PICK UP

2025.07.31

レビュー

New

男を恋に酔わせ操る恐ろしい力、禁断の「魅了」をめぐる政略結婚のはずが……!?

彼女に惚れたのは、挙式のあとにふと見せたこの表情でした。
父との会話中は光を失っていたその瞳が、父の背中を見送ると同時にしたり顔へと変わり、こう言い放ちます。

「私はもう洞ノ院の娘ではありません。久賀雪哉の妻です」

その目には、確かな意志の光が宿っていました。このセリフからは、ヒロイン・あず沙の芯の強さがにじみ出ています。

政略結婚から始まる和風ファンタジーラブコメ『帝都のジュリエット~無才の花嫁が幸せになるまで~』の第1巻が、2025年6月30日に発売されました。
役立たず聖女と呪われた聖騎士《思い出づくりで告白したら求婚&溺愛されました》』の柊一葉先生が原作を書き下ろした注目作です!

寿命を削る“魅了”の力に抗う少女

本作の舞台は、特殊な能力“魅了”が血筋として受け継がれる帝都。

“魅了”とは、男を恋に酔わせて操る代償として、自らの寿命を削る恐ろしい力です。あず沙の母もまた、一族のために力を使い、命を落としました。

長女でありながら“魅了”の力が開花しなかったあず沙は、無才ゆえに一族から疎まれる存在。それでも、妹が同じ運命を辿るのを止めたい一心で、あず沙は“魅了”の血をこの世から断ち切る決意を固めます。

「一緒に潰しましょう!」と笑うヒロインの潔さ

あず沙が選んだのは、敵対関係にある久賀家との政略結婚。

“魅了”に強い憎しみを抱く洋薬研究者・雪哉に対し、「一緒に洞ノ院を潰しましょう!」と笑顔で迫るその姿は、まるで策士のような潔さが際立ちます。
雪哉は戸惑いながらも、あず沙を一人の人間としてまっすぐに尊重します。身内に対しても忖度(そんたく)せず、冷静で理知的。久賀家の跡取りとしての覚悟を持ちつつ、どこか陰のある彼の姿に、読者もきっと惹かれるはずです。

強くて、可愛くて、たまらないギャップ

そんな雪哉との距離を縮めようと、あず沙は奮闘します。ぎこちないながらも仲良くなろうと努力する姿、そしてふとした瞬間に見せる照れた表情──このギャップが、何よりも可愛らしい。

敵を一撃でねじ伏せる胆力もありながら、恋に無邪気にときめく女の子らしさもある。
強くて賢くて、それでいてちゃんと「可愛い」。あず沙のそのバランス感覚が、本作の魅力を一層引き立てています。

利害から始まった関係は、愛に変わるのか

「好きにしろ」という雪哉の一言を受け、あず沙はまず彼との関係を築こうとします。

利害一致から始まったふたりの関係は、やがて信頼や愛へと変わっていくのか。
そして、“魅了”という力に翻弄されてきた彼女たちの未来は、どこへ向かうのか──。

無力とされた少女が、自らの手で運命を切り開いていく物語。和装と洋装が交差する帝都のビジュアルも見どころで、ページをめくる手が止まりません。
強く、しなやかで、前向きで、そしてとびきり可愛いヒロイン・あず沙に、きっとあなたも心を奪われるはずです。

レビュアー

Micha

ライター。フリーランスで働く一児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!

X(旧Twitter):@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier

こちらもおすすめ

おすすめの記事

2024.08.22

レビュー

嫁ぐことになったのは、己の肉親の仇の子──神に選ばれた娘たちの婚姻譚

  • エンタメ
  • 黒田順子

2023.12.25

レビュー

傷モノにされた猿面の少女×退魔の一族の若き英雄! 傷だらけの二人の恋物語

  • エンタメ
  • うるける伊達

2023.07.28

レビュー

政略結婚の相手はみんなが恐れる悪魔公爵。天真爛漫少女とイケメン悪魔の恋!

  • エンタメ
  • 黒田順子

最新情報を受け取る

講談社製品の情報をSNSでも発信中

コミックの最新情報をGET

書籍の最新情報をGET