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2025.04.07

レビュー

でも私……変態なの。ラブラブだけとエッチはおあずけな彼女から衝撃の提案!!

合言葉は「ちゃむちゃむ」

相手とのつながりの純度の高さを測る方法は簡単だ。共通言語の有無と、その共通言語が世の中から離れていればいるほど、2人の結びつきは深くて雑味がない。エクストリームな業界用語のようなものだ。外部の人が聞いたら「え? どういう意味?」って言っちゃう感じの。たぶん宗教の教典にも似たような効果があるのだろう。

とにかく、2人のためだけの言語をもつカップルは、それだけでひと山越えている。『それでも明日も彼氏がいい』の“茉子ちゃん”と“こう君”は交際1周年にして上等な合言葉をもっている。
カラオケボックスにお祝いのケーキをコッソリ持ち込んで、ペアリングをお互い用意しちゃって、もうラブラブ。理想の彼氏と彼女! でもひとつだけかみ合わないところがあった。それが「ちゃむちゃむ」だ。ちゃむちゃむと2人が口にするときは、一般語に訳すると「エッチ」にまつわる話をしている。かわいい。で、ちゃむちゃむのことだけが、茉子ちゃんとこう君のあいだで合意がうまくとれていない。

「家に行ってもいい」→「いいけど何もしないよ?」の後がこちら。
こう君は、数十分前に茉子ちゃんが言った「ちゃむちゃむナシだよ?」なんて都合良く忘れているが(まあ忘れるよね。本作は、こう君が定期的に見せるドサクサな顔がすごくいい)、茉子ちゃんは1人でさっさとお風呂に入ってしまう。でもこう君はどうしてもしたくて……、
見よ、このドサクサ顔! でも茉子ちゃんは本当にちゃむちゃむな気分じゃない。だから気まずい結末になってしまう。ちなみに茉子ちゃんとこう君は、交際から1年の間にちゃむちゃむしたのは2回だけ。日本人(20代)の年間の平均性交回数を大幅に下回っている。

最後にちゃむちゃむしたのが9ヵ月と7日前(健気なこう君は数えているのだ)で、付き合って1周年の日も最悪に気まずい夜になっちゃったのに、2人は別れない。だって大好きだから。
でも、茉子ちゃんはこう君とはできない。他に好きな人がいるわけでもないのに!

ここまで茉子ちゃんに言われても、こう君は別れる気ナシ。この際ちゃむちゃむ抜きでも一緒にいたい。たしかに9ヵ月と7日もラブラブでおあずけに耐えられる20代男性は貴重だと思う。

そして茉子ちゃんも、こう君は今までの彼氏とは違う存在だと感じているから、かつての元彼たちには言えるはずもなかった秘密を打ち明ける。
え、アブノーマルなちゃむちゃむが好きなタイプ? いいよいいよどんなプレイも受け止めるよ~だって大好きだもん……と思ったら、
できますか? 茉子ちゃんは、大好きな彼氏にはムラムラできず他の人とのちゃむちゃむで興奮するタイプ。このマンガは、それでも彼氏でいたい男と、その男に自分をさらけだす女の、真剣な純愛のお話だ。かわいいなあ……。

私のこときらいになった?

こう君は茉子ちゃんの「提案」を受け入れたが、そこからも細かく「避妊が絶対条件ですよ」「これは大丈夫?」「これはいやじゃない?」と諸条件を確認される。交換ちゃむちゃむの相手も同席の上、ちゃんと詰めていく。つまり変態と良識は両立する。
問題は、こう君の煮え切らない心にある。このグズグズとダサい感情がとてもいい。本作は、エロと、こう君のダサくて純粋でドロッと熱い心を味わうマンガだ。
「俺は茉子ちゃんの理想の彼氏」と念じれば念じるほど、彼が想像もしてこなかったちゃむちゃむが始まってしまう。そして「下手くそなセックスとはどういうものなのか」も即わかる。ストーリーテリングと画力のたまものだと思う。

どんなに交換ちゃむちゃむをしても、茉子ちゃんと他の男とのあんな姿を見ても、自分の情けない姿を見せてしまっても、それでも2人はラブラブ……のはず。
そう、茉子ちゃんは混じりけなくかわいいままで、それは夜の公園でも、交換ちゃむちゃむ後に待ち合わせたラブホテルの廊下でも同じだから。ぜんぜん嫌いになれないよ。むしろ大好き。

レビュアー

花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。

X(旧twitter):@LidoHanamori

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