今の日本では、女性も仕事を持ち、結婚するかどうか、誰と結婚するかを選ぶ自由が約束されています。
しかし、その自由は数えきれないほど多くの女性たちの挑戦と努力の上に築かれたものではないかと、『帝室宮殿の見習い女官 見合い回避で恋を知る!?』を読みながら感じました。
主人公の海堂妃奈子(かいどうひなこ)は、女学院を卒業したばかり。
持ち上がった縁談の相手は、貿易商を営むかなり年上の男性です。
もし私が妃奈子だったら、「こんなオジさんと夫婦になり、子どもを産まなければならないなんて、人生終わったも同然」と思ってしまうでしょう。



そんな中、宮中に仕えていた大叔母から「女官になる試験を受けてみないか?」と勧められます。
海外生活が長く、自分の意見をはっきり言う妃奈子は、周囲から「はしたない」「生意気」と言われる浮いた存在。
面接試験にあたる“お目見得”でも堂々と自己アピールしますが、手応えはゼロ。
ところが意外にも採用が決まります。どうやら涼宮梢子殿下(すずのみやたかこでんか)の推薦があったようなのです。
実は涼宮様は、妃奈子が卒業式で祝辞を賜った、憧れの女性でもありました。


さらに妃奈子のような命婦(みょうぶ)見習いは、本来「ニの側」で暮らすはずなのに、位の高い人がいる「一の側」の部屋子(へやこ)という特別待遇に。


するとさっそく敵対的な相手が登場します。それが白藤の権典侍(しらふじのごんのすけ)で、今上帝の生母でありながら立場は側室のようなもの。
しかし、この国では側室という存在は認められていないため、帝の准母であり、帝に代わって政務を取り仕切っているのが、あの涼宮様なのです。

しかも、涼宮様の側近として働く高辻との再会もあり、恋の予感も漂(ただよ)います。


『帝室宮殿の見習い女官 見合い回避で恋を知る!?』は、宮中ならではの独特の階級や仕組み、高貴な方が着る装束や調度品、女性たちの着物と洋装など、細かい部分でも見どころがいっぱいです。
最初は、母親の抑圧と望まない結婚から逃げるために女官になった妃奈子ですが、宮中という閉ざされた世界で自分らしく生きられるのか、どんな成長を見せてくれるのか、続きが楽しみです!!