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2020.06.13

レビュー

【近未来東京】量子AIシステムが不正を一掃した超法治社会。そこは天国か地獄か!?

なぜ悪いことをした人が罪に問われないのだろう。昨今のニュースを見ていて、そう思うことが増えたような気がします。
“法”は誰にでも平等であるはずなのに、逃げ切った者勝ち、騙した者勝ちなのではないかとモヤモヤした気持ちを抱えていたので、畳みかけるような『XEVEC』の“法廷バトル”にスカッとしました。

『XEVEC』の舞台である“ヘミスフィア”は、ミカド・インダストリ社によって東京湾内に造られた近未来の超法治都市。
ここは、目に見えない小さな粒子ロボット“ナノマシン”が霧のように散布されていて、常に人々の五感やバイタルをモニターしています。
また、マザーコンピューターである「XEVEC(ゼベック)」とリンクしているので、トラブルが起きたときは「XEVEC」が、即座に厳正かつ公平な裁決を行い、“ナノマシン”が当事者を拘束するなど、物理的に干渉します。

そんな“ヘミスフィア”に住む姉の環(たまき)を訪ねたシムラ深月(みつき)は、鍵のかかった部屋で殺された環を見つけます。

すかさず、謎の男により「XEVEC」に告発され、最重要被疑者として「自由行動権」を剥奪、手足を拘束されてしまう深月。



これだけでなく、深月が思わず発した「殺してやるッ!!!!」という言葉が、「XEVEC」により「殺害予告」として受理され、「無制限制裁権」が謎の男たちに与えられてしまいます。
「無制限制裁権」とは、対象への制裁を無制限に行使できる権利で、もしそれで相手が死んでも「正当防衛」が認められるというもの。

そんな絶体絶命のピンチを救ってくれたのが、外法屋(げほうや)のクドウ鎮馬(しづま)でした。


      

姉を殺した真犯人を見つけるため、深月はクドウに真相究明を依頼します。その対価としてクドウが要求したものは、深月の“人権”。
クドウの言葉を借りると、「全ての人権を差し出したアンタは、もう法的には人間じゃなくなる。奴隷ですらない俺の所有物だ。捨てようが殺そうが、俺は罪に問われない」。

とんでもない極悪非道な人非人!! と言いたいところですが、クドウには確固たる信念があるのです。

正しい人間が
バカを見るってのは
天秤が釣り合ってねぇ

…だから
俺が均
(なら)

クドウと深月は、なかなかの名コンビ。
シビアでクールなクドウvs.勝ち気な深月の言い合いは、ニタニタしながら見てしまいました。結構、お似合いなんじゃない? と言いたくなる感じ。

2人で他の事件を解決する中で、姉の死に関係した謎の男が、“合法的に犯罪を犯す組織”のミフネ士郎であることは判明。
しかし、深月は命を狙われることに……。

独特の世界感を持つこの作品の面白さは、なんといっても「XEVEC」を仲立ちとして罪状を申請し合い、相手を追い詰めるときのスピード感あふれるやり取りだと思います。
片方の主張に対して、もう片方が反論し、それに対して更に反論する。
矢継ぎ早に、これでもか!これでもか!と罪状を被せていく感じは、まさに“法廷バトル”。





こんなやり取りが随所に出てきて、メチャクチャ小気味いいのです。スカーッとします。
なぜ深月の姉は殺されなければならなかったのか? そこにはどんな秘密があるのか? 合法的な悪の組織に立ち向かう、クドウ&深月コンビの今後の“法廷バトル”に期待したいです。

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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