「猫系男子」や「わんこ系男子」との恋は「お~~~ヨシヨシヨシ」と甘やかすイメージですが、さて「狼系男子」はどんな愛情表現がいいのでしょう。食べられてしまえばいい?
『オオカミくんと恋の晩餐』のヒロイン“穂積一華”は出版社で校正の仕事をしている30歳の女性。毎日同じ時間にきちんと起きて、髪型も服装も同じ。メイクだって同じ色のリップを使い続けています。しかもリップは同じ色を長年買い足しているのだとか(浮気せずに1本のリップをちゃんと使い切っているのがえらい!)。
一華は自分のことを「普通を煮詰めたような女」と評し、おしゃれを楽しむ若い女の子のようにはなれないなあ、なんて考える毎日。
でも校正の仕事は自分に向いているし、4年付き合った恋人だっているから、それなりに満たされている……だったハズが!
「つまんないんだよね」の一言でアッサリとフラれてしまいます。朝も昼も夜も全部マンネリで、イヤになったのだそう。4年も付き合ってそれ!? というか、マンネリはどちらか片方だけの責任なの?
傷心の一華がひとりでバーに立ち寄り、フラれてしまった自分の情けなさを嘆き、ついでに元彼の日本語の雑さにモヤモヤを抱え(職業病!)、お酒片手にシクシク泣いていると、“彼”が現れます。
“狼(ロウ)”と呼ばれたその職業不詳の若い男は、一華の隣に座り、一華をじっと見つめ、やがて「あるもの」に気がつきます。
一華がカバンに忍ばせていたのは大好きな作家“灰島累”のゲラ。ゲラを見た狼の目の色が変わったような……気のせい?
狼は、酔っ払った一華の「私なんてつまらない人間の代名詞」「フラれたばかり」「私だって本当は」なんて言葉を黙って聞いてくれて、一華の校正の仕事にも興味をもってくれて、しかも涙をペロッと舐めてくれる! 最後の行動は名前の通りオオカミみたい。
そして狼は一華を「お持ち帰り」するも、なにもせずに朝を迎えます。あれ、オオカミじゃない?
目を覚ました一華は大慌てで狼の部屋を後にして、なんと灰島先生の大事な原稿を狼の部屋に置いてきてしまいます。
ところが狼はちゃんと原稿を出版社まで届けにきてくれて、ますますオオカミっぽくない善良な人かなと思いきや!
一華とつきあいたいのだそう。涼しそうな目がオオカミっぽいよ。
突然「つきあってよ」と言われて「ハイよろこんで」と答えるようなフットワークの軽さは一華にはないけれど、狼は少しずつ一華の心をひらいていきます。
たとえば一華は「つまらない、変われない、赤いリップを塗ってみる冒険すらできない」と自分のことを言うけれど、狼は「変わらなくてもいいじゃん」と受け止めます。
一度しっかり受け止めたうえで、一華に新しい世界を見せてくれようとするんです。こんなことされたら前に進むしかないでしょ! うまい!
さらに「やってみたいことリスト」をふたりで紙に書いてみたり。初々しい。
狼といると、一華はこんな直球な欲望も口に出せるんですね。そして狼の字がとてもキレイ。このキレイな文字を、一華はどこかで見たことがあるそう。でも思い出せません。一華の中ですべてがつながったとき恋はどう変わるのでしょう。
年下なのに優しくリードして一華の心をそっと開いていく狼には、こんな激しい一面も。
やはりオオカミ! 狼は「変わらなくてもいいじゃん」と言っていたけれど、いや、むり、変わりますよこんなキスされたら!
お泊まりやキスが先行してしまったけれど、初デートはまだのふたり。
一華の心にずっとひっかかっていた「赤いリップ」のことを狼は覚えていて、それをデートでつけてきてほしいのだそう。今の一華にならできる? お楽しみに!
レビュアー
花森リド
ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。
X(旧twitter):@LidoHanamori