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第48回講談社漫画賞 受賞作発表!!

2024.06.17
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講談社では、日本の漫画の質的向上をはかり、その発展に寄与するため、昭和52年から「講談社漫画賞」を設けて、毎年最も優れた作品を発表した漫画作家を顕彰いたしております。本年度の漫画賞選考委員会は5月14日に開かれ、「第48回講談社漫画賞」少年部門・少女部門・総合部門の3部門を決定いたしました。講談社漫画賞のシンボルとして山形博導氏制作のブロンズ像「MEMORY」が受賞者に贈呈されます。

選評

安藤なつみ

今回初めて審査に加わって選考会の熱を肌で感じることができました。

少年部門は定番のバトルを個性的な絵と多彩な技で魅せてくれる『ガチアクタ』に票を入れましたが、やはりこの傑作を無視できないと『葬送のフリーレン』に決まりました。

少女部門は全作素晴らしく、読んでいる間ずっと幸せでした。その中で、まだ3巻なのにキュンが止まらなかった『きみの横顔を見ていた』に気付いたら1票を入れていました。どの恋も上手くいってほしいと思わせる各キャラクターの繊細な描写力と構成に脱帽しましたし、この片思いをどう着地させていくのか続きも気になる色んな魅力がある作品です。

総合部門は候補作になる前から好きだった『メダリスト』にとって欲しいと強く思っていたので、それが叶って私も嬉しかったです。コマ割りや見せ方、そしてセリフで実際の動画よりも迫力を出せるし熱くさせられる……漫画の素晴らしさを伝えてくれる作品だと思います。

今回の選考会であらためて漫画の面白さを教えてもらってノミネート作全ての作者様に感謝したいです。

海野つなみ

【少年部門】真っ当さが胸を刺す『薫る花は凛と咲く』、世界観の造形が凄まじい『ガチアクタ』、ずっと推しててやっと獲ったよ『葬送のフリーレン』、この先が楽しみすぎる『戦車椅子 -TANK CHAIR-』、文句なしの面白さとキャラの良さ『黄泉のツガイ』。

【少女部門】飛び抜けた美しさ絵のうまさ『うるわしの宵の月』、全員片想いの大名作『きみの横顔を見ていた』、少女漫画の枠を飛び越えてるサイコラブ『ホタルの嫁入り』、こんな優しい世界であってほしいと願わずにいられない『ゆびさきと恋々』。

【総合部門】もはや国民的エンタメ作品『推しの子』、クオリティ高過ぎドラマ化はまだですか『ダーウィン事変』、セイレーン編が入っていれば大穴だったか『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』、ストーリーテリングがうま過ぎる『ながたんと青と -いちかの料理帖-』、作家性爆発の大傑作『望郷太郎』、凄まじい漫画力に圧倒される『メダリスト』。

どの作品も最高、審査されるのはいつも選考委員の方です。

小川悦司

【少年部門】『葬送のフリーレン』は、読む程にほろ苦く美しい時間が味わい深く流れ、フリーレンのキャラも秀逸で、満を持しての受賞に納得でした。高いメジャー感と作家性の『黄泉のツガイ』、無双の画力『ガチアクタ』、若者の代弁者『薫る花は凛と咲く』もさることながら、個人的に『戦車椅子』のイカれっぷりはダントツの衝撃的面白さでした。

【少女部門】もはや逆に殿堂入りでいいクオリティを維持し続ける『ゆびさきと恋々』に、今回紙一重で競り勝ったのが『きみの横顔を見ていた』。“引き算”の職人技で読者を誘い込む心理描写術は崇高な芸術の域でした。

【総合部門】超王道巨編『メダリスト』が、フィギュアスケート特有の感動を豊富な取材と鳥肌モノの熱量、魅力的キャラクターで表現し尽くし、抜きん出ていたと思います。『ダーウィン事変』も目が離せない展開、『推しの子』は13巻で大号泣してしまいました。

受賞された皆様おめでとうございます!

