろんいい。ちなみに、私は料理に使うレーズンが少し苦手だったのだけど、こちらはとてもおいしかった! 付け合わせとしてはもちろん、取り急ぎこれだけを作ってワインをあけるのもよさそうだ。

発酵食品の力を借りると、風味が増して、うまみが重なり、体にも優しい。おまけに自分がものすごくお料理上手になったような気がして、「また食べたいなあ」と自分で自分にリクエストしたくなる。忘れられない味ばかりだ。メインになるおかずから、おつまみにぴったりの一皿までそろっている。ぜひ発酵食品のおいしさに触れてほしい。

レビュアー

花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。

X(旧twitter):@LidoHanamori

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