まず、この本を手にして驚くのは、2.5センチほどある厚み。作品ページ数が319という普通の漫画の2倍近い分量に、なんだか凄いことが起こりそう!!と期待が膨らみます。
そして読み終えた時には、圧倒的な熱量に、この連載はこの先どれくらい続くのだろうかと思ってしまいました。
それほど世界観もスケールも、壮大なのです。
話の対立関係は非常にわかりやすく、魂を持つ100双の手袋「ハンドレッド(Hand-Red)」vs. 職人靴団(しょくにんかだん)「ブーツレグ」。
まずは、主人公のゼンが「ブーツレグ」の一員になる前から、話は始まります。
7年前、両親と妹と自分の左足を「ハンドレッド」の1つである「シェイクハンド」に奪われたゼン・ベネディクト(14歳)。ゼンは、イギリス人の父と日本人の母のダブルで、両親達の仇を討つため、イギリスで1人で暮らしています。
何かと世話を焼いてくれる医者のリリイに武術の手ほどきを受けるゼンですが、義足に書かれた「青二才」(意味:経験に乏しい若い男)という文字の呪縛にとらわれ、弱い自分に苛立つ毎日でした。
そんなある日、突然「シェイクハンド」が現れ、対決することに。
この漫画が、単なる悪と戦う話ではなく、読者を惹きつける魅力の1つは、こうした心の在り方や「言霊(ことだま)」「魂」など、私たちが日ごろ大切にしている人間の本質を突いてくるところだと思います。
ゼンの義足を作ったのは、「ブーツレグ」のボスであるツバキ・ハイカズキ。
ツバキは靴に「言霊」を与えることができ、いよいよ“そのとき”がやってきたのです。
実は、ゼンが自信を持てずにいた「青二才」という文字には秘密があり、「言霊」によって力を得たゼンは、「ブーツレグ」の一員になります。
その後、誰よりも速く走ることができるエリオ、日本からやって来た鍛冶屋の24代目マサムネも、仇を討つため「ブーツレグ」に加わります。
彼らの靴にも、それぞれの特性を表す「言霊」が “漢字三文字”で刻まれており、その能力を使って戦うのですが、この“漢字三文字”がまたカッコいいのです。
日本人としてのアイデンティティが、くすぐられるのです。
ゼンもエリオもマサムネも、それぞれの仇は当事者しか倒すことができません。最終的には1対1なのです。
しかし、どの戦いも仲間を助ける総力戦。そのお互いを助け合う姿が、またいいのです。
このほかにも「ブーツレグ」は、流派・家元・棟梁・隊と大掛かりな組織構成になっていて、対する「ハンドレッド」も自然災害型、呪血顕現(じゅけつけんげん)型と種類があるので、今後どういう組み合わせで戦闘するのだろう? 「ブーツレグ」にはどんな団員が加わるのだろう? という楽しみもあります。
最後に、出てくるキャラクター達がとってもキュートなのも、この作品のもう1つの魅力です。
いつも明るいリリイもチャーミングですが、最初はつっけんどんだったエリオが心を開いた途端、急にゼンとの距離を縮めてくる人懐こさも可愛い。
そしてマサムネ。なんですか!! 14歳にして、この色っぽい腰つき!!
「ブートレグ」を英語にすると海賊版。
本当の魂を宿す手袋「ハンドレッド」に対し、海賊版でしかない「ブーツレグ」の戦績はゼロ。
それでも、「言霊」が持つ威力が半端ではないことをきっとこの先、見せつけてくれることでしょう。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp