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2025.04.21

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残念ヒロイン、初恋のためにアンドロイドに大変身!? 癖つよ!押しかけラブコメ

「今どきはアオハルも効率々々(コスパタイパ)重視よ」

マジで直球(タイプ)の顔と身体を選び放題。
相手が自分の都合にいくらでも合わせてくれる。
無限に愛してくれて対価も要求されない。
乱暴もしないし浮気もしない。
新しく関係を築くのに必要な時間も労力もいらない。

アンドロイドを「理想のパートナー」としてカスタマイズして連れて歩ける時代に、人間の異性とつき合おうと考える若者など、ほとんどいなくなっていた。

そんな時代に「アンドロイドアレルギー」という悲劇的な運命を背負って、暗い青春を送っていた中学生、綴風太(とじふうた)。彼はなんとか人間の女性と付き合えるように、ガリヒョロメガネのヲタク的風貌を捨てて自分磨きに没頭。高校入学時には「清潔感あるゴリマッチョ」に生まれ変わっていた(それでもモテない)。

そんな風太に密かに思いを寄せるのは、やや地味なヲタク系陰キャ・我辺恋(わがなべれん)。風太の幼馴染だが、幼少期に風太からの告白を断った(正確には一風変わった告白をされた直後に恥ずかしくて逃げ出した)経験がある女の子だ。

同じ高校に通い、けっこうわかりやすく風太にアプローチを繰り返しても見向きもされない(実は過去にフラれていた風太が想いを抑えていただけだが)恋は、その恋心が暴走してとんでもない決断に至る。

「私がアンドロイドになればいいんだ!」

アンドロイドアレルギーに対応した試作型アンドロイド「山田ブルーハワイ」が、ここに爆誕した。
学校では「幼馴染の我辺恋」として風太と友だち関係を続け、プライベートでは「試作型アンドロイド・山田ブルーハワイ」として風太に近づく。しかし、風太が彼女をアンドロイドだと信じ切り肉体関係を求めてくると、覚悟を決めていたつもりがつい突き放してしまう。

本来は折を見て「実は私は恋でした~」とドッキリ企画のようにバラし、風太と恋仲になろうと企んでいた恋。しかし、風太が「人間相手にはなかなか話せない自分の恥ずかしい過去や性格、日常」を大量に(アンドロイドと信じ込んでいる)恋に打ち明けてしまったがために、恋は自分の正体を明かすことができなくなる。

本作は、頭の中が「異性との交際(エッチを含む)」で一杯の、いろいろな意味で健全な男子高校生・綴風太と、風太への一途な想いがゆえに突拍子もない行動に出てしまう地味系ヲタク女子・我辺恋との、一風変わった“近未来限界系SFラブコメ”だ。

あれ? これもしかして実は純愛系ラブコメなのでは?

ヒロインの我辺恋は、一途に幼馴染の風太を想う陰キャ系の女の子。
さまざまな鬱屈した思いやコンプレックスが表出したかのような突飛な思考と行動を繰り返しながらも、不思議とその言動にはジメッとした雰囲気が微塵もない。

改めてなんでかな……と考えてみると、その答えは単純明快だった。
あ、周囲のキャラも含めて、日常的にテンションが異常に高いんだ(笑)。

恋は「アンドロイドになればいいんだ!」という思考がぶっ飛んでいるだけじゃない。
自分に「本当にアンドロイドなのか?」と疑いの目を向ける相手(風太や、2巻から登場する恋敵のアイドル・センチネル華怜ちゃん)に対して、冷や汗をかきながらも即興の謎理論とハイテンションで押し切ってしまう。読者としては「正体がバレるんじゃないか」とドキドキするというより、「んなアホな!」から「信じるんかい!」と笑いながらツッコんでしまう。

恋と風太が入っている部活「古典青春保存と研究の部」の面々も、「ロジカルな褐色ボーイッシュ格闘女子」と「カタコトの語尾が特徴的な美女」、さらには「陰謀論に傾倒している電波少女(実はただのキャラづくりで本性は真人間)」と個性豊か。なによりこれだけキャラが異なる面々が、決して有意義ではない日常を笑いながら浪費している姿がすでに「古典的なヲタクの青春」であると言えなくもない。
果ては恋のライバルであるアイドル、センチネル華怜(本名・疑安堂トコ)までも、迷走の末に「自分がアンドロイドになればいいんだ!」と恋と同じぶっ飛んだ結論に辿り着くが、こちらは秒で見破られる。
さらにそれを見ていた恋は、「上から目線のややツンデレ系」×「かなりのナイスバディ(詰め物だらけ)」と持て余していた初期設定をリセットして「生まれたままの(貧乳)スタイル」&「性格は素直な王道ヒロイン」である「山田ブルーハワイVer.2.0」にアップデート。しかし急激なキャラ変に精神が付いていけず、すぐにオーバーヒート(失神)。

……書いていてこっちが混乱してしまう。

しかも、いたるところにコミカルにコーティングされた下ネタが頻出するわりには、陰キャな恋はもちろんエロで頭がいっぱいの風太ですら、いざとなると「やたらと臆病」だったり「地味に誠実」だったり「コミュ障が発動」したりして、結局は一歩先に踏み込めない。
 
あれ? 突拍子もない設定とヒロインの言動、日常的にやたらハイテンションなキャラたちに惑わされているが、これもしかして王道の「古典的な純愛系ラブコメ」なのか? 
とにかく頭を空っぽにして読み進めているうちに、なにかよくわからん読後感がクセになりそうな作品だ。

レビュアー

奥津圭介

編集者/ライター。1975年生まれ。一橋大学法学部卒。某損害保険会社勤務を経て、フリーランス・ライターとして独立。ビジネス書、実用書から野球関連の単行本、マンガ・映画の公式ガイドなどを中心に編集・執筆。著書に『中間管理録トネガワの悪魔的人生相談』『マンガでわかるビジネス統計超入門』(講談社刊)。

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