「釣り」やってみませんか? ってメバリングに誘われたい!



社長
「釣り」やってみませんか?
っと、ちょちょちょ、そんなキラキラふわふわした感じで釣りをしちゃうの? こちとら矢口高雄先生の名作『釣りキチ三平』にやられて、中学時代は机に向かう時間より、川べりでウキを見つめていた時間のほうが長かったクチである。釣りのロマンといえば、それすなわち“釧路湿原で幻の魚イトウを釣る”こと。そもそもアイドルが趣味で釣り竿を振るなんて設定が盛り過ぎ! などと舐めてかかって読み進めたら、返す刀でバッサリ袈裟(けさ)斬り。というのもこの作品、ガチもガチ、ガッチガチのマニアックな釣りマンガなんである。
まず手始めにセリカが社長を誘うときの釣りが、メバル狙いのジグヘッドを使ったルアー釣り。いわゆるメバリングというやつ。海っペリの小物狙いの釣りだが、初級者にはうってつけ。


魚があなたを呼んでいる!
この【つりっぷ】は釣りガチ勢の筆者が同じく釣りガチ勢に届けたい、という究極のわがままみたいなマンガです((中略)あとアイマスガチ勢にも届いてほしい)。

バスには巣(ネスト)を守る習性があり、その巣のまわりにいるバス(ネストフィッシュ)は釣りやすい(←ここまではマンガでも描かれている)ので、釣り上級者はあえて狙わず、初心者に釣らせてあげようというのが、スポーツ・フィッシングにおけるフェアプレー精神なのだ! でも本当のところ、めちゃくちゃよく釣れることで知られる「ノリーズ」というブランドのルアーを使って、初心者でも釣れるネストフィッシュを狙うなんていうのは、ノリーズの創業者であり、優れたルアーデザイナーである田辺哲男氏に申し訳ないと思ってしまうので、私はネストフィッシュは狙わないんだ。
って……、
このセリカちゃんの心の機微、釣りガチ勢以外に誰が分かるんだ!
三平三平(みひら さんぺい)はノリーズのルアー使ってなかったもん(多分Daiwa製)!
分かんないよっ!
でもコレがいいのだ。「分かるやつに分かればいいんだよ」ってネタに振り切っているからこそ刺さる面白さ。
他にもこういうネタがある。セリカちゃんが社長を釣具に置き換えて表現するなら……ってコマ。

それはな……、意味などないのだ(多分)!
大体において日本の釣具メーカーは、商品名に大げさな名前を付けがち問題というのがあり、「そういえば、昔使っていたDaiwaのリールの名前はミリオネア(億万長者)だったしな」と思い出して笑ってしまった。
ことほどさように、かわいい女の子がワッキャと楽しむ様子に癒やされながら、こと釣りに関してはハイブロウなネタを連打し、釣りガチ勢をホクホクさせるこの漫画。さらに追い打ちとばかりに、グルメ情報を差し込んでくるのだ。北九州銘菓の「くろがね羊羹」に、ふわふわ生地にクリームをサンドした「牛乳パン」、釣行ついでの駅弁情報まで、全体的にカロリー高めの一品を食べる食べる! めっちゃ食べる! 読めば、長く釣りから遠ざかっていた“かつての”釣りガチ勢のお尻を、ムズムズさせること間違いなし。防波堤に寄せる波、静けさをまとった湖面……。「魚がオレを呼んでいる」と思ったあなた(及び、オレ)、もはや「つりっぷ」に出掛けるしかない!