好きなラジオ番組があります。そこで何度も紹介されていたのが「マシンガンズというお笑いコンビの滝沢っていう芸人がいて、彼がゴミ清掃員をしているんだけど、その話が面白い」というものでした。気になって滝沢さんのTwitter(@takizawa0914)をのぞいてみました。「#ゴミ清掃員の日常」のハッシュタグでまとめて読めます。
芸人×ゴミ清掃員 「#ゴミ清掃員の日常」誕生まで
滝沢さんはマシンガンズというお笑い芸人をしています。相方は西堀さん。芸歴は20年以上になります。
お笑い芸人ではありますが、その収入は決して多くはありませんでした。
しかしそんな中、奥様の妊娠によりお金が必要に。しかし36歳を過ぎるとアルバイトすらありません。そこでお笑いの道をあきらめた知人に電話をして仕事の相談をすると、「ゴミ清掃員」を紹介されます。
こうして知人の伝手により「ゴミ清掃員」と「芸人」ふたつの顔を持つ人になります。早朝からゴミ清掃員として働き、夜は芸人に。
そんな滝沢さんの「ゴミ清掃員」と「芸人」の知識と経験と面白い部分が繋がったのがTwitterでした。
滝沢さんの「#ゴミ清掃員の日常」のツイートを見ていると、ゴミから社会や街が見えてきます。ゴミを出さない人はほぼいない。ゴミとは暮らしの一部、人生の一部、人の一部、そう感じられるようになります。
ゴミの分別がしたくなる! 便利な知識がいっぱい
滝沢さんの「#ゴミ清掃員の日常」を眺めていると、何気ないゴミの話ですが、自分の暮らしにも役立つ知識でいっぱいです。今回は漫画なので視覚的にパッと理解ができ、Twitterの文字だけの面白さから、さらにパワーアップしたように感じます。
本編からいくつか好きな部分を抜粋してご紹介します。
(1)竹串の「なるほど!」な捨て方
竹串は家庭でもよく使う消耗品。先端が尖っているので、そのまま捨てるとゴミ袋に穴が空いたり裂けてしまったり。清掃員の怪我の原因にも。そこで牛乳パックや箱ティッシュに詰めて先端が刺さらない工夫をして捨てている方がいて感心したというエピソード。これならワタシもできることだからやってみよう! と思えました。清掃員の方に怪我をしてほしくないなので、ちょっとでもお役に立てるなら、家で一手間かけたいな、とも。
マンション暮らしなので、ゴミ清掃員の方とやりとりする機会はなかなかありません。でも、こういう裏話に触れることで、とても勉強になりました。
(2)ビデオテープやCDなどのプラスチックは「可燃ゴミ」になった!? 焼却場の進化を知る
昔、「プラスチックは不燃ゴミ」というふうに習ったと、なんとなく記憶しています。今住んでいる自治体に引っ越してきたら、ゴミ分類図で「可燃」になっていました。
「いいのかなぁ? 本当に捨てていいのかなぁ?」
ずっと不思議だったのですが、この漫画を読んでやっとしっくりきました。焼却場のゴミを燃やす性能が進化して、今はプラスチックも高温で燃やせるようになり、有害な煙が出る問題も解決できているとのこと。CDやビデオテープが可燃ゴミに変わった理由がわかってスッキリしました。(※自治体・地域によって捨て方のルールが違うので、詳しくはご自身の自治体のゴミの分別をご確認ください)
(3)ゴミの集積所から街が見えてくる
これは不動産関係の仕事をしている友人や、店舗関係の仕事をしていた両親からも聞いていた話だったので特に興味深かったです。
「引っ越しで家を探すとき、マンションだったらマンション内にあるゴミステーションをチェックして綺麗な所は管理がしっかりしてるからいいよ。ゴミステーションが綺麗なところは住んでいる人もマナーがいい確率が高い」
「集積所が綺麗な所は街のコミュニティがあるから住みやすいよ」
ワタシも物件選びをするときは、ゴミステーションがあるかどうか、管理がちゃんとされているか、そこのゴミが荒れていないか、汚れ過ぎていないかなどをチェックしていました。人から教えてもらって、なんとなくそうなのかなぁと思っていた部分が、清掃員の方による解説でさらに納得。
ゴミは生活に直結している。ゴミってそもそも何だろう?
ゴミは生活の一部であり、人の暮らしの一番末端部分になるのかもしれません。そこにはいろいろな事情はありますが、その人の気遣いとか優しさとか誠意のようなものが出ます。「ゴミをきちんと出せる」はその人が本当に考えていることや心の近い部分を知ることになるのかも。
ちなみに、ワタシが今の夫と家族になろうと決めた理由のひとつも、「部屋が綺麗で、ゴミの分別がメチャクチャ丁寧」でした。ワタシがいるからしているのではなく、普段からしているから、手際良くささっと分別する姿を見たとき、後光が差しているようでした。「見えないところも丁寧っていうのは、他人に対して想像力もあって、自分にも他人にも誠実な人なんだろうなぁ。こういう人は嘘ついたりしないだろうなぁ」と思ったからです。漫画を読んでいて、これは間違いないなと感じました。
漫画を読んでいると清掃員の日常を通して「ゴミって何だろう?」という根本的な部分に考えが辿り着きます。
ゴミをなるべく少なくする工夫をすれば片付ける時間も減る。片付ける時間が減ればゆとりも生まれる。ゆとりがあれば他者を想像する時間が持てる。ゴミをなくすのは今の社会で生きていくには難しいですが、ゴミを減らす工夫はできるなと思いました。
「ゴミ」についてちょっと考えてみる。分別をもう1回見直してみる。暮らしを見直すきっかけにオススメの漫画です。Twitterを追いかけていると、滝沢さんのゴミ清掃員あるあるから、自分のゴミ分別を「#ゴミ清掃員の日常」のハッシュタグに投稿する人もいて、ちょっと優しいゴミの捨て方に触れることもできて、素敵な連鎖があるなと思います。
レビュアー
AYANO USAMURA Illustrator / Art Director 1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始、17歳でフリーランスになる。万年筆で絵を描くのが得意。本が好き。