夢とリアルがつまってる
クリームが限界までつまった丸いクリームパンをイメージしてもらうと『フォロワーが彼女になりました』の説明がしやすい。男の子のド甘い夢でいっぱい。
たとえば、21時過ぎのバイト帰り。ラブホテルの前を、人生で初めてできた彼女と2人で通りかかり、ちょっとドキドキしてたら彼女の方からこんなことを急に言ってくるんです。
夢か。もうパンパンだ。どうしましょう。
でも「ドリームすぎるでしょー」とも思えないんですよね。こういうミラクルって、令和3年の今ならあるんじゃないかなって気がしてくる。それに夢ばっかりでもないラブコメです。
主人公の“高野翔平”と“笹倉寧々”は出会ってすぐ付き合うことになりました。それもまたドリーム的展開でしょって思うかもしれませんが、あちこち生々しいんです。
生まれて初めてラブホに足を踏み入れた翔平は「知ってる人いたらどうしよう!?」とドキドキするけれど、すかさず(知り合いいないけど)と自分で補足します。そう、知り合いいないんですよ、彼。じゃあどうして彼女ができたの? 2人の馴れ初めをご紹介します。
SNS上ではフォロワー1万人、でも友達はいない
翔平は引きこもり気味の大学1年生。パンデミックのせいで大学は入学早々リモート授業で、彼女どころか知り合いもできず、1人暮らしの部屋で日夜エナジードリンクを飲んではゲーム三昧の生活を送っています。授業もサボりがちだし、バイトを始めるタイミングもなくしてしまいました。
ある日、翔平の部屋のドアをドンドン叩く人物が現れます。知り合いいないのに!
ドアの向こうにいたのは可愛い女の子。しかも巨乳。寧々ちゃんといいます。全ページきゅるんきゅるんに可愛い。
初対面のはずなのに翔平の身を案じまくって慌てている寧々ですが、ここで翔平はピンとくるのです。
寧々は翔平のフォロワー。翔平には高校生の頃から続けているSNSアカウントがあって、ネタ系の投稿がときどきバズった結果、フォロワーが1万人を超えています。寧々はその中の1人。
翔平のちょっと病み気味の投稿を見て家まで来た……というわけです。
いい話だね!ってなると思いますか? ならないです。まず、翔平はSNSで顔出ししているとはいえ住所なんて開示してないし、寧々はどうやって翔平の自宅まで来たの?
原始的かつダイレクトな方法で自宅を特定していました。これ結構リアリティあるんですよね。実際にSNSで有名になったとある人によると、フォロワーが5万人を超えたあたりから「今日都内のXXでアイツを見かけた」と毎日SNS上で言われるようになったそうです。帯には「深夜の扉ドン告白女子は、SNSおっかけストーカー!!?」とあります。
そして畳み掛けるようにリアルがもう1つやってきます。
寧々も翔平と同じ境遇にいました。自粛生活で唯一自分を笑わせてくれたメガ鈍器こと翔平が「彼女もいないし死にたい」とダウナーなことを言っていたから、「だったら私を彼女にして」と突撃したというわけ。
で、「じゃあ付き合っちゃうか!」とも簡単には進まないんですよ。
自分はこんな可愛い子と付き合えるような人間じゃない、自信なんてない。そんな弱々な翔平の心に風穴を開けてくれるのは、やっぱりSNSと寧々なんですよね。
翔平のダメなところはぜんぶSNSで予習済み! それでも翔平に惹かれています、と。
寧々ほんと可愛いな。ここでホッとする男の子は多いんじゃないかなと思います。
こうして手探りのまま付き合い始めてみるものの、
恋愛に対する価値観は小学生でストップしてるし、大学もリモートだし誰に相談していいかわかんないし。リアル。本当に手探り。
寧々の部屋にあったマグカップで「もしや元カレが使っていたものか……?」と胸がざわついたり、
連絡手段はSNSだけだし待ち合わせに来なくてドキドキしたり。翔平の行動全部に「わかる」って思っちゃう。ピュアでかわいい。
「バイト終わりに彼女の声聴けるなんて世の中でバイトしてる彼氏たち幸せすぎんだろ」ってSNSのタイムラインで今にも流れてきそうなテンポのいいセリフだな。さすが万バズ狙い。応援してます。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。