作者は、ご存知、『デトロイト・メタル・シティ』や『みんな! エスパーだよ!』などを手がけてきた若杉公徳氏。今作も、下ネタ満載の型破りなギャグで、思いっきり笑わせてくれるに違いない!
……と、思っていたら、あら……? シリアス路線!?
「謎のバケモノ」と「スクールカースト」という新しい切り口で、リアル&笑えるサバイバルが始まる!
主人公は、スクールカースト最下位の男子高校生、笹塚亮太。
平穏な日常の中、突然、亮太の通う学校に謎のバケモノが現れ、生徒たちに襲いかかった。
大量の人間が食われ、殺された後、生き延びて救助を待つために、ひとつのルールが決められた。「一日に一人を、エサとして差し出す」と。
エサになる「要らない人間」を決めるのは、スクールカースト最上位にいる3人。
頭が良くて人気者のイケメンをリーダーに、暴力上等のヤンキー、ヤンキーに乳を揉(も)ませるビッチギャルというラインナップ。
「いるいる、そういうヤツ!」的に、リアルなカースト上位組だ。
その下に位置するのは、キックボクシングで体を鍛えているショートカット美少女と、カメラを回す記録係のメガネ男子生徒。これまた、カーストの真ん中にいそうなテイスト(笑)。
そしてカースト最下位が、主人公の亮太と、TENGAをこよなく愛する童貞のまんちゃんだ。見知らぬパシリ同士だった2人は、力を合わせて雑用係となり、これまで生き延びてきた。
残るはこの7人という状況の中で、雑用組は、ついにリーダーのイケメンくんから「明日のエサ、二人のどっちかね」と宣言されてしまう……!
しかし、そこはさすがの若杉作品の主人公。「人の命をバカにしやがって」と拳を握りしめながらオナニーしたり、ショートカット美少女に「僕らのどっちかと、セックスしてもらえません? できた方がエサになりますんで」と真剣にお願いしたり。生きるか死ぬかの瀬戸際だからこそ真剣で笑える安定の下ネタ力を見せつける!
パシリ2人組は、共同戦線で戦うことを決意する。が、固い絆(パシリの)で結ばれていたはずのまんちゃんに、亮太はあっさり裏切られてしまう。このあたりもリアル~!
それでも一緒に生き延びようとする亮太だが、結果、まんちゃんは食われ、エサになってしまう。
亮太は、まんちゃんを追悼し、愛用していたTENGAを捧げながら「絶対に生き延びてやる」と決意する。って、追憶の回想シーン、TENGA関係のエピソードだけか~い!
亮太が生き延びようとする中、スクールカーストの最上位3人をはじめとする、それぞれのエピソードも登場。意外な思いや背景が見え隠れする中、ストーリーは急展開していく。
特に、「エサになる=死」に直面した時に取る行動には、「やっぱ人間、そうだよねえ、そうなるよねえ」と思わせるリアルさがあるのだ。コトの発端を回想するシーンでは、唯一生き残っていた教師の、命根性の汚さなどにも触れている。
要所で笑わせながらも、サバイバルを通じて描かれる人間観察は、非常に鋭く、そして面白い。下ネタ満載のギャグ漫画を進化させ、独自の境地に向かう本作に、ぜひ注目したい。ギャグ漫画好きはもちろん、人間心理を描くシリアス漫画好きも、きっとハマる!
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レビュアー
貸本屋店主。都内某所で50年以上続く会員制貸本屋の3代目店主。毎月50~70冊の新刊漫画を読み続けている。趣味に偏りあり。
https://note.mu/mariyutaka