本作にもたくさんの料理が描かれるのですが、その大きな特徴は、私たちになじみのある料理が登場するということ。なぜなら、その料理を調理するのが、現代日本から転生した料理人だからです。
本作は、日本の下町で料理人をしていたおじさん(山田ケンゴ)がひょんなことから異世界のお姫様に転生。未知の食材を使って串焼きやドリア、ポタージュなどお馴染みの料理を振る舞い、現地の人々をその料理で魅了しながら、現代へと戻るために道を切り拓いてく物語です。
姫と従者のただならぬ(?)関係
本作は、姫と騎士、言い換えれば現代に戻りたいおっさん料理人と、姫を取り戻したいイケメン男子のバディものという一面もあるのです。
未知の食材を前に料理せずにはいられない料理人魂
城の隠し部屋で見つけた、とんでもない異臭を放つ謎の食材……この世界では人魚と呼ばれている魔物を醗酵させたものを見つけたケンゴのリアクションがこちら。
「異世界と現代」「姫とケンゴ」「姫の守護とケンゴの放逐」など、対比が生む可笑しさ
現代人、そして料理人のノリが出てしまうケンゴに、姫の正体を隠すためのお目付け役オーギュストがツッコミを入れるという関係性や、現地人にとってゲテモノ扱いの食材に目をキラキラさせるケンゴとそれを拒絶するオーギュストという対比など、明確なコントラストが本作に可笑しさをもたらしています。
ビジュアルが人面という不気味なマンドラゴラ(ケンゴの解釈では「芋」)を調理する際に、現地異世界と現代日本とのカルチャーの違いが浮かび上がり、「姫の中身がケンゴ」というオーギュストのジレンマが加わった次のシーンは、その代表例。
随所に配置されるコメディシーンが読書欲をさらに推進。「現代へ戻る」「中身を姫に戻す」という明確なゴールに向かい、ケンゴとオーギュストがどう動いていくのか。その中で一体どんな謎食材と出合い、料理していくのか。
ファンタジーもグルメもコメディも(そしてもしかしたらグッとくる感動も)欲しがる、私のような欲張りな読者にピッタリの作品です!