久米田康治

少年部門は、やっぱり『葬送のフリーレン』。順当にフリーレン。そうだろうなフリーレン。この作品が獲らないのは、不自然でしょう。黄金郷編も素晴らしかったが、個人的には、時たま挟む短編が好きだ。それは音楽のアルバムのように構成され、長編を続けて読むことに疲れた老漫画家に、心地よさを与えてくれる。自分が好きな短編は、依頼人も目的も知らずに、ただ送られてくる依頼書の指示に従い任務を遂行し、老いてしまったアサシンの話。かつて工場でバイトしてた時、何に成るのか、何の部品かわからず、ただ不思議なパーツを作ってた頃の切なさを思い出した。2年連続ノミネートの『ガチアクタ』は、主人公が帰郷できても「マイナスがゼロに戻るだけで、カタルシスに欠ける」という身も蓋もない意見もあったが、疫病や戦争の蔓延する今の時代「日常に戻ることの大切さ」は読む者の心を打つと思った。今回もノミネート作はカロリーの高い作品が多かった。人とコストをかけ分業し、高い完成度を誇る作品群。もう漫画は個人で描く時代じゃないのかもしれないと思うと、一抹の寂しさを感じた。そんな中『黄泉のツガイ』は、荒川先生の「個」の力を見せつけてくれた希望であった(もちろんスタッフ達はいるのだろうが)。漫画というのは「個」の表現媒体の範囲で、誰でも描けるものであって欲しいと願う反面、カロリーの高い作品の完成度を見せつけられると、どちらが正解なのか、わからなくなってくる。まぁ、そんな制作過程は読者には、どうでもいいのかな。面白ければ、それでいいのだから。

少女部門は『ゆびさきと恋々』と『きみの横顔を見ていた』二つの作品の争いになった。男性選考委員のほとんどが『ゆびさき~』を推した反面、女性選考委員お二方が『きみの横顔~』を強く推した。今の時代、男女がどうのと言うべきではないのかもしれないが『少女部門』と謳ってる手前、女性お二方の票は重い。結果『きみの横顔~』が受賞する運びとなった。自称「乙女心」を持つ幸村先生も1位に挙げていたから、選考結果に間違いはなかったのだと思う。個人的には『ホタルの嫁入り』が荒削りながら、好きである。キャラの性格が安定しなかったり、行き当たりばったりの展開とか、元気に逃げ回ってたかと思えば、急に都合よく発動する主人公の「心臓が悪い」設定とか、緻密で繊細な作品が多い中「勢い」で描いてるこの作品には「漫画って、こんなんでいいんだよ!」って言われてるみたいで、謎の好感をもった。昔の漫画って、わりとこうだったよなぁ。考え過ぎちゃってネームで詰まって、いつまでも描かない全国の新人漫画家に「とりあえず描き始めちゃえば、何とかなるんだよ!」と背中押してくれるはず。

さて、問題の総合部門。誰だよ『ちいかわ』交ぜたの……。どうやって『ちいかわ』と『ダーウィン事変』比べればいいのか教えて欲しい。人類はそんな「物差し」持ち合わせてないのです。良いとか悪いとかじゃなく「スパゲティ」と「自転車」比べるようなもんだと困惑する先生もいました。さらに、これは「漫画」という枠でいいのか、「哲学」なのではないか、など混乱する一幕もありました。なので、申し訳ないのですが『ちいかわ』は殿堂入りということで、他5作品で選考することになりました。結果『メダリスト』が選ばれましたが、どの作品が獲ってもおかしくないハイレベルで次元の違う(色んな意味で)争いでした。個人的には『ダーウィン事変』が選ばれて欲しかったです。他の作品がドラマやアニメやグッズになって報われてる中、作中で兄弟が登場し、僕の中で「シーズン2」が始まってるのに、ネットフリックスでドラマ化はまだなのかと催促する意味も込めて。あと『望郷太郎』は、本当に読みやすいなと感心しました。昨今イラストのようなカロリー高い絵の漫画が多い中、同じ「濃い絵」なのにゴチャゴチャせず見やすく、状況もわかりやすい。「漫画は、漫画なんだよ」と漫画の本質を教えられた気がしました。漫画が上手いって、こういうのを言うんだろうなって。

毎年のことなのですが、審査のため短時間で大量の漫画を読んだため、脳が疲れきってしまいました。
ストレス解消する必要があると思います。『ちいかわ』でも読んで。

はやみねかおる

受賞者の皆様、おめでとうございます。

【少年部門】斬新さで『葬送のフリーレン』を推しました。RPGは苦手なのですが、関係なく最後まで読めました。魔法は何でもありという考えが間違ってたことを知りました。バトル系3作品中では、『黄泉のツガイ』が設定やストーリー展開で頭一つ抜きん出てるように感じました。

【少女部門】4作品全ておもしろく、どれが受賞してもおかしくないと思いました。最終的に、昨年より良くなってると思った『ゆびさきと恋々』と、少女漫画とは思えない斬新さで『ホタルの嫁入り』を上位に推しました。

【総合部門】フィギュアスケートに詳しくなくても、『メダリスト』の迫力とワクワク感には圧倒されました。アニメ化で、漫画のスピード感や熱量が再現できるかどうか、不安と共に楽しみです。『推しの子』は、ストーリーに斬新さを感じました。個人的に、『ちいかわ』の評価に困りました。斬新さでは一番なのですが……。

三田紀房

第48回講談社漫画賞各部門受賞の皆様には心よりお祝い申し上げます。今年は複数年連続してエントリーされた作品が多く「今年こそ」の思いが強かったため例年以上に緊張感に満ちた選考会でした。

少年部門の『葬送のフリーレン』がそのひとつで毎年あと一歩でしたが、優れたバランス、読後感の良さが高く評価され見事栄冠に輝きました。毎年少年部門はハイレベルな作品が多く、特に作画技術の高さには驚かされました。

少女部門の『きみの横顔を見ていた』はキャラクターの関係性の構成が絶妙で読みやすく心地良かった。『ゆびさきと恋々』を今年も1位に推しましたが及ばず残念です。毎年のことながら「受賞は運と巡り合わせ」であると深く感じました。

総合部門の『メダリスト』は取材密度の濃さを圧倒的熱量で描き切っているところが素晴らしい。『ダーウィン事変』は世界で戦える作品として受賞して欲しかった。来年こそ期待しています。

幸村 誠

少年部門は『葬送のフリーレン』が満を持しての受賞でした。『ガチアクタ』、『黄泉のツガイ』、『戦車椅子』もそうですが、近年の少年部門は「異能力バトル」に偏る傾向が見られます。それ以外の良作もたくさん読みたいな、という個人的感想を持ちました。

少女部門『きみの横顔を見ていた』は、私の目から見ておよそ弱点の見当たらない、既刊3巻にして非常に完成度の高い作品で驚きました。この先まだ面白くなるという予感も感じさせます。

総合部門は『メダリスト』と『ダーウィン事変』が僅差の高評価でした。どちらが受賞でもおかしくなかったと思います。私は『望郷太郎』と『ながたんと青と』を強く推しました。両作品とも、読み始めたら食事も睡眠も忘れて一気読みするほど面白かったです。『ちいかわ』については、私は好きですが、独特なスタイルのため他の総合部門作品との比較が難しく、そのような作品のために賞を新設してはどうかという意見もありました。

受賞のことば

少年部門

葬送のフリーレン

原作/山田鐘人 作画/アベツカサ 【週刊少年サンデー/所載】

『葬送のフリーレン』書影

山田鐘人(原作)

この度は、講談社漫画賞という歴史ある賞に選出いただきありがとうございます。他社の作品ながらこうして受賞できたことに驚いております。選考いただいた選考委員の先生方、ありがとうございます。受賞はひとえに関わってくださっている皆様のおかげです。いつも雑誌や単行本で読んでいただいている読者の皆様。1コマ1コマに素晴らしい絵を入れていただいているアベツカサ先生。編集部の皆様。販売・宣伝・流通に携わってくださる皆様。原作をとても丁寧に映像化してくださったアニメ関係者の皆様に心より感謝を申しあげます。

また、この作品を推薦してくださった講談社の皆様、まことにありがとうございます。

これからもフリーレンの旅路は続きますが、皆様とともに歩んでいけたらと思います。ありがとうございました。

アベツカサ(作画)

