本作は、小説家であり医師でもある知念実希人の人気小説「天久鷹央」シリーズを原作に、キャラクター原案をゲームクリエイター・イラストレーターのいとうのいぢが務め、『かんなぎ』の武梨えりが漫画を描くという豪華な座組で生み出されたミステリー漫画です。
「天久鷹央」シリーズの始まりとなるエピソードを描いた本作『天久鷹央の推理カルテ スフィアの死天使』は、本シリーズの主人公で、若干27歳にして天医会総合病院の副院長、そして統括診断部長を務める天久鷹央(あめくたかお)と、その助手となる小鳥遊優(たかなしゆう)の出会いからスタートします。
医療系ミステリーには、たとえば理事長や院長を巻き込んでの権力とカネの争いや、医療ミスをめぐる隠蔽問題といったストーリーが思い浮かびますが、本作は深い医学知識を持つ天久による「診断」と圧倒的な頭脳による「推理」によって患者の症状に隠された謎、またその背景を探り当てていくという展開がスリリング。
ちなみに物語冒頭で天久が、自分を訪ねてきた小鳥遊を一瞥して「独身」「恋人ナシ」「1年以内に恋人と別れた」と“診断”する場面があります。この診断には明確な理由があって、その根拠がこちら。
もちろん、医療的な診断も的確な天久。統括診断部では、他科では診断のつかない複雑な病状の患者を診るのも仕事のひとつですが、時折病状以外でも厄介そうな患者がまわってくることもあります。別の病院で母が医療過誤に遭い、訴訟のための証言を求めて大騒ぎしているという来院者をまわされた統括診断部。検査結果を前に悩む小鳥遊に、助け舟を出す天久。
この後、再び「宇宙人」を口にする別の患者が運び込まれ、彼によって院内である悲劇が発生。奇妙な患者たちが口々に発する「宇宙人」とは一体何を指すのか。その背後には何が隠されているのか。
天久&小鳥遊のコンビがまさに産声を上げるエピソード0は、ファン心をくすぐりつつ、初見の読者にはシリーズの端緒から入ることができるという、初心者ならではの醍醐味も味わえます。
小鳥遊には、何やら過去に悲しい経験をしていることがうかがえる描写もあり、一体何があったのか気になるところ。








