ラッキースケベ大全
「ほぼ全てのページでラッキースケベを起こすぞ」という強い意志を感じる『センパイ! わざとじゃないんです!』、やー、すごかった。読んでいるこちらに「ああ、そろそろラッキースケベがくるかもね」ってニッコリさせるスキを一切与えない。ラッキースケベの滝に打たれるようなマンガ。すがすがしい。
付き合い始めたばかりの一組のカップル。今日は初めて彼氏のおうちに彼女が遊びに来ました。お母さんにもご挨拶して、妹さんが手作りのクッキーなんて焼いてくれていい感じ。で、クッキーを「あーん」とかしてたら……、
アクシデントによりラッキースケベが発動。妹にもガッツリ目撃されてしまう。
まあ、妹は即退散するよね。気まずいね。でも誓ってわざとじゃない。そう、わざとじゃないんです。息が合ってるのか合ってないのかはさておき起こってしまったハプニング。
さて、一般的なマンガならばラッキースケベの濃度ってこのくらいで及第点に達するかもしれませんが、『センパイ! わざとじゃないんです!』はちがいます。だってラッキースケベが主役のマンガだから。続きがあります。
懲(こ)りずに再び「あーん」を始める2人。あとなんでだか、また戻ってくる妹!
ドサッ! ということで1話あたりのラッキースケベ密度が異様に高いマンガです。1巻に18話も入ってる! 描きおろしのラッキースケベエピソードつき。126ページほとんどがラッキースケベ。圧巻。
ちなみにこのクッキーひとつでゼロ距離が頻発する第4話「あーんしたいです!」には、もうひとつ特大ラッキースケベが実装されています。ほんと息つくひまなし。
進展しない関係
“幸”は1歳年上の先輩・“純”に告白されて付き合うことに。ここまではフツーだったんです。よくあるラブストーリーになるはずだった。でも思いが通じ合ったその日から幸はなぜだかラッキースケベ体質になってしまうのです。とりあえず幸は頻繁に転倒するようになりました。
ラッキースケベ界の伝統芸のような倒れ込みと「プハッ」。まだまだあるよ!
ブラウスのボタンが取れることなんて日常茶飯事。ほぼ挨拶ですよ。純もこのアクシデントに備える心構えがすでにできてる。
で、この2人、キスはおろか手すら繋(つな)いだことがありません。ハプニングに次ぐハプニングで普通のお付き合いどころじゃないからです。
「手を繋ごう」って純に言われて幸がドキドキしながら「えーい」って手を差し出したら、
あらぬ場所に手が! そこじゃないよ! でもわざとじゃないんです! そして焦(あせ)るあまり手が抜けない。
これもわざとじゃないし、手はぜんぜん握れていないんだよなあ……。動作と言葉の両方からラッキースケベがやってくる。そりゃドキドキするけれど、この2人だって本当は「手を繋ぐ」とかそういう初々(ういうい)しくかわいい領域からチャレンジしたいんですよ。
イヤホンを半分ことかね。でもこれができない。ドキドキするあまり力みすぎてるのでしょうか。一緒に聴きたかったラブソングだって怒濤のラッキースケベにかき消されてしまう。「ぎゅるんっ」ってイヤホンのコードが絡まっただけなのに! 想像の数倍すごいよ。
私が特に好きなラッキースケベ回はこれ。
ラッキースケベ体質の幸がやってることはどれもわざとじゃない。では幸がわざと手を繋ごうとしたら2人はどうなっちゃう? そして「ラッキースケベが起こるようになってから普通の恋人らしく手を繋ぐこともできなかったけど」! 名言でしょ。ラッキースケベぜんぜんラッキーじゃない。ちゃんと手を繋げますように!
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。