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名前も職業も年齢も知らない人に恋してる。喫茶店で始まる大人のピュア恋

第二第四火曜日の恋(1)
(著:高瀬 わか)
2020.10.24
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喫茶店で静かにはじまる恋

毎話「よかったね……!」とホッと読める作品だ。そして喫茶店の居心地の良さを思い出した。カップに注がれたコーヒーの香り、いつも座る席、自分だけの小さな世界……ひと息つけるあの空間。喫茶店でしか味わえないあの空間。『第二第四火曜日の恋』の舞台は小さな喫茶店。そして喫茶店のあの居心地の良さそのままのようなラブストーリーだ。

「何も知らない人」に恋をする

喫茶店でウエイトレスとして働く“律”は、とあるお客さんに恋をしている。



いつも必ずブレンドを頼み、座る場所も決まって同じ窓際の席。こういうお客さん、いる。

本作はこの男性を見つめる律の姿がめちゃくちゃ良いのだ。



クラシカルな制服が可愛い。そして表情や仕草もとても良い。



本人はさりげなく見ているつもりかもしれないけれどしっかり目で追ってしまうのが可愛い。そして額にかかる前髪。美しい。

で、律が恋する相手はどんな人物かというと……?



渋! というか、頬に傷跡があって、目つきは鋭くて、ネクタイしてないスーツ姿……激烈渋い。このハードボイルドな彼は毎月かならず第二第四火曜日に来る。いったい何をしている人なのだろう。



案の定あぶなげな展開……! と思いきや、当の律はまったく違うことを気にしているのだ。

それは、男がどんな名前で、幾つで、既婚者かどうか……そう、大人が恋に落ちるときに気にする基本的な情報だ。で、「訊けばいいじゃん」が成立しないのがまた面白い。だってここは喫茶店。そして律と男はウエイトレスと客の関係。



彼のことが知りたくてしょうがないけれど「おいくつですか?」なんて絶対に尋ねない。これが良い。だって、もしそんなことを喫茶店で質問されたら、次また同じ店に行くだろうか? 私は無理。リラックスできる気がしない。ウエイトレスと客の距離を保ちつつ、律はどうやって名前も素性も知らない男の情報を集めるか?



とりあえず見たいよね、指輪。



見えそうで見えない左手の薬指! ふだんはおっとりと静かなのにこの時だけは食らい付かんばかりの勢い。

これだけ必死にがんばって全センサーを男に向けているので、律は各エピソードごとにすこーしずつ男の情報を手にする。好きでしょうがない相手の些細な情報をコツコツコツコツ積み上げ笑顔になる律がめちゃかわいい。読んでるこっちも「ああ、この男の人はそんな人なんだね」と一緒に笑顔になる。

周りが気にする事は目に入らない2人

律の静かで強い恋心の何が清々しいって、ただただその人を好きなところだ。



律は周りの人が感じるような「この男、ひょっとしてカタギじゃなくないか?」という懸念を一切抱かない。

そして、この「周りのイメージがさっぱり気にならない」感じは、律だけのものではないのだ。



美人で優しそうな律は喫茶店の男性客の憧れの的。でも男は「この子レベル高いな~」なんて思わない。でも何かしら印象に残っているようだ。(律の態度を考えれば、印象に残るのは納得)

静かに静かに恋が深くなっていくさまが楽しい。彼女の恋心をそっと見守りたくなる。



この律のキラキラした目! いいよなあ。

律が彼をどんな人であるか知っていくように、読者もまた律がどんな人物かを少しずつ知っていくのが面白い。ドラマチックな背景や立場は語られないけれど、ちょっとした仕草やお店に出勤して制服に着替える姿を見て「きっと、いい人だな」と感じさせるのだ。午後の喫茶店のようにすべての時間がゆっくり進んでいく。優しい気持ちになる奥ゆかしい1冊だ。

  • 電子あり
『第二第四火曜日の恋(1)』書影
著:高瀬 わか

「あの人は第二第四火曜日にだけやってくる――」
喫茶店で働く律は、ある男性客に恋をしている。カタギに見えない、強面な外見。年齢・職業不詳。だけど気になるあの人のこと。あの人のことをもっと知りたい――。
マッチングアプリでは探せない、「何も知らない」から始まる恋。美人ウエイトレスと謎の男。大人同士のピュアなラブストーリーが始まる。

レビュアー

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花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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