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2023.04.02

レビュー

自称猫のイケメンが全裸で現れた! 猫の余計な恩返し【マタタビ系劇薬ギャグ】

しょうがないよ、猫なんだもの

茶トラ、白黒、サバトラの3匹の猫たちと生活を共にして20年。保護した野良の子猫も、ふらりと家に入ってきてそのまま居着いた猫も、飼い主の曇った目のフィルターを差し引いても「美猫」でした。というか、だいたいの猫は美猫なんですよ。目、鼻、口、耳、そしてヒゲの完璧な比率。この生き物を作ったとき、神様はかなり気合が入っていたんじゃないですかね。野良生活を送っているすすけた猫だって、保護されて環境と栄養が改善されれば、あっという間に毛艶が良くなって魅惑の変身! 逆に猫好きにしてみれば、多少顔のバランスが崩れた猫を見つけると「まぁ、なんてブサイクなの!」って希少性が上がる始末で……、まったく猫ってやつはどんな猫もかわいいにゃーん!



『くさっても猫なので』は、人間になった猫が恩返しにやってくる漫画なんですが、この猫が無駄に美形(というか圧が強いくらい美形)。なぜ美形か? 「そりゃ、くさっても猫なので、美形なんですよ!」と説明されなくても、猫好きは首をブンブン縦に振っちゃうわけですよ。それから、いきなりの「恩返しに来たよ」ってセリフが、「それどういう立ち位置から言ってるの?」って感じじゃないですか。それ、猫の物言いですよ。鶴はそういう言い方しないです(知らんけど)。





はい! 「なんか恩返しするよ」ってふんわりしたセリフを言ってる時点で、絶対に恩返しはされないというフラグが立ちました! そうして猫のフジマル(適当に名前を付けられた)に振り回される、コワモテ作家リクローの生活がスタートします。

そもそも、“くさっても猫”でも“しょせん猫”ですから、あんまり、かしこくないです。







この「猫にもわかるように言って」ってセリフが、私のお気に入り。「察してくれよ」とか、「空気読め」とか、面倒くさい状況で言ってみたい!

猫の出てこない猫漫画

コワモテ作家と、美形男子(猫)の二人暮らしは誤解を生み、まわりの人が散々な目に遭います。たとえば、あやしげな商売をしているチンピラ二人組。警戒感などまるでない人間1年生のフジマルは、このチンピラの「おいしい話があるよ」というマルチ商法の勧誘に、「おいしい」の意味を取り違えて引っかかってしまいます。50万を払えと迫られたフジマルは……







やくざ、ねずみ、抗争、殺して埋めた……、と勘違いが暴走し話は転々。ちなみに第1巻には、このチンピラ二人組が出てくるもう1エピソードがあり、そちらでは殺人の罪を着せられる恐怖を味わうことに!

それから、別の角度からリクローとフジマルの二人暮らしを見守っているのが、BL作家コンビの玉城姉妹。


“くさっても猫”がいるお隣さんに、興味津々の腐女子姉妹。なんだか、いろいろくさってる……。そんな彼女たちが、渋オジと超絶美青年の魅惑の生活に迫るべく、手土産を持って来訪するのですが








だめー! ぶどう(腎機能障害の原因になるよ。レーズンもダメだよ)も、たまねぎ(赤血球にダメージを与えるよ。ネギやニンニクもダメだよ)も猫に与えちゃだめー! 猫を飼ってる人なら「あとチョコレートや生卵、牛乳も~!」と言いたくなるエピソード。それを独占欲だと勘違いする玉城姉妹。いい感じの男二人がいれば、なんでもかんでもそっち側に妄想をふくらませるのが腐女子の性(さが)なのでしょうか。でも、そちらの方向でこの漫画をドラマにするなら……と妄想すると、「リクローに豊川悦司? いや『極主夫道』の元ヤクザ役がハマっていた玉木宏にお願いしたい」「フジマルには板垣李光人? いや大西流星かな?」って、考え始めたら止まらないんですけど!

もうひとつ共感度が高かったのがココ!




たしかに風邪をひいたとき、猫からの好かれ具合はハンパないです! 我が家の3匹は、布団の上に中に大集合。こちとら熱で気持ちが弱っていますから、「こんな私に寄り添って……」なんて思いがちですが、猫には抗えない快適な湿度(汗で)と温度(発熱で)で集まっているだけ(まぁ、それでも心地よいのでギブアンドテイクですけど)。ただ我が家の猫はメス3匹で、人間ならハーレムでしたが、フジマルはオスですからこういう絵になるわけで、このページを見てしまったら、もうオス猫は飼えないです。
この『くさっても猫なので』は、猫漫画ではあるのだけど、極端に猫が出てこない漫画で、だからといって猫濃度が薄いかというと、猫あるあるがいっぱいの「めっちゃ、わかるぅ~」なネタだらけ。この本のフジマルはまだ若いですが、ずっと続いてイケオジ、イケ爺になった話も読みたいなぁ。

レビュアー

嶋津善之 イメージ
嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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