その未来、知りたい?
「好きな人との未来が知りたい」「どんな人と結婚するんだろう」未来を妄想するのは楽しい。でも、本当に未来が見られるとして「じゃあ見る!」と即答できますか? そこに望まぬ結果を見るのは怖いし、ステキな未来もネタバレされれば嬉しさ半減。未来を見るのって案外勇気がいるし、しんどいこともありそうだ。
『恋と千里眼と青二才』の主人公・千里ちはやは、未来を見通す「千里眼」を持つ高校生。
ちはやに告白したい男子が列をなしていて、モテるんだね!……と思いきや、ちはやが断ればこの手のひら返し。暴言を吐いて去っていきます。こんなことばかりなので、高校生にしてちはやは少し男性不信気味。
千里眼のことを「あんな便利なものがあるのに、使わないわけがない」と周囲に思いこまれているのも損ですね。
こういう時に言い訳しない潔さや、圧に負けて不正に手を貸さない正義感がちはやの大きな魅力。でもそれは周囲には伝わっておらず、人とは距離をとるしかないちはやは「孤高の人」状態です。こうなると、未来が見えるって、本人の幸せとは何の関係もないのでは……?
そんなちはやの思う、千里眼の正しい使い道とはこういう感じ。
人助けを“してあげた”ことはすぐ忘れているのがちはやっぽい。こういう子だから、千里眼を授かることができるのかもしれません。
ちはやをキラキラした目で見つめる彼は「英太」。少年というよりまだ子どもに見えます。でも、彼の興味は千里眼じゃなく、ちはや本人に向いているみたい。ちはやもどこかうれしそうです。
とはいえ、こんな小さな男の子と付き合えるか?といえば、それはまた別の話。
君との未来が視えてしまった
「勉強すればいい成績が取れる」。当たり前の事なのに、千里眼が絡むと「何もしなくても未来は決まってる」と、努力しなくなってしまう人もいます。こんなふうに。
普通の人にとって、ちはやの千里眼はそれくらい強力なもの。それなら、ちはやをあきらめきれない様子の英太には「未来の彼女」の姿を教えてあげればいいのでは? ちはやは英太の未来を視てみます。
しかしそこに見えたのは、
自分たちの結婚式! いつかの未来には、かっこよく成長した英太と、幸せそうなちはやがいたのです。
未来の英太はかっこよくて一途で誠実。でも小学生でしょ? 今付き合ったら社会的に終わる! 大きくなったらまた来てね、と英太をあしらうちはやですが、自分の千里眼の確かさは自分が一番よくわかってます。さっきまで「ボク」と呼んで子ども扱いしていた英太が、急に恋愛対象に見えてくる。そう、未来ってこうやって変わっていくんですね……!
未来は視えても、予測不能!
幼く見えた英太ですが、実はちはやと同じ学校の中等部の子でした。そこで2人はデートに出かけることに。しかし、いろいろあって、ちはやはデート当日を寝不足で迎えてしまいます。
大人の男性でもなかなかできない、英太の数々の気配りにキュンとするちはや。こんなに本気で思ってくれるなら、ちゃんと付き合ってもいいのかも。そんなちはやに千里眼が視せてきたものは……。
彼氏のケンカを必死で止める自分! その彼氏とは、特攻服を着た未来のヤンキー英太だったのです!
恋にネタバレはなかった
運命の人と出会えば、平和なお付き合いと素敵な結婚ができると思っていた……。そんなちはやに対し、ピュアさゆえに些細な出来事やちはやの何気ない一言でさえ本気にして、人生をガンガン変えてくる英太。結末がわかってもなお予測不能の恋に、ちはやと一緒に振り回されること間違いなしの1冊です!
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
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