忘れられない「お泊まりディズニー」の魅力
ディズニーホテルで「お泊まりディズニー」を体験したことはありますか?
私はこれまでの人生で一度だけ、東京ディズニーシー・ホテルミラコスタに泊まり、ランドとシーの両パークを楽しんだ経験があります。それは高校生の頃に母と訪れたのですが、あの夢のような2日間の興奮は、15年以上経った今でも鮮明に思い出すことができます。
その魅力は、パークを出た後もホテルで続く「夢の世界観」だと思っています。パークを後にした時に感じる「現実に戻ってきてしまった……」という寂しさを味わうことなく、ディズニーの世界観に浸ったままホテルライフを楽しめることが、何よりも素晴らしいのです。
そんなディズニーホテルの魅力を経営者目線で語った『ホテルの力 チームが輝く魔法の経営』が、2024年7月19日に刊行されました。
著者は、現在ある6つのディズニーホテルすべての開業に携わった株式会社ミリアルリゾートホテルズの代表取締役社長、チャールズ・D・ベスフォード氏。50年近くホテル業界一筋で活躍してきた彼が語るリーダー論や仕事の流儀から紐解かれるディズニー流のおもてなしの全貌は、ビジネス書としてだけでなく、ディズニーファンにとっても興味深い内容となっています。
『ホテルの力』が語る、夢のホテル体験の秘密
たとえば、上述した私のディズニーホテルに対する感想は、まさに彼らが狙ったホテル体験であることが本書からわかります。
・各ホテルがテーマ性を徹底し、子ども目線で楽しめる仕掛けをたくさん用意し、ファミリーが快適に過ごせる空間を提供する。
・その上で、ホテルの常識ではなく「ディズニー流の常識」を身につけた従業員たちが空間を演出する。
本書では、それぞれがなぜディズニーホテルに必要であるのかが丁寧に解説されています。これらを徹底しているからこそ、私たちゲストは非日常のホテルライフだけでなく、ディズニーホテルでしか味わえない、ワンランク上の夢の世界のホテルライフを体験できるのです。
ディズニーファンとして、ディズニーの裏側を覗いたような気分になり、非常に興味深い内容でした。
リーダー論としての「水を育てる」視点
では、その空間を演出するキャスト(従業員)たちのモチベーションはどのように高められているのでしょうか。それこそが本書の肝となるリーダー論です。お互いを褒め合う文化を定着させ、質を高めるための効率化を推進するなど、いくつかの方法が紹介されている中で、私が特に興味深かったのは「水を育てる」という視点でした。
アクアリウムの水質が悪ければ魚も育たないことから例えられた「水を育てる」という言葉。
リーダーはその人個人を育てようとする前に、職場の環境を向上させることを第一に考えるべきなのです。
従業員を育てるというと、会社のルールに沿ってできないことを指導しがちです。しかし、著者は一人ひとりの能力を発揮させるために、働きやすい「空気」と「場」を作ることに注力することこそがリーダーの役割だと言い切っています。それは従業員に対して絶対の信用と信頼を持っているということでもあります。その期待に応えたいと思わせる環境があるなんて、羨ましい限りです。
本書では「環境を整える」をどのような視点で考えるべきか、著者のこれまでの経験談を踏まえて解説されています。チームで働くリーダーはもちろん、子育て中の私にも役立つ内容だと感じながら読み進めました。
マスターピースとなったファンタジースプリングスホテル
2024年6月6日にオープンした東京ディズニーシーの第8番目のテーマポート「ファンタジースプリングス」は、『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ピーター・パン』の3作品の世界をテーマとしたエリアで、大きな話題となっています。
このファンタジースプリングスのエリアに開業した「東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテル」は、著者にとってのマスターピースとも言えるホテルだと断言されています。著者によって語られるファンタジースプリングスホテルの魅力は、文字を追うだけで脳内に煌びやかな映像が浮かび、ワクワク感を掻き立てます。思わず予約ページにアクセスして、自分の手帳と交互に睨めっこ。
誰と行こうか、いつ行こうか、どんな風に過ごそうか……。
その日の夢は広がるばかりです。
レビュアー
ライター。フリーランスで働く一児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!
X(旧Twitter):@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier