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2019.09.02

レビュー

ステキな恋のあとには、もーっとステキな結婚が!! 甘あまウェディングオムニバス

少女のみなさんも、大人のみなさんも、ぜひ

まさか大人になってからも少女まんがに夢中のままだなんて……大人になってよかった。少女だったころに読者になりたかったなーと思いつつも、ノスタルジーとか年長者目線じゃない「ふだんの自分」が心底楽しんでいる作品が多いのだ。世界観に夢があって、まっすぐで、かわいい。だから「キャー」や「まじ!」や「心臓がー!」みたいなリアクションボイスが止まらない。私は少女まんがを読んでいる時が一番騒々しいと思う。浮かれまくった女子会をワンマンでやっているような状態になる。

『ジミ婚』も大騒ぎしながら読んだ。ふだんは結婚に対してシニカルなことを想像しがちなのに、甘あまなウェディングの世界に素直に飛び込めたので自分でもびっくりした。



「わぁ……」って私もなったよ。少女まんがパワー、ほんとすごい。

ありとあらゆる胸キュンプロポーズが4つも

『ジミ婚』の主人公は4人の女の子。彼女たちがどんな恋をして結婚に至ったかをオムニバス形式で描いている。プロポーズ、指輪、ウェディングドレス……「結婚」から連想される一番華やかでキュンとなる瞬間がずっと読めて、しかも全てのお話はハッピーなことが約束されている。夢!!! 

でも、盛り盛りなのは夢だけじゃない。主人公たちのドラマも濃密。読後「これ1話完結だったの……?」とハッとする。1話なのに、体感で3巻くらい読んだ気持ちになる。遠山えま先生の作品は、少女まんがらしい設定のぶっ飛び感が楽しいし、大人っぽいセリフが忘れられないし、エピソードの流れがめちゃくちゃ小気味いい。

たとえば、1話目の『bride1 逆プロポーズ花嫁』はこんな感じ。

主人公の“美仁花(みにか)”は「赤ちゃんの頃に一目ぼれ」をします。「産湯の光景を覚えている」と語った文学者がいましたが、パンチ力は美仁花ちゃんの方が上かも。いいわ、1ページ目からトップスピード。



一目ぼれの相手“きょーちゃん”は10歳上。美仁花ちゃんは、小学生の時点できょーちゃんへプロポーズを済ませている。知り合って6年以上なわけですし、妥当な流れですね。大人になったきょーちゃんは美仁花ちゃんの高校で数学教師をしています。



16歳になった今もきょーちゃんのことが大好き。結婚したい気持ちも高まる一方。……ここからは、私が「少女まんが最高だな」と思うポイントを交えつつ紹介します。

まず「親問題」。子供の頃に想定する「親問題」って強烈で、切っても切れない重大要素だ。これを明るくカラッと解決してくれる。



ママ2人も子供達の結婚にノリノリ。仲がいいって大事。
でも、大人という障壁がクリアされていても、不安や困難はある。



「ちがうよ」というセリフに胸をクッとつかまれる。かわいくて甘あまだけど、痛いくらい本気。きょーちゃんの本心はどうなんだろう……? そんなハラハラを乗り越え、晴れて迎えたプロポーズ。私は「心臓がもたない」と思った。ピュアと夢とトキメキが炸裂している。あのシーンは1コマも引用できない。読んでほしい。

こんなふうに「親や先生がいる世界」を無視せずに物語をのびのびと飛躍させて、かわいさと本気が共生して、最終的に心臓バクバクにさせる少女まんがが大好きだ。『ジミ婚』もそんなバランスの良さとドライブ感が美しい少女まんがだ。



10年ぶりに会った初恋の男の子(金髪の美少年)からプロポーズ……と思ったら結婚詐欺!? な『bride3 咲き初め花嫁』。「お金はあげられません」とハッキリ言うところも、大切に育てた牡丹の花を差し出しながら「恋をした自分」を伝えるいじらしさも、どっちも好きだ。

『bride4 おもーい花婿とかるーい花嫁』の主人公“軽石”さんもステキ。

くるんとカールした髪の毛、丁寧なスキンケア、おしゃれな部屋着……こんな高校生になりたかった! かるーい恋をしまくる軽石さんの心情と、愛が重い男子との恋に、やさしい気持ちになる。あと、このページに描かれているセリフと要素たちはあとあとの展開でさりげなく効いてくるので、流れがとても美しいなと思う。

そして、最後に紹介する『bride2 ふたりじめ花嫁』。


メガネが似合う科学部部長で一人称が「ボク」の理系女子“理華子”は訳あって茶道の家元の家に嫁いだけれど、花婿は1人じゃなくて……? 忙しい! でも1話完結でキレイに描かれている。「どうにかならないのかな」と悩んで、ちゃんとハッピーエンドを弾き出すパワーが気持ちいい。

『ジミ婚』の女の子たちは、恋のかたちも、プロポーズのシーンも、本人の容姿も、考え方も、バラバラ。でも、みんなハッピーエンドを自分で引き寄せる力があって、そのハッピーエンドの甘あまっぷりがハンパないところは同じ。これだから少女まんがってやめられない!

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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