発酵食品をもっとおいしく食べたい
納豆、ぬか漬け、キムチ、チーズ、ヨーグルト、お味噌汁(これは一応“調理”はしているが)。そのままで食べないのは、酒・酢・みりん・醤油・アンチョビ・塩麹あたりか。他の発酵食品はダイレクトに食べてしまう。せいぜい「ごはんと一緒に食べる」や「トッピングしたり、されたり」くらいだ。ひねりがないというか、そのままでもおいしいだなんて、やっぱり発酵食品はすごいなあと感心するというか。
そんな発酵食品を美食の視点でとらえた料理本が『スターシェフがおいしさ醸す もやしもん公式 発酵美食レシピ』だ。ミシュランの「星」をもつ3人のシェフが発酵を使った家庭料理を考案し、写真とレシピで紹介してくれる。和食は新宿・荒木町「鈴なり」の村田明彦さん、中華は渋谷・広尾「老四川 飄香(ピャオシャン)」の井桁良樹さん。そして洋食は渋谷・代々木「Regalo(レガーロ)」の小倉知己さん。
どのレシピも家庭のための料理なので、食材は簡単に手に入るものばかりで、作るステップもシンプルだ。レシピの通りに作ると、ちゃんとおいしくできる。しかも肩がフッと軽くなるような優しい味わいで、それなのに「この調味料は何?」と正体がすぐにはわからない仕上がりになるので面白い(そして「この調味料は何?」は、すごくおいしいお店の特徴だと思う)。毎日作って、毎日食べて、おいしさが記憶に残る家庭料理のレシピだ。
本書の発酵美食に華を添えるのは漫画『もやしもん』の“A・オリゼー(黄麹菌)”や“A・アセチ(酢酸菌)”といった菌たち。
そして、それぞれの料理の写真はこんな感じ。
豆腐も、塩麹も(我が家ではもっぱら鶏肉の下味で活躍中)、ロメインレタスも、私は全部口にしたことがあるのに、合わせてサラダにしたことはなかった。思わず作ってみたくなるレシピばかりだ。
イカの塩辛で炊き込みごはん
ところで、イカの塩辛は1パック100gほどだと個人的には「賞味期限内に食べきれるだろうか」と心配になる(なにせごはんのお供なので……)。このレシピではイカの塩辛を60g使う。ごはんのお供に少しいただいたら、残りは炊き込みごはんでたくさん使えるのはとてもありがたい。これからは安心してイカの塩辛を買える。
できあがったのがこちら。
ヨーグルトでザワークラウト風サラダが楽しめる
それぞれのレシピには、おいしく作るための一言ポイントが添えられている。「ヨーグルト風味のザワークラウト風」のポイントは「キャベツを塩でよくもんで水分を追い出し、代わりにヨーグルトを吸わせるイメージで作ると◎」だそう。ポイントのことを考えながらぜひ作ってみてほしい。料理の工程とその意味が結びついて、とても楽しい気持ちでキッチンに立てる。
通常のザワークラウトは常温で数日かけて発酵させるが、すでに発酵しているヨーグルトを使って仕上げるこちらは即日いただける。
発酵食品の力を借りると、風味が増して、うまみが重なり、体にも優しい。おまけに自分がものすごくお料理上手になったような気がして、「また食べたいなあ」と自分で自分にリクエストしたくなる。忘れられない味ばかりだ。メインになるおかずから、おつまみにぴったりの一皿までそろっている。ぜひ発酵食品のおいしさに触れてほしい。
スターシェフがおいしさ醸す もやしもん 公式 発酵美食レシピ
絵 : 石川 雅之
その他 : 井桁 良樹
その他 : 小倉 知巳
その他 : 村田 明彦








