ギャルの高度コミュ力により可能となるラブコメ
夢のような話には注意が必要だ。
※注 青春をこじらせたまま中年になった人間の妄想がしばらく続きます。
要注意である!
彼女の名前は夏目葵。全校生徒240人中、2XX位の偏差値30ギャルだ。ただ、昨今はギャルといっても裾野が広い。夏目さんの場合は、「みちょぱ」「ゆうちゃみ」の強めラインではなく、ガリ勉陰キャな主人公・秋月英士君にも受け入れやすい「めるる」ライン。ただ「めるる」と「生見愛瑠」は同一人物であっても、ギャルかモデルか線引きが難しい(そもそも「めるる」がギャルなのか確信がないのだが、その曖昧さこそが彼女の戦略なのだろう)ように、本作の夏目さんもギャルかどうか微妙だ。というか、疑わしい。
ここで「夏目さんはギャルであるかどうか問題」を掘り下げさせていただく。
夏目さんは、
①金髪である
②あきらかにギャル系の人(およびその取り巻き男子)のグループに属している
③鎖骨が見えている
④コミュ力が高い
ことからして、ギャルである。
しかし、夏目さんのようなギャルクラスタに属する人が、ガリ勉陰キャの秋月君と交流しようとするだろうか?
そんなことはありえない。ドンッ!
だから、彼女はギャルではない。ドンッ!
さらに、あろうことか、
なにげない接触!
やる気!
とびきりの笑顔!
「危険だ! 罠だ! 裏があるぞ!」と、本能が半鐘を打ち鳴らしている!
しかし、待てよ……。
夏目さんがギャルである理由④は「コミュ力が高い」だった。
そのコミュ力が、人並はずれて高ければ……。
そのコミュ力が、ガリ勉陰キャに対しても発揮されれば……。
こんなことが成立しちゃうかも!?
「そうだ! そうだ! ありえるぞ!」と、本能がファンファーレを鳴らし始める!
最終的に一周まわって「夏目さんはギャルだからこそ、ガリ勉陰キャの秋月君と仲良くなれる」し、「ギャルとガリ勉陰キャのラブコメは、異世界転生ストーリーよりあり得る」ということで、私の脳内は決着がついた。
どうでもいいことだが、この世界線をはっきりさせておかないと、秋月君がいつ不幸のどん底に突き落とされるかドキドキハラハラのサスペンスになってしまい、ラブコメとして楽しめなくなってしまうからね(と、ストーリー解説に戻る)。
さて、どうして夏目さんは勉強を始めたのか?
そんなん言われたら、惚れてしまうやろ~~~~!
そんなん言われたら、残りの人生がどんなに不幸でも、お釣りが返ってくるわ~~~!
ふたりの勉強の邪魔をするヤツは許さん!
夏目さんはかわいい。無敵レベルでかわいい。秋月君は「夏目葵成績向上計画書」なるものまで作り上げ、彼女を指導しようとする。
似てないよ! 秋月君!
そんなふたりをこころよく思わない人物が出てくる。
そりゃ、出てくるわな。
彼の名は高坂茂。
「こ、こっ、高校にピアスつけて登校しちゃダメなんだぞ!」と言いたいけど、平和な学校生活を送るなら、彼の視界に入らないようにしなくちゃいけないタイプだ。
あやうし、夏目さん。
そして、よりにもよって夏目さんと秋月君の初デートで、この観葉植物プリントシャツ男(aka.高坂茂)と遭遇する。
パラッパッパッパー。秋月君のレベルが上がった。
想定外の彼の勢いに、観葉植物プリントシャツ男は「気が変わってグループに戻ってきたって、お前の居場所なんてないからな」という捨て台詞を、夏目さんに残して去っていく。
「ばーか、ばーか、クソださシャツのばーか!」と秋月君は言わないが、読者は全員そう思う。そして……、
きたー、ご褒美勉強ターイム!
なんて素敵な世界だろう! ここには青春に必要なすべてが詰まっている! 日本に夏目さんが100人いれば、み~んな勉強を始めて、10年後にはGAFAを超える巨大企業が続々登場して、日経平均株価は6万円台に乗るね!
そんなふたりに、次なる刺客が現れる。
彼女の名前は黒木紗奈。黒髪のクラス委員長で、not鎖骨だ!
こ、これは、まさかの秋月君狙いか!
夏目さんのデレに対抗する、ツン攻めだな!
秋月君、よく考えるんだ。
今の君があるのは、夏目さんのおかげだからな!?
そして夏目さん。目指せ、偏差値70!
偏差値30ギャルとガリ勉陰キャな俺。~学年トップの俺がギャルを優等生に変えてみた~(1)
著 : ベーコン・譲
原作 : 周防 ツカサ
その他 : さいたま
レビュアー
関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。