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講談社社員 人生の1冊【69】『裸でも生きる 25歳女性起業家の号泣戦記』
(著:山口 絵理子)
太田美千子 ディズニーファン編集部 30代 女
強く、しなやかに“歩き続ける人”
編集の仕事のいちばんの醍醐味は、いろんな方に会えること! なんといってもこれに尽きる、と私は思っています。取材や撮影で、ビシビシとオーラを放つスゴイ人に会うたびに、「だから仕事はやめられない」と何度実感したことか、わかりません。
今回ご紹介する『裸でも生きる』の著者、株式会社マザーハウス代表の山口絵理子さんにお会いしたのは、2007年。当時在籍していた女性誌の記事のための取材でした。取材前には、もちろんその方の著書やブログに目を通します。『裸でも生きる 25歳女性起業家の号泣戦記』──インパクトあるタイトルと山口さんのさわやかな写真が一見ミスマッチ(!?)なこの本も、はじめは仕事の資料として読みはじめました。それが、だんだん読み進めるうちに、著者の並々ならぬ傑物ぶりにゾクゾクするほど圧倒され、ついには、思わず涙まで出てくる始末……。
「この人はスゴイ!」
山口さんは、1981年埼玉県生まれ。小学校時代イジメにあい、その反動で中学では非行に走る。その後、強くなりたいと高校の「男子柔道部」に自ら飛び込み、女子柔道で日本のトップクラスに。偏差値40から受験勉強3ヵ月で慶應大学に合格。大学のインターン時代、ワシントンの国際機関で途上国援助に矛盾を感じ、アジア最貧国「バングラデシュ」に渡り日本人初の大学院生になる。必要なのは施しではなく先進国との対等な経済活動という理念で23歳で起業を決意。ジュート(麻)を使った高品質バッグを現地で生産し輸入販売する「株式会社マザーハウス」を設立。
なんともダイナミックな経歴をもつ女性ですよね。でも、それにもかかわらず、山口さんご本人を目の前にしたときの私の第一印象は、意外にも、「なんてソフトな人なんだ!」というものでした。物静かな佇(たたず)まいとやわらかな笑顔が印象的で、こちらの質問にも、的確に優しくお答えいただきました。日本と現地を行き来する社長業の傍ら、各地を講演で飛びまわるというパワフルな女性であるはずなのに、むしろ透明感が際立っている感じ、といったらよいでしょうか。20代半ばにして、“本物”の存在感をもつ山口さんを前にして、私は、軽くショックを受けてしまったほどです。「30代の自分は、今まで何をしてきたんだろう……」。
子どものころから、伝記や歴史人物伝が好きで、本を通していろんな人の生き方を知り、感じてきましたが、それはすべて歴史上の人や、少なくとも自分よりは上の世代の人でした。現実に、日本で、しかも年下の人の生き方に心の底から感動してしまうとは、そのときまでは思ってもいませんでした。私が出会った「スゴイ」人のなかでも、その意味で特に印象に残っている体験です。
今回、「このイチ」におすすめを推薦するにあたって、どの本をご紹介するか、実はかなり悩みました。子どものころ読んだ本、学生時代に感動した本etc……候補がいくつかあって選べずにいたのですが、たまたま本の整理をしていたとき、どうしても整理できなかった本のひとつが、山口さんの『裸でも生きる』でした。仕事を通してご本人にお会いできたこともありますが、1冊の本として、著者のストレートな躍動感をずっと大切に感じていたいと思える本です。起業をめざす人にとってだけでなく、どんな仕事にも共通するヒントをもらえますし、生き方に迷ったときに前向きなパワーをくれる本ではないでしょうか。
山口さんは、2年後の2009年には『裸でも生きる2 Keep Walking 私は歩き続ける』を出版されています。こちらでは、バングラデシュ以外にもネパールでビジネスを始めていった体験がつづられています。
自ら道を切り拓いて“歩き続ける人”、山口絵理子さんが歩んできた道を、この2冊をとおして、ぜひ多くの人に感じてみてほしいと思います。
- 電子あり
イジメ、非行……居場所がなかった青春。強くなりたいと入部したのは「男子柔道部」。そして偏差値40から3ヵ月で一流大学合格。大学を卒業し、本当の現場を見たいと渡ったアジア最貧国バングラデシュ。腐敗にまみれた国で見つけた眠る素材、出会う人々。やがてバッグ造りで起業を決意。数々の失敗、挫折、裏切りに遭いながらも歩みを続け、途上国発ブランド マザーハウスを軌道に乗せて各マスコミで最注目の女性の、明日へ向かう力に溢れたノンフィクション。
「途上国発のブランドを創る」。こんな突拍子もないアイデアを実現させるべく奮闘中の女性社長・山口絵理子さんの自伝エッセイ。一歩踏み出す勇気がここにある!
既刊・関連作品
執筆した社員
太田美千子【ディズニーファン編集部 30代 女】
※所属部署・年代は執筆当時のものです
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