クラスメイト同士の殺し合いを描いた『バトル・ロワイアル』やSNS社会の怖さも描いた『リアルアカウント』、そして謎のダルマに翻弄される『神様の言うとおり』など、名作豊富な人気ジャンル、それがデスゲーム。今回、新たな作品がデスゲームのラインアップに加わりました。
本作の特徴は、スポーツを組み合わせたデスゲームという点です。
主人公は、スポーツメーカーに勤める吾郷鷹彦(あごうたかひこ)、42歳。サッカーの練習試合に行く電車内、ふと目覚めると、世界(の一部)は一変していました。隣の席には愛する妻と子。「パパの試合が楽しみ」だと言う妻に、ただの草サッカーなのに?と不思議がる吾郷。妻が「(試合を楽しむために)予習しているんだよ」と言いながら見せてくれた動画に映っていたのは、信じられない光景でした。
あまりに危険な行為に混乱する吾郷。しかし妻は当然でしょとばかりに「そりゃDスポーツだもん」とひと言。
Dスポーツとは──
殺人も許容される究極の
エンターテイメントである
世界はいつも通り回っている。ただひとつ、Dスポーツの有無だけがこれまでの人生と違う……。今日は、超人気コンテンツだというDスポーツの、記念すべき社会人部門初開催の日。吾郷は、いつの間にか会社の代表としてこの大会にエントリーしていました。同じ営業部の同僚たちも応援に駆け付け、控室では大学時代の先輩・葛犀(かさい)と20年ぶりの再会。しかし旧交を温める余裕などなく、殺戮競技への戸惑いを隠せません。
吾郷が出場する、常に死と隣り合わせのDスポーツ。100社以上の企業が参加するという、世界的なスポーツの祭典のようなスケールで開催されるこの大会とは一体……!?
全部で7種の競技が行われる今大会。第一種目となるD500mは500mを走る競技なのですが、そこはDスポーツ。「Dゾーン」と呼ばれるラスト100mにはとんでもない秘密が隠されています。
さらに見逃せないルールとして「最下位走者」「ルール違反者」は即銃殺。Dスポーツはとにかく「死」が軽い。さっそく、フライングした走者が銃殺されてしまいます。
この狂気な世界の中で、絶対に生き残ると決意を新たにする吾郷。そしてついに、レースがスタート。快調に飛ばす他の走者を後ろから追いかけながら、冷静な戦略を組み立てていきます。
意外とガチな陸上競技描写も楽しみつつ、レースは例のDゾーンへ突入! ここで待ち受けていたのは、まさに何でもありなサバイバルレース。エルボーによるライバルへの直接攻撃なんてまだまだ序の口。ラスト80mで、Dスポーツの本性が露わになります。
武器! 陸上競技では耳慣れない、武器! 「今から殺し合いをしてもらいます」というあの名セリフが頭をよぎる激熱展開。最下位を逃れるために、とにかく速く走るのか。それとも相手にダメージを与えて走れなくさせてしまうのか。運命に導かれるように、控室で再会した大学時代の先輩との一騎打ちが待ち受ける。さあ、吾郷の選択は……!?
殺戮競技・Dスポーツにはたくさんの謎があります。人が殺し合うスポーツ大会の主催者はいったい何者なのか。そんな疑問のヒントになるのか、ならないのか。運営サイドが登場するシーンも。
至って普通……というか、殺戮イベントの割には普通過ぎる会話が逆に狂気を感じさせ、このいびつな世界への恐怖心をかき立てますね。世界観にリアルさをもたらすために使われたモブキャラみたいなものかなと思いましたが、実はこの後でまだ出番がある、謎を呼ぶキャラクターです。
また、こちらは本編と関係なさそうですが個人的にとても気になったキャラを紹介させてください。Dスポーツ解説を務めるジーニー畑山(はたけやま)。
サッカー元日本代表ということですが、「D」の名がつくサッカーで代表にまで登りつめ、解説者のポジションを獲得するという、殺戮ゲームをサバイブしてきた男。陽気なキャラに見えますが、いったい何人殺してきたのか。現役時代が気になりすぎます。
ちなみにですが、スポーツ×殺戮ということで、勝手にいろいろと競技を考えてその試合を想像するのも、楽しいかもしれません。D野球なら、投げるのはボールじゃなくて……とか、D水泳ならやっぱり溺死させるのかな、とか。……私はすっかりDスポーツに魅せられてしまったようです。
吾郷が参加するDスポーツ。500m走の後にも、エグい種目が登場します。突然、異質で恐ろしい世界へと誘われた吾郷は、このサバイバルレースを生き残ることができるのか。そしてDスポーツなる競技の背後には何があるのか。興奮と恐怖に謎も加わった新たなデスゲームの行方から、目が離せません!
レビュアー
ほしのん
中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。
X(旧twitter):@hoshino2009