何をしても“あざとい”と言われてしまう子
「あざとい」を褒(ほ)め言葉として受け取るには、きっと並々ならぬガッツがいる。そもそも余計なお世話だよって思うのだけど、言われると「すみませんね」みたいな気持ちになるし、なんで私が謝らなきゃいけないわけ?って自分が情けなくなる。『あざ恋』のヒロイン・真純(ますみ)も「あざとい」と戦う女の子です。
憧れの“湊(みなと)先輩”がバスケで3ポイントシュートを決めた瞬間、他の子が堂々と「キャー」って叫ぶなか、真純は体育館の隅っこで目立たないように観戦して、でもやっぱりガマンできなくて「やぁっ」って両手を上げて叫んでる。かわいい。
真純はなんとなく人目を引く女の子なんです。目立たないようにしてもなぜか目立ってしまう。
かわいい。そして……、
やることなすことすべて「あざとい」と言われちゃう。ここまで来たらむしろ才能じゃない? でも学校でこんなに言われちゃったら辛(つら)いだろうな。そんな彼女が恋をしたら……?
押し入れにびっしり書かれた「禁止項目」の数々。あざといと言われないために真純が定めたルールは150以上。でも湊先輩はかっこいい。目が合ったら手くらい振りたいし、そこは譲れない。そう、譲らなくていいんですよ、あざとかろうがなんだろうが。でもここから先どうすれば?
まーたやっちゃったよ
真純は海と山に囲まれた街で暮らす高校2年生。昔から感情表現が豊かな子です。
こうやって「大好き! 天才!」って素直に言ってくれたら、お料理を作ったお母さん(割烹着姿がかわいい)だってすごく嬉しいし、相手が嬉しそうにしていたら、じゃあもっと嬉しくなってもらいたいなって真純は思うんです。この無限ループが今の真純を形作りました。
自分に「やっちゃいけないこと」を目いっぱい科しているのも、相手をいやな気持ちにさせたくないから。泣ける。
この「いやな気持ちにさせたくない」が過剰に働いてしまって、真純の恋は停滞中。
湊先輩のことが大好きなのに、「あざとい」と言われたくなくて近寄れない。うっかり禁止事項に触れそうになっては慌(あわ)てて逃げ出す日々。仲良くなるなんて夢のまた夢……と思ったら、救世主が現れます。
1年生の“門司(もじ)君”。彼もこの学校で「あざとい」と言われ続けている人物です。でも真純と違って校内の人気者。この落差よ! 自信とコミュ力が服を着て歩いている。
門司君は真純ともすぐに打ち解けます。真純が人知れず泣いているときも隣で冷静に話を聞いてくれるんです。たとえば、湊先輩が口にした「ある言葉」が真純をグサグサ刺した放課後。
湊先輩まで真純をあざと女子って思ってる? でも誤解かも? ドツボにはまりそうな真純を門司君は何度も助けます。
真純にとって湊先輩に近づくことは「あざとい」の嵐に突っ込むようなもの。でも門司君と出会った日を皮切りに、真純は少しずつ禁止事項を忘れ、ありのまま振る舞えるように。
真純だって湊先輩と一緒にバスに乗って帰りたい。近くにいたい! いいぞ!
でもこんな瞬間は長続きしません。真純はすぐに「あざとい」を恐れる女の子に逆戻り。「まーたやっちゃったよ」って頭を抱えます。でも……?
門司君のポジティブなフィードバック! 真純の行動からあざとさじゃなくて素直さを見つけてくれてありがとう。ああ、とことんいいやつだなあ……。
門司君の優しさは真純の背中を押します。
学食でみんなが見てるなか、湊先輩の隣に座って、おそろいでカレーを食べる。ついにここまできた! さあ湊先輩はなんて言う?
この真純の行動は、実は門司君にとっても驚き。学校中から「あざとい」なんて後ろ指指されているのに、湊先輩に近づけるなんてすごい。やがて門司君は本格的に真純を応援することに。恋の助っ人を買って出るんです。
「迷惑じゃない?」と遠慮する真純と、あざとい界のプリンス・門司君のやりとりが楽しい。私も真純の湊先輩への恋心を応援していますが、門司君の「本音」も気になるところ。いろんな嵐が待っていそうです。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。