佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS)、橋本環奈W主演の映画が近日公開予定で、原作は『medium 霊媒探偵城塚翡翠』でミステリランキング3冠、2020年本屋大賞ノミネート、吉川英治文学新人賞候補の相沢沙呼(あいざわさこ)氏が書いた小説『小説の神様』ときたら、もう間違いないでしょ!!
そう思って読み始めたのですが、正直その期待以上でした!!
漫画を担当した手名町紗帆(てなまちさほ)氏の描く絵が、綺麗でお洒落で、キャラクター達も生き生きとしているのです。
青春時代の煌(きら)めきや心の揺らぎやジレンマが、春という季節と共にとても繊細に描かれていて、小説とはまた違った世界が楽しめます。
「僕は多分 主人公になれない人間だ」と思っている高校2年の千谷一也(ちたにいちや)は、千谷一夜のペンネームで何冊か本を出したことがある売れない小説家。心ないネットの書き込みに深く傷つき、小説を書き続ける意味を見失っていました。
そんなとき編集者の提案でチームを組んで小説を書くことになるのですが、その相手というのが同じクラスの転校生、小余綾詩凪(こゆるぎしいな)。
実は小余綾詩凪は、一也と同時期に新人賞を受賞し、今では売れっ子作家の不動詩凪(ふどうしいな)だったのです。
周りから“文芸部の陰キャ男”と言われている一也にとって、まばゆいほどのオーラをまとった詩凪との初めての会話は最悪でした。
同級生たちには内緒で、タッグを組んで小説を作ることになった一也と詩凪は、小説家としても同級生としても対照的。
教室にいるときの詩凪は、控えめでお上品な令嬢風なのに、一也といるときは勝ち気でタカビー。
詩凪にやり込められる一也のやり取りが所々に出て来るのですが、これがたまらなく可愛いのです。
こうしたコミカルな要素もありながら、一也の家族のこと、売れない作家としての苦悩やバッシング、なぜプライドを捨ててまで詩凪と組まざるを得なかったのかなども丁寧に描かれているので、最初からグイグイと話に引き込まれました。
こんなに情報量が多く、2人が創る小説の話も出て来るのに、なぜすんなりと頭に入って来たのだろう?と、もう一度読み直してみると、現在と過去の回想シーンがとてもスムーズに混ざり合っていることに気づきました。
思わず、巧いなぁと唸ったのですが、だからこそテンポが良く、話にも集中できた気がします。
こうした構成は原作の小説とは若干違うので、先に小説を読んだ人でも十分楽しめる作品になっていますし、逆にコミックスを読んでから小説を読むと、さらに一也の気持ちに寄り添えると思います。
小説の世界に限らず、若くして成功を手に入れた人は、その後が大変だろうなぁと日頃から思っていました。この先何十年とその座をキープし続けなければならないし、才能の限界に気づいてその座から降るのも、しんどいだろうなって。
それを思うと、夢を追い続けているのも悪くないかもしれません。まだまだ目指すべきものがあるわけですから。
まぁ、負け惜しみ半分ですが(笑)。
それにしても詩凪は、美少女に相応(ふさわ)しく謎だらけです。
なぜ、成績優秀なのに転校して来たのか? 何に怯えているのか?
なぜ、売れない作家である一也とわざわざ組もうと思ったのか?
初めて文芸部に現れたときに詩凪が言った言葉、
『小説の神様』とは、一体、どういう存在なのか?
この続きが、早く読みたい!!と思いました
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp