戦隊ヒーローと悪の組織の王女が恋に落ちる……、この設定を聞いただけで、これは絶対に面白いぞ!!と思ったのですが、その直感は間違っていませんでした。
敵対する組織に属する2人が愛し合う図式は、まさにロミオ&ジュリエット。
この恋愛の王道に、戦隊モノにお決まりの火薬がドッカーン!みたいな意表を突く笑いがあちらこちらに仕掛けられていて、まさに今の地球が必要としている笑いはコレだ!!と思ってしまいました。
ヒーロー戦隊ジェラート5(ファイブ)のリーダー・レッドジェラートこと相川不動が一目惚れした相手は、秘密結社ゲッコー戦闘員リーダー・死神王女こと禍原 (まがはら) デス美。
不動から、突然夜中の廃墟に呼び出されたデス美は、「一騎討ちの御所望か?」と戦闘モードで臨みますが、“告られる”という不意打ちをくらいます。
まあ、そうなりますよね。ましてやデス美の場合、「私を好む男などいるはずがない」と思い込んでいたのですから。
ところが、不器用ながらも不動は、凍てついたデス美の心を溶かしていきます。この2人のやり取りが、もう可笑しくて可笑しくて。
戦隊モノという壮大な架空の話に、突如として出て来る生活感あふれる身近なネタ。これが全編に埋め込まれていて、思わず笑ってしまうのです。
内緒で付き合い始めた2人は、戦闘中もみんなと離れてこっそり会うのですが、それがバレそうになると……、
何度読んでも笑ってしまう、分かっているのに笑ってしまう、この決して外さない笑いはもちろんですが、この作品のもう1つの魅力は、デス美の可愛らしさとギャップです。
今まで戦場でしか会えなかった2人は、普通のデートをする約束をします。それを言い出したのはデス美でした。
「憧れだったんだ。恋人とのデート…」
「私にはこんな機会なんて絶対に訪れないと決めつけていたから──」
なんて幼気(いたいけ)なの!! 悪のリーダーとしてどうあるべきかを自分に言い聞かせ、普通の女の子としての幸せを自ら封印していたのでしょう。
こうしたデス美のセリフは、結構刺さりました。自分で自分のことを決めつけてはいけないなと。
ビジュアルも性格も、とにかく可愛いデス美は、初デートの私服もリボンが付いたフレアミニと気合いが入っています。
不動よ、デス美の気持ちを察してくれ!と思うのですが、不動は恋愛経験ゼロの筋トレオバケ。
デートプランを練るために散々リサーチしたにもかかわらず、デス美を連れて行ったのはトレーニングジムでした。
しかもその後、食事にも行かず……。
あぁ、もう絶対にナシだわ、一気に覚めるわ、こんな男、と私なら思うのですが、デス美は違うのです。大人だし、いい女なのですよ。
デス美って何歳? 絶対に不動より年上だよね、と思いながら読み進めていくと、デス美は都内の高校に通う女子高生だということがわかりました。
しかも住んでいるのは、秘密結社ゲッコーの女性スタッフも多数入居している普通の女子寮!!
悪の女王といえば、ドクロ細工が施されたソファに足を組んで座り、手下どもがかしずく……みたいな姿を想像すると思うのですが、女子寮って!!
本当は、もっともっと色々なことを言いたいのです。だけどネタバレになるので言えないのです。
だから、単刀直入に言います。
つべこべ言わずに、いいから読んでみて! 絶対に笑うから!!