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2020.11.21

レビュー

東京で目撃されるノラ動物はこんなふうに生きてる! 心震える路地裏物語

東京の動物

上京してつくづく思います、「東京全土がコンクリートジャングルってわけじゃなく、ちょこちょこと木や草花があるし、生き物も多いな」と。ハクビシンを見かけたり、毎年同じカエル(虫を獲るのがめちゃくちゃヘタクソなので同一カエルだとわかる)が冬眠から目覚めて庭先でぼーっとしていたり。そして野良猫もたくさんいます。目の前をシャッと走り去る長ーいしっぽを「ああ、お腹いっぱい食べているだろうか」と祈るような気持ちで見送っては、「毎日なにしてんのかな」と想像することも。



こういうことをみんなでおしゃべりしている気がする。みんなかわいい。

『東京ノラ』は「なかよし」で連載されているマンガです。東京の路地裏を舞台に、野良猫やカラスたちがひっそりと暮らすさまを覗き見ることができます。



動物たちの顔がいい感じにかわいい。会話のキレやテンポも優しい。それにしても、そう、"まるまると太った野良猫"には、あまり出会ったことがないよなあ。



ご飯探しは毎日大変だろうな。だから毛艶の良い野良猫を見かけるとほっとする。でも「野良猫ってかわいそう」なマンガではないんです。

きっと、東京の野良猫のなかには、夕焼けに空に包まれたスカイツリーを知っている子もいるはず。



家猫の“ハナ”ちゃんと路地裏暮らしの野良猫の“ノラ”の日常にはそれぞれ「良いところと悪いところ」があります。実際、元・野良猫と暮らす友人は「ずっと家の中にいるって概念がこの子にはないんだよね。閉じ込めるとパニックを起こす」と言って、ひどく心配しつつも外出させているそうです。

ちいさな体で頑張る都会の野良猫には、どんな冒険があるんでしょう?



千鳥ヶ淵のど真ん中でピンチになるかも。ありうる。

犬を飼っている人もブンブンうなづく

都会の野良猫あるあるをベースにほっこりコメディを描くこのマンガには、他の動物も登場します。

犬派のみなさん、安心してください。犬もいますよ。



犬と暮らす人なら絶対わかるはず。お調子者な性格をした犬は、スキあらば「あそぼうよ!」とみんなを誘う。(そして怒られる)

ハクビシン、アライグマ、カラス。みんな「都会の害獣」なんて呼ばれているけど、みんなそれぞれ事情がありますし、なにより生きてます。



電柱や塀に並ぶペットボトルの謎を調べるノラたち。(つまり、あのペットボトル群は、有効じゃない場合も多いのかもしれません)

ひょんなことから動物園に行ったら……?



ハシビロコウ、確かに顔が怖いね。それにしても、なぜノラはトラを見たいんでしょう? 理由があります。それはノラがまだ子猫だった頃の話。



ノラのお母さんは元は飼い猫だったんです。どうして野良猫になったのでしょう、そして河川敷の橋の下でノラと暮らしていたはずのお母さんは今……? 切ない。

私は人間なのでどうしても「ああ、猫もカラスも幸せであってくれ。長生きをしておくれ」と思いがちなのですが、本作に出てくる動物のみなさんはたくましく生きています。そして、現実では喋ったり二足歩行をすることはないはずですが、このたくましさやカラッとした悲喜こもごもは、本当かもなあという気がします。

最後に私がすごく好きだったシーンを紹介します。「人間の食いものはうまそうな匂いをさせやがる」とノラが眺めていたおでん屋さんのシーン、ちゃんと続きがあるんです。



野良猫に餌付けをしてしまうと、人間にとって近所迷惑になることもあります。だから路上で「ご飯をあげる」って難しいこと。悩んだすえに、うっかりおでんを落としてしまったおじさんに良いことがいっぱいありますように。(そして「少し食べさせてあげなよ」と言った酔っぱらいのサラリーマンにも)

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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