イケメン揃いのボーイズグループを見てまず考えるのは、「誰を推しに選ぼう」ではないでしょうか?
そして、その次に考えるのが、「誰と誰を組み合わせたらお似合いか」。
『Dr.系男子の恋愛カルテ』は、いきなり見開きに12人のイケメンが勢揃いしています。
彼らは全員、池綿(いけめん)医科大学病院に勤務する三十路のドクター。
何科に属するかを含めプロフィールが一切ない状態で、まずは「推し」を探すところから私は始めました。
最初に登場するのは、可愛くて子供や看護師からも人気の小児科医・丘奏真(おかそうま)と、学生時代から常に首席でエリートの心臓血管外科医・桑原孝成(くわはらたかなり)。
丘は身長が低いなど色々なコンプレックスを持っていて、仕事ができる桑原に対し苦手意識がありました。
恋愛対象も男性ではありません。
そんな丘が桑原によって、徐々に男性を愛することに目覚めていきます。
ここ数年、男性同士の恋愛ドラマをよく見かけますが、そこからさらに一歩踏み込んだ世界を描写できるのは、コミックスならではだと思います。
その次に出てくるのが、交際8年、夫婦(めおと)同然の公認カップル、麻酔科医の浦部剛(うらべごう)と脳神経外科医の匡雅広(きょうまさひろ)。
陽気でいつも輪の中心にいる人気者の浦部に対し、匡は陰気で無愛想で近寄り難い真逆のタイプ。
この2人が同棲するきっかけとなったのは……、
この同棲カップルが徐々にすれ違い、別れの危機がやってきます。
私はこの話を読むうちに、だんだん匡が可愛く見えてきました。
とにかく不器用なのです。責任感が強く仕事熱心なのに、考えていることと態度がちぐはぐ。
そんな匡に対し、消化器内科医の佐久間がこんなことを言います。
患者にはこと細かに説明するくせに
自分のこととなるとからきしだめだな
人間、誰しもこういうことはありますよね。他人のことなら分かるのに、自分のことはよく見えていないということ。
『Dr.系男子の恋愛カルテ』はメインカップルだけでなく、他のドクターたちが所々に出てきて、彼らを優しく見守っている感じがまたいいのです。
何もかも真逆の浦部と匡ですが、お互いにないものを相手が持っているからこそ惹かれあったことを思い出します。
そして、気難しかった匡が、少しずつ変わり始めます。
実は読む前は、何人ものドクターが入り乱れる恋愛話かと思ったのですがそうではなく、描かれるのは1人の人を思い続けるピュアな気持ち。
だから、所々過激な描写がありながらも、すんなりと読めたのだと思います。
そして、医療現場の様子がリアルなところも面白かったです。
例えば、私の友人も桑原のように医学部首席で心臓血管外科医になったし、外科は大学病院の花形なので、匡が脳神経外科というのも納得できます。
こうした診療科別ドクターの描き分けが、あるあるなのです。
また、人によって麻酔の効き方が違うので、執刀医は患者が目を覚ますまで帰らないという話や、救急のときの様子など、私が見聞きしたものと近くて興味深かったです。
救急といえば、私が最初に推しに選んだのは、救命救急科医の富田と産婦人科医の本条。
2人とも麗しいのでお似合いだと思うのですが、果たして次はどんなカップルがどんな設定で登場するのか、今から想像が止まりません!!
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp