カナヅチ女子が孤高のイケメン水泳同好会に入部?
プールの底や側面をあの水色にした人はホントえらいなと思う。どこに行ってもあの水色が待っている。さわやかで涼しげなあの色を見ると何歳になってもワクワクする。
『微炭酸なぼくら』は、とある高校の“水泳同好会”を舞台にしたラブストーリーだ。さわやか!
美少年4人のみで構成された水泳同好会。プールの水色と青空と水しぶきが大変よく似合う。そんなイケメン同好会を女の子が放っておくはずがないのだけど、なぜか誰一人として入部を許されない。
が、ある日、ヒロイン"みずき"だけは入部してしまう。そこからはイケメン4人に囲まれ日々プールで泳ぐ生活だ。しかも放課後にスポーツショップに連れてってくれて水着を一緒に選んでくれたり。
手厚い! 「やる気がおきるように水着を選ぼう」なんて優しすぎるし、イケメン4人が見立ててくれるのも最高。
なぜそんなドリーム満載の展開になったのか。みずきが、ものすごい美少女だったから? そうではない。どんな可愛い子だろうが入部できなかった孤高の水泳同好会だ。外見は関係ない。では、めちゃくちゃ泳げる超優秀なスイマーだったから? これも違う。
違うどころか、彼女は凄まじいカナヅチ。しかもぼっちキャラ。なぜ入ってしまった! やっていけるのか!?
本当は泳ぎたい
“みずき”は3ヵ月前に東京の高校へ転校してきた高校2年生。
わかるよ。テレビで見る東京と、実際に歩く東京、ぜんぜん違う。東京に物怖じするみずきには怖いものがもう1つある。「水」だ。体育の水泳は必ず見学して、絶対に水に近寄らないし、泳げない。小学生の頃、お父さんが海で溺れて亡くなってしまったから。
なのに放課後のプールで運悪く溺れそうになる。
水泳同好会の“塩谷くん”がみずきを助けてくれる。この事件がきっかけで「カナヅチなら泳ぎ方教えてやろうか?」と塩谷くんは申し出るも、ぼっちキャラかつ水に抵抗があるみずきは固辞。校内で圧倒的人気を誇る水泳同好会だろうがなんだろうが、泳ぎたくないのだ。
でも本当は……?
そう、本当は泳ぎたい。思わず叫んだ本音を塩谷くんは聞き逃さず、みずきをプールへ連れ出し、ちゃんと水着も着せて、プールサイドに立たせ、こう呼びかける。
かっこいい……! このあとのプールダイブのシーンはホント夢があって綺麗。が、そこはゴールではなく、むしろここから
忙しくなる。
たった1ヵ月で25m泳げるようにすると宣言する塩谷くん。ハードル高い。『微炭酸なぼくら』はプールサイドで美少年たちと戯れる楽しい少女マンガかと思いきや、とことんスポーツをやり込むマンガでもある。
塩谷くん並びに水泳部の面々があの手この手でみずきをサポートすることで、水に爪先をつけることすら震えるほど怖い子が、本当に泳げるようになる……?
なる。これは泳げるようになる。こんな部活動(水泳部ではなく水泳同好会だけども)、いいなあ。
塩谷くんは、自分が立ち上げた水泳同好会に参加する条件を「水泳の才能があるかどうか」じゃなく「本当に泳ぎたいかどうか」としている。だから豪快なカナヅチだったみずきの「泳ぎたい」を受け止め、全力でサポートする。
塩谷くんの不器用とさわやかが交互に表れる顔がいい。みずきは雨だろうが晴れだろうがあらゆる場所でトレーニングを重ねる。本気だ。部活って、べつに速さや順位だけが大切なわけじゃないんだよなあ。
ついつい水泳部の皆さんのきれいな胸筋や肩幅に目が行きがちだけど、ページをめくればめくるほど猛特訓するみずきと同じように息が上がってくるのが清々しくて楽しい。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。