天真爛漫な犬くんと冷静沈着な猫さまとの愛くるしい日々を描いたコミックエッセイ『犬と猫どっちも飼っていると毎日たのしい』(以下:『犬と猫』)。累計120万部を突破し、松本ひで吉氏の代表作として広く愛されています。
そんな日々の一瞬を切り取る天才・松本ひで吉氏が、新たに描き出したのは「妊婦生活」。妊娠が判明した5週1日目から出産間近の40週3日目までを描いたコミックエッセイ『十月十日も毎日たのしい』が、2024年11月13日に発売されました。同日には『犬と猫』の最新8巻もリリースされています!
妊娠初期の喜びとともに押し寄せるのは不安。小さなエコー写真の粒を医師に「かわいいでしょ!」と言われ、ほっこりする気持ちや、
椅子から立ち上がるときにお腹がつるという未知の体験。
お腹の不思議な感覚を味わうも「屁かな?」と思い、母から「胎動だよ!」と突っ込まれる笑い話など、妊婦の心と体の変化を飾らず語る本作は、マンガというよりも絵日記を覗いているかのような親近感があります。
出産を経験したことがある人にとっては、彼女の一喜一憂する妊婦生活の様子を「あるある」と共感しながら読む方も多いでしょう。
個人的に刺さった「あるある」は、骨盤ベルトの「べリッ!!」という音のうるささ。
トイレのたびに小さなストレスを感じるこの音、静かなタイプの骨盤ベルトが開発されたら、妊婦経験者たちの熱い支持を受けそうです。
もちろん、妊娠は十人十色。同じような経験をする方もいれば、異なるエピソードを持つ人もいます。例えば私は、本書を読んで尿漏れパットの種類の豊富さを初めて知りました。また、逆子治療として著者が挑んだ鍼灸と外回転術の壮絶さはこちらも「ヒィ!」と声が出そうになりつつも、思わず笑ってしまう体験談です。
私が妊娠中の時も一時期逆子で(ありがたいことに自然と治りましたが)鍼灸の先生に「めっちゃ熱いけど効果はある」と勧められていた治療法だったので、これが噂の!と興味津々で読み進めました。
妊娠・出産は未知の体験。検索すれば多くの情報が得られる現代ですが、情報過多の中で迷子になることもしばしば。だからこそ、本書のように「一人の十月十日」を覗くことは、楽しみであり、不安を軽くする助けにもなります。
経験者はつい「大変だった」ことを語りがちですが、そこにある本音は「今となってはそれも良い思い出」なんだと本書を読んでハッとさせられました。
全てが一変する日常の「十月十日も毎日たのしい」と伝えてくれる本作。全国で頑張っている妊婦の方々にそっと手渡したい一冊です。
本書には描き下ろしで、9ページにわたる出産エピソードが収録されています。連載では読めなかった怒涛の出産の様子に、思わず手に汗を握る展開。無事に生まれた男の子は「ぱるたん」という愛称でスクスク成長中だそうです。
さらに、ぱるたんとの日常が2025年春ごろからマンガアプリ「パルシィ」で連載開始予定とのこと。松本家の「毎日たのしい」日々は、これからも続いていきます!
レビュアー
Micha
ライター。フリーランスで働く一児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!
X(旧Twitter):@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier