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2022.07.18

レビュー

【「はたらく細胞」スピンオフ】薬物乱用!重大事故!刃傷沙汰! そのとき体内で起こる異常事態とは!?

シリーズ累計930万部突破!!  『はたらく細胞』は、一体どこまでスピンオフという名の増殖をしていくのかと思って読み始めたら、これがまた面白い!!
「イリーガル(=違法な、非合法な)」というタイトル通り、細菌やウイルスの侵入、違法薬物の摂取や骨折時に、体内ではどんなことが起こっているのかが描かれていて益々パワーアップしています。

まだ生まれて数時間、でき立てホヤホヤの赤血球が、酸素を配達に行ったところは骨髄(こつずい)。
“骨髄のオヤジ”に対して「俺たちを生んでくれたオヤジ」という白血球のセリフに、一瞬、ん? となりましたが、そうだった、白血球は骨髄で作られるんだった! と忘れかけていた知識が呼び起こされました。

今回、『はたらく細胞イリーガル』が面白いと思ったのは、こうした命知らずでアウトローな白血球たちを仁侠の世界で見せてくれるから。 

この異物が新型コロナウイルスなだけに、「喉の所で見つけた」「鼻の奥でコソコソしてやがった」というセリフも笑えます。

お話は、体内の異変に気づいた白血球のアニキと赤血球が、身体(からだ)の様子を調べに行くのですが、アニキのセリフが超カッコイイ!!
「俺はこの体を守らなきゃならねえ。この体が遊びで吹っ飛んでんのか、それともマジでヤベェのか」

実はこの身体の持ち主は、3日3晩の不眠、食事もとらず長時間の性行為、そして眠りから覚めると暴飲暴食、つまり覚醒剤を使用していたのです。
それを止めなかったのは誰のせいか!! という追求が、脳内で行われるのも面白い!!

例えば、拾った財布を交番に届けるのか、それともネコハバするのか。
そんなせめぎ合いは、心の中で起こるものだと思っていましたが、本当はこうした脳内の司令だったんですよね。

耳の中でも異変を感じた白血球のアニキと赤血球は、その直後、大きな揺れとともに雑菌と雑ウイルスが侵入してくる「カチコミ」が始まったことに気付きます。
どうやら身体の持ち主が、とんでもないことをしでかしてしまったようで、折れた骨が体外に出る重度の骨折をしたのです。

白血球たちが死に物狂いで立ち向かっていると、大物感を漂わせたセレブが現れます。それが、リンパ球の一種である“ビッグマム”こと、ヘルパーT細胞。

ヘルパーT細胞、キラーT細胞って聞いたことある気がするけれど何だったっけ? と思っていたら、こんな便利ページがありました。

ヘルパーT細胞の指示で動くキラーT細胞は、ウイルスだけでなく感染した細胞ごと破壊する恐ろしい殺し屋。
とはいえ、同じ白血球の仲間なのですが……、



彼ら以外にも、色々なところから様々な助っ人が現れ、改めて人間の身体って凄いと思いました。
特にイリーガルな緊急時には、何重にもバックアップ体制が整えられていて、とにかく命を守るということを最優先にやっているのです。

実は先日、打ち合わせ相手から新型コロナに感染したという連絡を受け、私は濃厚接触者となってしまいましたが、感染はしていませんでした。
きっと、こんなふうに細胞くん達が頑張ってはたらいてくれたのだろうと思うと、自分の身体が愛おしくなります。そして、彼らが困らないように身体を労ってあげなきゃ、という気持ちにもなりました。

「シリーズ史上、最も仁義なきスピンオフ」と言われている『はたらく細胞イリーガル』。
ディープで、アダルトで、アウトローな世界をぜひ楽しんでください。

はたらく細胞イリーガル(1)

原作 : 橋本 カヱ
著 : 次 恒一
監 : 清水 茜

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レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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