だからそれまで一緒に生きようよ
『ヒモクズ花くんは死にたがり』の場合、“楓”のもとに飛び込んできたのはヘビー級の愛を抱えた黒猫みたいな男の子。
小指には、血のしたたる指切りみたいな噛み傷。ああ、一体どうしてこうなった?
社会人2年目の楓がある朝目を覚ますと、横にいたのは知らない男の子。
楓は社会人2年目の限界社畜。仕事は忙しい上に理不尽なことも多い。愛想が良く我慢強い楓は、仕事を押し付けられることも少なくない。
昨日は、そんな楓をいつもそばで癒やしてくれた最愛の家族・黒猫の花子が死んでしまった「最悪の日」だったのだ。
だからといって、知らない男の子を部屋に上げたのは流石にまずかっただろうか。帰ったら変な人のたまり場になっているかも……。そんな楓の予想を裏切り、彼女を迎えたのはピカピカの部屋に美味しい料理。
そんな掴みどころのない花くんとの共同生活は、意外にも驚くほどに快適だ。いつも塩対応なのに、しんどいときはそばにいてくれるところなんか、猫の花子とそっくり。猫と男の子は違うけど、やっぱり癒やされるしあったかい……。
約束の1週間が過ぎ、別れの日はあっという間にやってきた。
少しの名残惜しさを感じていた楓は、ある出来事をきっかけに、想像もしていなかった「本当の」花くんを知ることに!
ペットなんて無理!
黒髪と光の入らない黒い瞳、左目の下に2つ並んだ泣きぼくろに、口元のほくろ、左耳に並んだピアス。セクシーなパーツとくるくる変わる表情があいまって、絵に描いたような「沼」である。
なのに、冒頭の寝顔や、無防備な素をのぞかせるシーンではそれらが隠れているのもなんだかミステリアス。
だって、本気じゃないなら楓が死にそうになった時に見せるこの顔はなに?
よくわからない人、でも、一緒にいると寂しくなかった。それは花くんも同じようで……。
ラブコメ? いや、劇薬です
優しいけれど自分のことは明かさず、一線を引かれているようで寂しくなったタイミングでこうして距離をバグらせてくるのが罪だなあ……。
本作は「劇薬ラブコメ」とのことだけど、今のところはほぼ「劇薬」だ。心して手に取ってほしい。