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2020.08.25

レビュー

メイドさんが食べるのを見てるだけ。美味しい表情いーっぱいのシアワセ!

よく知っている「おいしい!」

2つの意味でとてもなつかしいグルメマンガだ。

1つは、ホカホカのたい焼きやお団子の2個目以降をかじるとき。「今日はどうやって食べよう」「おいしいな」で五感ぜんぶが大忙し。そんな瞬間がフワッとよみがえる。きっと大勢の人が『メイドさんは食べるだけ』で同じ気持ちになるはずだ。

主人公は“スズメ”というメイドさん。英国のお屋敷で働く彼女が、訳あって日本のアパートで1人暮らしを始め、日本のおいしいものと出会い、それはそれはおいしそうに食べる。



「たい焼き、頭から食べるか尻尾から食べるか? 作法は?」とあたふたするスズメの姿に「あっ!」となる。これがもう1つのなつかしさだ。

私も外国で見知らぬ食べ物に出会ううとスズメと同じ気持ちになる。たとえばチェコのトゥルデルニーク。甘く香ばしい生地がクルクルと焼きあがるのを1人で見とれていたらお店のおじさんが「食べてごらんよ!」とすすめてくれた。あれ、うれしかったなあ。

そう、スズメにとって日本は異国のような場所なのだ。すべてのシーンが好奇心とおいしさでキラキラしている。



ああしあわせ。おいしそうに食べる姿って、なんでこんなに見る側もしあわせな気持ちにしてくれるんだろう。

本場のメイドさんが、ただただ食べる

“橘スズメ”はメイドさん。なので終始メイド服で活動している。これがめちゃくちゃかわいい。



このスカートの丈の長さ、キュッとつまった襟。クラシカル! いい!
(ちなみに黒髪に碧眼で、程よく非日常感がある)



畳に広がるスカートとエプロンにグッとくる。彼女の不思議な部分は物語のところどころで少しずつ披露される。が、あまりにかわいいのとごはんが良すぎて「なんでメイドさんが?」という疑問はひとまず吹っ飛んでしまう。(ちなみにこのシーンは日本のグルメガイドブックに付箋を貼りまくっているところ)

で、スズメはメイドさんだけども、勤め先のお屋敷は英国にあって、1年はお屋敷に戻れない。なのでメイド的なお仕事はさておき、日本のいろんなごはんを食べに日々出歩いている。このチョイスが絶妙に良い。私たちが日頃「ああおいしい」と思うものを、スズメは沢山食べてくれるのだ。



たとえばコンビニおにぎり。海苔がしっとり寄り添う「とり五目」とパリパリ海苔がおいしい「紅しゃけ」。いいね! ちゃんとお手拭きも買っているところも愛らしい。



初めてコンビニおにぎりを食べたとき、確かに海苔が上手に巻けなかったなあ。スズメはずっとイギリスにいたから、日本のごはんが新鮮。素直かつ丁寧な食レポが愛らしい。うんちくにも「へええ!」となる。そして、本当においしそうにおにぎりを頬張るスズメがかわいい。コンビニおにぎりの開発者が読んだら嬉しいだろうな。

スズメの真面目で食いしん坊で朗らかな人柄は、ごはんだけじゃなく人付き合いからも伝わってくる。



お隣に住まう小松さんに「とあるお菓子」を持ってご挨拶。これがまたかわいいんだ。(小松さんのおでこを出したヘアスタイルとコロンとした太眉がかわいい……)

最初から最後まで「おいしそう」と「かわいい!」がサンドイッチのように訪れるマンガだ。揚げたこ焼き、自販機のアイス、メロンパン、信玄餅……めくるめく日本のごはんと、それをおいしそうに食べるスズメの表情を堪能してほしい。

そうそう、イギリスのお屋敷で働いてきたスズメが急須で甜茶(てんちゃ)を淹れる場面が本当に優雅なのでじっくり読んでほしい。さすが、と思った。



急須にお湯を注ぐ音、コンロでポットのお湯が沸騰する音までちょっとおいしそう。細部のさりげなく丁寧な描写がスズメの人柄とマッチしていると思う。本作の季節は春。これから先は夏や秋のおいしいものが待っているのかー、いいなあ、楽しみ!

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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