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2022.05.28

レビュー

イケメン幼なじみ4人に囲まれて毎日ドキドキ!! 胸きゅん青春ストーリー

2020年と2030年のわたしたち

1巻、2巻……と読み進めるにしたがって期待とまぶしさで胸がいっぱいになる。『どうせ、恋してしまうんだ。』は、2020年に17歳だった1人の女の子と4人の男の子たちの物語。そう、2020年なんです。すべての人がしっちゃかめっちゃかになった2020年。



花火大会も、修学旅行も、大切な試合も中止。とある海沿いの街で暮らす彼らは、どんな青春を送ったの?



楽しそう。5人は幼なじみで、いつも一緒にいて、一緒に大きくなりました。



制服の着こなしがみんな違ってて楽しい。それぞれの個性がよくわかります。もはや兄弟のような5人はずっとこのまま? いいえ。



幼い頃は知らなかった感情や表情が少しずつ姿を現します。成長は止まらないし、青春だって止まらない。まぶしい。

そう、17歳の人生がそこに広がっているのだから、その人たちの放つキラキラが損なわれることなんて決してない。そう信じて読んでしまう作品です。



いい。本当にムダなことが何もない2020年の夏が待っていました。ちなみに本作のキラキラを構成する成分は恋だけじゃありません。



ヒロインの水帆(みずほ)の夢は漫画家。幼なじみたちに手伝ってもらいながら(?)新人賞に向けて必死で描いてます。でね、将来どうなるかというと……!



もしかして……夢が叶ったの!? 2030年の水帆は27歳。「あーああ」って空を見上げる日もあるけれど、背筋をしゃんと伸ばして街を歩く大人の女性なんです。「わたしの将来どうなっちゃうんだろう」って不安でしょうがなかった少女の頃に読んだら、すごく勇気づけられただろうな。大人になった今、この2030年パートを読むと「ね、みんな素敵な大人になれるから、楽しいことが待っているから、安心して!」と一緒に応援したくなる。

本作は2030年のまなざしをときどき差し込むことで2020年の彩度をグッと上げて、その真っただ中にいるときは気がつかないかもしれない青春の姿を見せてくれます。キラキラ光る水をすくい上げるような少女まんが。1巻から4巻までずーっと淡くてまぶしい!

イケメン幼なじみ4人と、わたし

水帆と幼なじみたちが暮らす住宅地は「恋ヶ浜ハイランド」というかわいい名前の場所で、幼なじみの4人はイケメンすぎるあまり学校で「恋ヶ浜ハイランズ」などと呼ばれています。最高。

この恋ヶ浜ハイランズたちは、それぞれの方法で、水帆をずーっと大切に大切にしてきました。



まずは彼。クールな秀才! 参考書を肌身離さず持ち歩くガリ勉の深(しん)は、水帆の身に起きたある出来事をきっかけに医者を志します。学校では水帆にそっけない態度を見せるけれど、家では勉強を教えてくれるシャイな男。ちなみに生徒会長も務めています。パーフェクト。

そして、インフルエンサーでカリスマモデルの藍(あいる)。水帆のよき相談相手でオシャレの指南役。前髪もかわいく切ってくれます。

文化の香り漂うイケメンもいます。日本文学も海外文学もたしなむザ・文学少年の周吾(しゅうご)は、ちょっと毒舌だけど水帆の気持ちを鋭くお見通し。

そして、本作の物語を大きくかき乱すのが……、



水泳部の輝月(きづき)。幼なじみのなかで子犬のようなポジションにいる輝月は、水帆にとって弟のようなかわいい存在。そのはずだったのですが。

水帆が17歳になった誕生日の夜、輝月は水帆にキスをして「水帆の彼氏になれますように」と言うのです。子犬ポジションじゃないの!? いえ、このアスリートは、子犬らしいド直球さで水帆に突進していくんです。

いまの関係が壊れてしまうのがこわい

子犬のような輝月の恋の猛攻はずっと続きます。



どう接していいかわからず困惑する水帆をよそにこの態度! かわいい。当然この2人の空気は他の恋ヶ浜ハイランズにも伝わるわけです。こうして、隠しごともできないほどの近さで生きてきたはずの彼らに、秘密の瞬間が生まれます。



深だって水帆が好き……? 好きと言ってしまったらどうなる?



周吾も藍も「ほんとうの自分の気持ち」を胸に秘めています。どうして素直に言わないの? なぜなら、言葉にしてしまうと、もう友だちのままではいられなくなるから。失うのがこわいんです。それは水帆も同じ。



真夏の打ち上げ花火、水泳大会、誕生日会、放課後の教室、アイスクリーム。他愛もないけれど優しい日常の上に重なるのは、今にも動き出しそうな恋のジリジリ。しかもこれが5人分!



「なんで?」の答えを、私も水帆の口から聞きたいのに、聞くのがこわいよ。

ところで、こんな甘酸っぱい2020年の夏を共にすごす水帆たちは、どんな青春ののち、何を得て何を失って2030年を迎えているのでしょう。ときどきカットインされる2030年の大人な会話の端々から恋ヶ浜ハイランズの気配を感じてはドキドキしています。一瞬も見逃したくない。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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