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2025.04.08

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近未来、首都高は墓場と化す! 元天才レーサーが命懸けのデスレースに挑む!!

元天才レーサーが近未来の東京を舞台に「命懸けのレース」に挑む!

舞台は205X年、ニュージャパンの首都・東京。
世界中で格差は広がり、日本でも都心のみが栄えて地方ではインフラも崩壊。
犯罪が日常茶飯事、という荒廃した時代になっていた。

主人公の颯蒼馬(はやてそうま)は、ブラック企業で働く派遣社員。
返済のあてもない10億の借金を抱え、自暴自棄に近い“その日暮らし”の毎日を送っていた。

そんな蒼馬が怪しげな組織に拉致され、公道を使った謎のレース「東京デスレース」にドライバーとしてスカウトされるところから、物語はスタートする。
実際はスカウトというより「暴力的な脅迫により強制的に参加させられた」と言ったほうが適切ではあるが……。

実は蒼馬はF1での活躍を期待されていた、元F2の天才レーサーだった。
それがレース中の事故により引退を余儀なくされ、冴えないその日暮らしの生活に身を落としていたのだった。

しかし、いかに彼が元天才レーサーだとはいえ、彼がこれから参加するレースは普通のレースとはワケが違う。世界各地のマフィアが国家予算並みの賞金を賭けて争う、まさにルール無用の「デスレース」。恐ろしいのは、対戦車の破壊もドライバーの殺人も、武器の使用も許可されているという点だ。

たとえ「10億の借金がチャラになる」と言えど、そんな恐ろしいレース、多くの人は「参加したい」とは思わないだろう。
しかし、拉致された蒼馬の体には、すでに彼が乘るマシン「スレイプニール」のスマートキーが埋め込まれていた。「スレイプニール」を動かせるのは、もはや蒼馬のみ。レース中にマシンが破壊されたり、彼がマシンから30m以上離れたりすると、キーから毒物が注入されて蒼馬は死ぬことになるという。
コースは東京全域の公道を3つのステージに分けたもので、最終ステージを1着でゴールインしたチームが賞金を総取りする。

覚悟を決めてスタート地点についた蒼馬は、レース中に次々と襲い来るライバルたちからの猛攻やルール無用の襲撃を、神業的なドライビングテクニックと「スレイプニール」に搭載されたド派手な特殊能力で、次々とクリアしていく。

まさに「自らの命を懸けたデスレース」のタイムリミットは24時間。
「スレイプニール」のスタート時の位置は最後尾。

「最後尾からのスタート! 今の俺にはふさわしいか!!」
言葉どおり“生き残るため”の蒼馬の戦いが、ここに幕を開ける。

問答無用にド派手で暴力的な「カーアクション・バトル漫画」

スタート早々、装甲車の車上からごついマシンガンを操り、周囲のライバル車を次々と破壊していくトチ狂った米兵崩れのドライバーが登場。
蒼馬が操るスレイプニールもその襲撃による大混乱の中に巻き込まれるが、マシンに搭載された8つの特殊能力のうちの一つ「EMシールド」のおかげで事なきを得る。

この「EMシールド」を起動させたのは、蒼馬を助手席で支えるナビゲーター・糸魚川美鈴(いといがわみれい)。彼女は父とともに、スレイプニールの開発を進めたマシンデザイナーだった。

美鈴は「スレイプニール」に搭載した特殊能力の軍事利用を狙う各国のマフィアや要人たちから「スレイプニール」を守るため、蒼馬の運転するマシンに同乗し、優勝を目指しているようだ。彼女の言葉によると、それは自らと同じく「スレイプニール」のメイン開発者でもある自身の父親を守ることにもつながるという。

たしかに彼女たちが開発したというこのマシン、とんでもない代物だ。なんというか「少年の妄想」を具現化したような特殊能力が数多く搭載されている。

前方で転がる2台の炎上車をクリアするために利用した、高圧電流を利用したバリアー「EMシールド」。
前方からの軍事ドローンからの狙撃は「加速装置(バーニア)のブースト加速」で振り切り、その猛スピードのまま「空気噴射(エアジェット)のコーナーサポート」でコーナーを曲がり切る。
1巻の時点で、特殊能力としては上記の3つが登場している。
のこり5つの特殊能力も、きっと「車好き」というより「SFマシン好き」な少年心をくすぐる、ド派手なシーンを演出してくれることだろう。

AIも搭載されており、搭乗者の音声を認識してさまざまな性能を発揮する。アラフィフのオヤジとしては、かつての人気TVドラマ『ナイトライダー』を想起させられた。
まぁ、設定としては『ナイトライダー』に入っていたアメリカンコメディ的要素はほとんどなく、もはや緊迫感しかない「デスレース」ではあるが……。

参加チームは全101チーム。
最下位からスタートしたスレイプニールは、1巻終了時点で62位までジャンプアップ。
しかし、東京23区を舞台にした第一ステージの終了までに30位に入らなければ失格となる。蒼馬の命を懸けたこのレースバトルは、スタートからゴールまで「ひたすら佳境」の連続なのだ。

とにかく問答無用の迫力が魅力の「カーアクション・バトル漫画」。
24時間というタイムリミットの中で、どれだけド派手で暴力的なカーアクションが展開されるのか、まずは次巻を楽しみにしたい。

レビュアー

奥津圭介

編集者/ライター。1975年生まれ。一橋大学法学部卒。某損害保険会社勤務を経て、フリーランス・ライターとして独立。ビジネス書、実用書から野球関連の単行本、マンガ・映画の公式ガイドなどを中心に編集・執筆。著書に『中間管理録トネガワの悪魔的人生相談』『マンガでわかるビジネス統計超入門』(講談社刊)。

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