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2025.05.15

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運命の恋はきっとあの時から……。ひとめぼれから始まる初恋キャンパスライフ・ラブ

これからなんにだってなれるよね

大学進学をきっかけに上京した身としては「くぅ~」と声が出そうになるマンガです。『まことの恋をするものは』は、キャンパスライフの描写がひとつひとつリアル。まるで自分の本当の思い出のような気がしてくるんです。ていねいに作り込まれた世界のなかで初恋がキラキラ揺れています。
恋をして、忘れたくない瞬間がやってきて、都内に自分だけの「聖地」がどんどん増えていくこの感じ! どうかこの歩道橋が永遠に残りますように!

主人公の“七瀬”は東京の大学に通うために青森から上京してきた18歳。山手線に乗ってみたらドア付近にたたずむキレイなお姉さんを見つけて「わたしってなんか芋っぽいかも~」なんてクヨクヨしたり。リアル! がんばろうって思ったり、ふと弱気になったり、その繰り返し。

そんな七瀬の目を通して見る東京は、みずみずしくてまぶしいんです。
そう、銀座でも麻布台ヒルズでもなく、やっぱり東京タワー。地元から遊びに来た友達と都内のあちこちを回っても、結局一番アガるのは東京タワーなんですよ。みんな写真を撮りまくる。

ちょっと落ち込んでも、東京タワーを見上げて「これからなんにだってなれるよね」って背筋を伸ばす七瀬が私はとても好き。

夢の大学生活、1個叶ってない?

七瀬が“その人”に出会ったのは大学の教室でした。
お疲れなのかぐっすり眠っています。そして、彼のきれいなうなじに目を奪われた七瀬が発見したのは、未提出の出席カード!
爆睡中の彼の出席カードも一緒に提出してあげます。七瀬、いい子だなあ……。

こんないい子の七瀬なのに、入学して3ヵ月たってもまだ友達がいませんでした。諸事情によりスタートダッシュに出遅れてしまったのです。

講義を受けるのもひとり、学食でのランチもひとり。でも!
あのときの彼がヒョイッと食券を買ってくれて、
勇気を出して七瀬から声をかけて、相席でお昼を食べることに。おなじ文学部の学科違いの、ひとつ上の先輩でした。名前は“檜山桧里”。

そして「友達できた?」なんて世間話の流れで、七瀬は自分が大学での友達作りに失敗をしてしまったことや、大学生活に夢を見ていたことなんかを桧里に話します。ここでちょいちょい「こういうところが田舎者っぽいですかね!?」と気にしたり。わかるよその気持ち。

七瀬が夢見ていたのは「空きコマでご飯食べたり、休日鍋パしたり、勉強したり……」といった、ありふれたキャンパスライフでした。ありふれているけれど、まぶしいんですよね。

七瀬が話すことを桧里はゆっくり聞いてくれます。そして……?
ホントだ。桧里はこの「空きコマでご飯」以降、七瀬が夢見ていた大学生活の一部というか本体になっていきます。七瀬は桧里と少しだけ話したり、ふと目が合ったりするだけで、自分の世界がキラキラと輝いてしまうことに気がつくのです。

こうして七瀬は自分の恋心をゆっくり大切に育てていく……はずなのですが、半歩進んでは半歩下がる感じです。本当にゆっくりで、穏やかで、とても面白い。

たとえば桧里とふたりで東京タワーへ遊びに行ったとき。そう、七瀬は、上京のシンボル・東京タワーに、キラキラキャンパスライフの象徴・桧里とふたりで行くんです。それって完全なるデートじゃん、よかったね!と思いきや、
東京タワーの展望台では夢みたいに楽しかったのに、帰りに立ち寄ったオシャレなパン屋さんでちょっと複雑な気持ちに。自分と他人を比べたり、自分は桧里と釣り合わないんだろうなあとクヨクヨしたり。わかるよ。

そして本作はおそらく現地取材をていねいに重ねて描かれた作品です。実在の場所がたくさん登場します。七瀬がむくれながらパンをかじっていたパン屋さんも東京タワー付近にあります(何を食べてもおいしい!)。あのカフェオレや木漏れ日のきれいなテラスを思い出すと、なんだかふたりの姿が目に浮かぶ。
この「自撮りでよくね歩道橋」も、きっと芝公園周辺に本当にあるはず。確かめに行きたい……!

で、仲良く自撮りをしていますが、七瀬の恋はまだ始まったばかり。そして大学生活も始まったばかり。桧里に誘われてサークル活動に参加してみたり、満員電車にうんざりしたり、実家から野菜がたくさん届いたり。新しい世界がゆるやかに広がっていきます。それがリアルで楽しいんです。
商学部のキラキラ女子が恋のライバル……? さっそく複雑な人間関係の洗礼を浴びることになるのでしょうか。お楽しみに!

レビュアー

花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。

X(旧twitter):@LidoHanamori

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