この度は、栄えある賞に選んでいただき、まことにありがとうございます。選考委員のみなさま、選出いただきましてありがとうございます。

1話1話、1P1P、1コマ1コマ、山田先生のネームの面白さが読者の方々に伝わるように描いてきたつもりなので、多くの読者のみなさまに支えられて、こうして受賞させていただき、感無量です。

また、少年サンデーでの連載とコミックス制作を支えてくださってる関係各所のみなさま、この作品を推してくださった講談社のみなさまに心より御礼申しあげます。山田先生と、みなさまとで一緒に頂けた賞だと思っております。

今後も、講談社漫画賞という名誉ある賞に恥じない漫画づくりを頑張っていきたいと思います。

■試し読みをする(小学館公式サイトへ)
https://sc-portal.tameshiyo.me/9784098501809

■詳細をみる(小学館公式サイトへ)
https://shogakukan-comic.jp/book?isbn=9784098501809

少女部門

きみの横顔を見ていた

著:いちのへ瑠美 【別冊フレンド/所載】

  • 電子あり
『きみの横顔を見ていた』書影

いちのへ瑠美

最終候補に残して下さった時点から、とても嬉しい気持ちでいっぱいでした。

1話目からずっと、ただただ今の自分が読みたいと思っている少女漫画を描きたくて信じたくて、どう描けばそれが人に届くのか常に悩みながら連載を続けてきました。何か一つ報われたような気持ちもあります。

読者の皆さま、担当編集さま、作画に協力してくださっている皆さま、取材先の関係者の皆さま、出版関係者の皆さま、尊敬する作家の方々の存在、言葉、作品。この連載のために時間を使ってくださっているすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。

そして、『きみ横』の中で生きてくれている登場人物たち。何があっても、みんながみんならしく存在してくれていることが、大きな励みと支えになっているように思います。
これからも、力の及ぶ限りあらゆる可能性を考えながら、最後まで描き切りたいです。

この度はとても貴重な経験をさせて頂きました。本当にありがとうございました。

総合部門

メダリスト

著:つるまいかだ 【アフタヌーン/所載】

  • 電子あり
『メダリスト』書影

つるまいかだ

ずっと握っていたい小さな手を放して送り出す。傷ついて戻ってきた時にはそれを癒やす覚悟と共に。そのあたたかさに背中を押されて冷たい世界に飛び込む挑戦者がいる。メダルという輝きを目指して。それがコーチと選手、氷の上のフィギュアスケートの世界です。

この漫画を力強く送り出してくれるアフタヌーン編集部、担当編集様、アシスタント様。

『メダリスト』を好きだと言ってくれる読者の皆様。もっと多くの人に届くと信じてくれる営業部の皆様。情熱溢れるアニメ制作関係者の皆様。皆様の勇気と信頼と熱意、そしてフィギュアスケートという競技の美しさが、何度もこの漫画の背中を押してくれました。

だからこそ、この賞がどうしても欲しかった。背中を押してくださった皆様に、受賞という形でお礼を言える事に大きな喜びを感じています。何度も願っていたので、それが叶ったことが本当に嬉しいです。

お借りした題材に見合う物語になるように、この漫画を愛してくださる皆様のあたたかさを背中で感じながら、これからも精一杯表現していきたいです。

第47回講談社漫画賞候補作一覧(作品名五十音順)

少年部門

『薫る花は凛と咲く』三香見サカ/『ガチアクタ』裏那圭 graffiti design:晏童秀吉/『葬送のフリーレン』原作:山田鐘人 作画:アベツカサ/『戦車椅子-TANK CHAIR-』やしろ学/『黄泉のツガイ』荒川弘

少女部門

『うるわしの宵の月』やまもり三香/『きみの横顔を見ていた』いちのへ瑠美/『ホタルの嫁入り』橘オレコ/『ゆびさきと恋々』森下suu

総合部門

『【推しの子】』赤坂アカ×横槍メンゴ/『ダーウィン事変』うめざわしゅん/『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』ナガノ/『ながたんと青と ―いちかの料理帖―』磯谷友紀/『望郷太郎』山田芳裕/『メダリスト』つるまいかだ

〈選考委員・五十音順〉 安藤なつみ/海野つなみ/小川悦司/久米田康治/はやみねかおる/三田紀房/幸村誠

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