戦国時代にタイムスリップする話は今までにも色々とありましたが、戦国からやって来た人が、再び戦国に舞い戻るという設定にワクワクしました。
しかも、美形の戦国武将と現代のイケメンたちに守られ、まさにお姫様気分を味わうことができるのですから。
人気シリーズ『遙かなる時空(とき)の中で』7作目の主人公は、薙刀(なぎなた)部に所属する高校2年生、天野七緒。
七緒は、怨霊退治を生業にしている神社の娘なので「ゴーストバスター天野」と呼ばれてはいるものの霊感はゼロ。
通り魔が出るという噂のトンネルに後輩たちと行くと、いきなり鎧兜の怨霊が現れ、応戦するうち時空を超え、違う世界に行ってしまいます。
そこで助けてくれたのが、日本一(ひのもといち)の兵(つわもの)と呼ばれた真田幸村。
幸村の馬に乗り、近江国(おうみのくに)浅井 小谷山(あざい おだにやま)を眺めた七緒は、異世界にいる怖さより懐かしさを感じ、涙ぐみます。
その後、怨霊封じができる兄、五月(さつき)のお陰で現世に戻って来ることができた七緒ですが、今度は実家の神社の周りを怨霊たちに囲まれてしまいます。
そこに突然現れたのが、軍師黒田官兵衛の息子で甲斐守(かいのかみ)の黒田長政と、お側に仕える若武者・宮本武蔵。
武将の怨霊を封じるために七緒が取り出したのは、織田信長の家紋が印された懐剣でした。
一瞬で怨霊が消えたことから、七緒は「龍神の神子(みこ)」であり、本能寺が炎上した際、行方知れずとなった織田信長の末姫に違いないと言う長政。
ここに真田幸村、出雲の阿国、七緒の兄の五月(さつき)、霊感を持つ幼馴染みの佐々木大和(やまと)も加わり、豪華キャスト結集!!という感じです。
七緒の家でくつろぐ武将たちや、カステラを食べて無邪気に喜ぶ武蔵も笑えます。
神子が不在で悪霊がはびこる世を救うため、「龍神の神子をお迎えに来ました」という幸村に対し五月は、「妹は龍神の神子ではありません」と言い張ります。
戦国武将たちもカッコイイのですが、私はこの五月がお気に入りです。
霊感が強すぎるため、霊障に遭って受験会場に辿り着けず浪人という、ちょっぴり残念なキャラですが、すべてを知り尽くした上で、妹を守ろうとします。
しかし、7歳より前の記憶も写真もなく、幾度も信長の夢を見る七緒は、自ら異世界に行くことを決意します。自分も両親や兄のように悪霊を払い、苦しんでいる人々を救いたいと思ったからです。
ところが突然、剣術の達人・柳生宗矩(やぎゅうむねのり)が現れ、その隙に黒田長政に連れ去られる七緒。
戦国時代のお姫様は政治に利用されるのが当たり前で、信長の娘であればその価値は計り知れません。どうやら悪霊退治だけでなく、武将たちには武将たちの思惑がありそうなのです。
異世界・戦国に連れ去られた七緒は、今度は直江兼続(なおえかねつぐ)と出会います。兼続と言えば、上杉家の重臣で愛の文字を形どった兜が有名な、私も好きな武将です。
遅れて幸村や五月たちも、なぜか同じ場所に現れます。
いよいよ、七緒と七緒を取り巻く8人が動き出しますが、誰と誰が味方なのか、或いは敵なのかがまだよく分かりません。
この先、龍神に仕える“星の一族”や、神子を守る神器“龍の宝玉(ぎょく)”も登場し、ますます複雑に話が絡み合っていきそうです。
ゲーム版では、どの武将を選んで進むかにより内容も変わるようですが、コミック版ではどうなるのか? この続きが楽しみです。
そしてもう1つ、衣装だけでなく、天井や柱の木目や背景など、隅々まで丁寧に描かれた絵はさすがとしか言いようがなく、どれだけ莫大な時間を費やして描かれたのだろうとため息が出ます。
私が言うまでもなく、ファンの方は既にお分かりのことだとは思いますが、ぜひそうしたところも楽しんで読み進めて欲しいと思いました。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp