麻雀だからといって、キメツケはやめて!
この漫画『ぽんのみち』を紹介する前に、アニメ『ぽんのみち』を説明しなければなるまい。
アニメ『ぽんのみち』は、今年1月から放送されている、麻雀を楽しむ女の子5人組のお話。でも未見のお父さん方は、その設定を聞いただけでタバコの煙と札束が飛び交う雀卓を想像しちゃいますよね。でもね……
そういうんじゃないんです!
アニメ『ヤマノムスメ』(登山)や『ゆるキャン△』(キャンプ)のヒットあたりから、『放課後ていぼう日誌』(釣り)など、昨今のアニメジャンルとして「あんまり女の子はそういう趣味には手を出さないよね」という趣味にハマった女の子が、わちゃわちゃ楽しんでいるさまを愛でるというジャンルがあるのですよ。その麻雀版がアニメ『ぽんのみち』。女の子同士の友情や、ゆるふわっとした日常にニヤニヤ……否、癒されるというもの。『賭博黙示録カイジ』みたいなヒリヒリとした世界とは真逆の世界なんです。
と、ここで思うわけですよ。「たしかに登山女子もキャンプ女子もいる。釣り女子もいる。でも麻雀女子っている?」と。たしかに女性のプロ雀士はいます。でも女性ファッション誌で「春のアウトドアコーデ」企画はあっても、「池袋西口の雀荘コーデ」の企画は見たことない! どう考えてもティーンエイジの女の子には、麻雀のハードルは高い!
それなのになぜ、講談社発「オリジナルテレビアニメーション原作」第1弾の作品テーマが麻雀になったか?
それは多分、アニメの企画を立てた担当者が麻雀好きだったから!
としか、考えられません。
でもって、このアニメの担当者、仕事がデキる! 堅い! 手堅い! この布陣。
キャラクター原案に大ヒット漫画『五等分の花嫁』『戦隊大失格』の春場ねぎ大先生!
監督・脚本に『劇場版 FAIRY TAIL -DRAGON CRY-』、『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』の南川達馬大監督!
さらに元乃木坂46メンバーで現Mリーガ―の中田花奈(*1)が主題歌を歌って、レジェンド声優・大塚明夫が麻雀の精霊「チョンボ」役を演じる(*2)って……
本気でヒットにリーチかけてます!
*2 ゲーム『メタルギアソリッド』のスネークになにをさせるねん! なにを考えているのか、さっぱりわからない。けど、面白い。
と、長い前段になりましたが、もうひとつ。
このアニメのコミック化に名乗りを挙げたのが、なんと70年の歴史を持つ月刊漫画雑誌「なかよし」! 昨年12月発売の2024年2月号では、特製カード麻雀セットを付録にするという驚きの展開をみせました。小学生の娘から「麻雀しよ!」と誘われた、日本全国のお父さんのとまどいの顔が目に浮かびます。
女子高生たちのたまり場は、閉店した雀荘
物語の舞台は尾道。母親に怒られて家を追い出された十返舎なしこが、たどり着いたのは一軒家の雀荘。そこはかつて父親が経営していた雀荘だった。ここを友だちとのたまり場にしようと、なしこが掃除をしていたところ
と、麻雀の精霊チョンボが登場! さらに幼なじみの徳富泉に河東ぱい、この雀荘に思い出があるというお嬢様・林リーチェが現れ「ちょっと打ってみる?」という話に。プロ雀士並みの腕前を持つリーチェ以外は、ほぼ初心者。よって、ここから麻雀講座がスタートする。
ふんふん、そうそう。
そこでメゲるんか~い!
と、麻雀ができるお父さんはズッコケると思いますが、最近の女子高生は「ならば、アプリ麻雀で!」という話になっちゃうんですよ! すごいね、生まれた時からスマホがある世代は。雀荘でアプリ麻雀するんだから……。お父さん、なんだか切ないよ。
そして、オンライン対戦で「FOOL'S MATE」というプレーヤーにフルボッコにやられる4人。リーチェは「FOOL'S MATE」の打ち筋を読み、ドラ待ち七対子(チートイツ)テンパイで仕掛けます。
と「FOOL'S MATE」を直撃!
すると5人目の登場人物、「FOOL'S MATE」こと江見跳が、雀荘に現れる(口惜しいのはわかるけど、七対子の単騎待ちなんて読めないから事故だと思いましょうよ。ドラを簡単に捨てるのは要注意だけどさ)。
と、ここまでが第2話。
第3話目にして、この5人組は麻雀しません! バーベキューに行きます!
第4話目は海に行きます! やるのはコレ!
た、た、楽しい。
なんか、今まで殺伐とした気分で打っていたお父さんの麻雀、間違っていた気がする。
ということで、おわかりいただけたであろうか?
あんまり女子高生は手を出さないであろう麻雀にハマってしまった女の子が、わちゃわちゃ麻雀を楽しんでいるさまを愛でる楽しさが。
このマンガのわちゃわちゃした感覚は、アニメでもまんま再現されています。付け加えて言っておくと、マンガとアニメではキャラクターや舞台設定は同じなのですが、物語は異なります。なので、マンガの延長戦でアニメを見るもよし、アニメの延長戦でマンガを読むもよし。そのあとは、娘さんを誘って半荘(ハンチャン)いかがですか?
レビュアー
関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。