冒頭から、「クセつよっ!」と言いたくなるキャラクターのオンパレード!!
読む前は、ラグビーは15人だから、登場人物が多くて大変だぞ!?と思っていたのですが、みんなクセが強すぎて、一体誰が主人公なんだかわからないほどキャラが立っていて笑えます。
中でも一番の熱血野郎が、新入生の一嵐(にのまえあらし)。
中学時代は東京都大会の覇者で、暁天(ぎょうてん)学園高等学校にはスポーツ特待生として入学。
ディフェンスを担う“プロップ”なのに、トライ数NO.1の伝説男(レジェンドマン)。だけど、ちょっとおバカさんの憎めない奴なのです。
「府中連合」の頭である町田千春と、190センチでピンク頭の女良(めら)雅治の一触即発の場面でも、気にせず割り込んでいきます。
そして「いっしょにラグビーやらねぇか?」と誘うと……
「昔っから不良を更生させるにゃラグビー部!って決まってっからよ~」という嵐のセリフに、1980年代に流行ったラグビードラマ『スクール・ウォーズ』のテーマ曲が、脳内で流れ出しました(笑)。
嵐は性懲りも無く、後日また町田に絡みに行きます。
しかし相手はヤンキーなので……
ところが、ラグビー部入部をかけた勝負に負けた町田は、舎弟たちとともにラグビー部へ入部することに。
と、『スクール・ウォーズ』世代としてはニヤけてしまう展開なのですが、一方で『花より男子』のF4みたいなキラキラ男子も登場し、さらにニヤついてしまいました。
それが、府中市納税額&暁天学園寄付金NO.1の行天財閥の御曹司・行天樺丸(ぎょうてんかばまる)。
行天財閥を継承する者は、真の「紳士道」を学ぶためラグビー部に入るのが伝統なのだとか。ラグビーは昔から、紳士のスポーツといわれていますからね。
樺丸は顔はいいのに、やっぱり可愛いおバカさん。しかも気が強そうな高校生の許嫁(いいなずけ)までいて、この先期待しかないです!!
こんな感じで一人一人説明していたら終わらないぐらい、とにかく新入生は濃いキャラばかり。
一体誰が主人公なの?と思っていたら……
ラグビーの合言葉に「One for all , All for one = 一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために」というがあります。
「この物語に主人公はいない」という言葉に、このお話の本質が見えた気がして胸が熱くなりました。
キャラの濃い9人の新入生と、キャプテンの鳴戸京平(なるときょうへい)たち上級生、やっぱりクセが強い女子マネージャー二人も加わり、これで面白くならないわけがない!!
実は暁天学園は、昨年の都大会に出場していません。
その事件の原因となったのが、どうやらラグビー部監督の後藤田先生のようなのです。
“いかにも”な強面(こわもて)の先生が出てきて、熱血教師が不良を更生させる『スクール・ウォーズ』とは大違いだぞ!!と(笑)。
この体型からすると、後藤田先生はナンバーエイト、でなければロックだったんじゃないか?など、登場人物たちのポジションを予測するのも面白い!
というのも、私の中学時代の唯一の愛読書は『月刊ラグビーマガジン』で、一人で練習や試合を観に行っていたほどラグビー好きだったので。
だからラグビー初心者の町田や樺丸が、どんな練習で笑わせてくれるのか!? いやいや、厳しい練習にどう立ち向かっていくのか!? そこに後藤田先生だけでなく、不良中の不良、ピンク頭の女良雅治がどう絡んでくるのか、濃いキャラ同士の肉弾戦が、これからも楽しみです!!
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp