あなたにとって初恋はどんな思い出ですか?
甘酸っぱい思い出として懐かしく語る人もいれば、恥ずかしくて封印している人もいるかもしれませんね。どちらにも共通するのは「思い出」。そう、大人にとって初恋は思い出なんだと思うんです。けれど、もしもまだ思い出になっていない大人がいたとしたら──?
そんな少し(?)拗らせた大人の男性が主人公の恋愛マンガ『非合法ロマンス』が2024年06月13日に発売されました。
著者は『重版出来!』にて漫画編集者と出版社の仕事を描いた松田奈緒子先生。数多くのキャラクターが登場しつつも、一人ひとりを芯のある魅力的なキャラクターに描いていたことが印象的でした。
『非合法ロマンス』も1巻から年齢、立場の違うキャラクターが複数登場します。彼ら彼女たちが主人公にどのような影響を与えていくのか、松田先生の描くキャラクターに注目です。
主人公は女子大で憲法学を教える門馬太郎(もんまたろう)。独身で「奇跡の42歳」と陰で呼ばれるほどイケオジ……いや、イケメンです。
あまり感情を表さず、淡々としている彼には秘密の関係の女性がいます。それが既婚者で高校生の娘もいる医師・怜(れい)。彼が16歳の時、ケガで入院した際の担当医師でした。
なんと彼女は当時16歳の太郎を抱き、いまだにその関係は続いているのです。
あなたに抱かれてから 僕はあなたから離れられない
怜と疎遠になり、他の女性と恋愛をしていた時期もあったようですが、最終的には怜に戻ってしまう。26年間も現在進行形で引きずっている、なんとも“ヤバい”初恋です。(笑)
しかも彼は憲法学を教える立場。この恋が「非合法」かもしれないことは、十分に理解しているはずなんです。それでも抜けられない、やめられない「非合法ロマンス」に顔色一つ変えないのは強がりなのか、無意識なのか……。私は、終われない初恋が続くほどに不自由な身になっていることに、太郎は気がつかないフリをしているようだと感じました。
そして太郎をこんなにも拗らせた男性にした怜もまた、ミステリアスな雰囲気を醸し出しています。母として、社会人として、そして女性として、すべてを思い通りに楽しんでいるように見えますが、もしかしたら彼女も身動きの取れない生き方になっているのかもしれません。清々しさも感じる振る舞いの奥にある、彼女の心の声が気になります。
初恋という殻を破れずに変わらぬ日常を繰り返してきた太郎。元カノ、太郎に密かに恋焦がれる元学生、バスで助けた女子高生……1巻で登場した彼女たちが彼の日常を乱す存在となるのか。また、彼はこの出会いからどのように変わっていくのか。42歳の非合法ロマンスの終焉が少しでも明るいものであってほしいと願わずにはいられない恋愛譚です。
レビュアー
ライター。フリーランスで働く一児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!
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