2018年某日、オカルティック架空戦記『キヘイ戰記』(「月刊少年シリウス」にて連載中)の刊行を記念し、オカルト界の識者と名高い 「ムー」編集長・三上丈晴氏にインタビューを行った。 単行本作業中の作者・原田ケンタロー氏に代わり、「ムー」編集部を訪れたのは、シリウス編集部員・T。 果たして『キヘイ戰記』は、オカルトの権威から如何な黙示録が突き付けられるのか!? 貴重なインタビューを公開!!
【CHAPTER①】おしゃれなオーパーツ!?
シリウス編集部員・T(以下、T):この度はよろしくお願いいたします。
三上氏(以下、三):よろしくお願いします。
T:それではまず『キヘイ戰記』(※1)のご感想はどうでしたでしょうか?
三:オーパーツというか、オーパーツを超えた無敵なアイテムがたくさんあって、……というか入れすぎじゃないでしょうかね?
T:(笑)
※1:『キヘイ戰記』は、オーパーツをはじめ、古代遺物が武器化した世界観の作品です。
三:いきなり“ギルガメッシュ叙事詩”の石板ですもんね。用語がマイナーというか、 逆に、おしゃれだよね。
T:そうですね。最近ソシャゲとかアニメでも、いろんな神話がキャラ化してますし、 そういう用語が一般化しているのありますしね。
三:でも“三星堆(さんせいたい)遺跡(いせき)”(※2)とか、これ普通の人は知らないと思うけど。
※2:長江文明に属する、古代中国の遺跡。
T:確かにマイナーですね。(笑)
三:普通、オーパーツって古代ものですよね。ありがちなのは『インディ・ジョーンズ』みたいに、探検家がどっかに迷い込んで……ってのが定番だけど、これはバトル漫画なんですね。そういうのが、ゲームっぽいのかな。
T:確かに誰もが知ってるのだと、手垢が付きすぎている感があるので、原田先生と相談して、ネタのチョイスはややマニアックにしました。
三:“七(しち)支刀(しとう)”が、日本刀になってて……。
T:本来は、直刀なんですけどね。
三:そもそも、鞘に入んないよ鞘に。
T:普段は枝みたいな刃は生えてないんですけど、主人公がヤル気を出すと生えてきて……更にもっとヤル気を出すと、チェーンソーに変形します。
三:(笑)ただ、オーパーツは物として説明しないと分からない。たとえば“水晶髑髏(すいしょうどくろ)”だと、「水晶は固くて加工するのが難しいのに、古代マヤ文明の遺跡から出てきて」……って言わないと何だという。 だからオーパーツとは、ある種の“説得商品”なんですよ。
T:なるほど。
三:説明しないとわからない。物だけ見てもわからない。“黄金ジェット”(※3)だけ見ても、「はい何か?」っていう感じだよね。「三角翼飛行機と似てるでしょ! 垂直尾翼があるでしょ!」って言わないとわからない。
T:周辺の文化から語らないと、わからないものなんですね。
三:そうだね。
※3:コロンビアの古代遺跡から発掘された、スペースシャトルに似た黄金細工。
【CHAPTER②】陸軍中野学校vs.大英博物館!?
T:もともとこの作品は、かの大英博物館には、どさくさに紛れて蒐集(しゅうしゅう)された他国の品々があると、原田先生と話していたのが始まりでした。 そして、武器と化した古代遺物を集めている敵組織があり、それに対して日本の特殊兵科の“神軍”中野学校が立ち向かう、という設定が出来上がってきました。 更に第二次世界大戦がこの遺跡の力で休戦してしまうという、いわば、フィリップ・K・ディックの『高い塔の男』みたいな仮想SF世界みたいな感じですね。
三:読者はどういう感覚でオーパーツ(※4)を読んでるのかね。いちいち「オーパーツだ!!」とか、「インド神話!」とか思いながら見てるのかな。
T:大体の読者は、オーパーツにそこまで知識がないから、漫画上の創作物と思っている可能性もありますね。
三:『エヴァンゲリオン』とかでもさ、“命の木”とかさ、“ロンギヌスの槍”とかでてくるけど、どうなんだろうね。
T:『キヘイ戰記』でも、続く展開では“聖釘”が出てきますが……。
三:それは、オーパーツじゃなくて、聖遺物だよ。“場違い”じゃないよ。ちゃんとした処刑の道具だから。(笑)
※4:オーパーツとは、“場違いな工芸品(out of place artifacts)”の意味である。
T:そうですね。あと、誤解がないよう説明いたしますと、この作品では、オーパーツだけじゃなくて、すごい力を持つ聖遺物や古代遺物を“秘跡”と呼称しております。
三:なるほど。ところで、敵の組織は何なんですか?
T:敵は、“大叡(だいえい)博物館”です。
三:なんかスケール小さい気もしないわけではない。(笑) でも、実際は、裏にイギリス王室とかが控えているんじゃないの?
T:いえいえ、“大叡博物館”は大英博物館と同じ読みですが、別組織でして……。「日本の三種の神器全部よこせ!」とか言ってくる悪の組織です。
三:アレクサンドリア図書館っていうとなんかすごいなとは思うけど……。(笑)
T:あとイギリスを敵役にしたのは、スパイ活動でも有名だから、というのもありましたけどね。
【CHAPTER③】島、ヤバし!?
T:話は変わりますが、この作品の舞台である1945年で、実際に大戦の陰で暗躍していそうな組織や集団などありましたか?
三:イギリスは難しいよね。ナチスだったら、幹部のヒムラーとかが、リアルにそういうのを集めて、秘教的な“トゥーレ協会”や“ヴリル協会”を作っていたので、陰謀をたくらむ闇組織みたいな位置づけは簡単にできるけど。
三:イギリスってのは、王家があるからね。でもイギリス王室だって、イギリス人じゃないし。そもそもノルマン朝だってフランス人でしょ? 今のウィンザー朝はドイツ系。だから、戦争してる時だって、ロマノフ王朝もドイツ人。ロシアとドイツとイギリス、これ王様が親戚同士だから、ジョージ5世とニコライ2世と顔そっくりなんだよね。
T:なるほど、いとこ喧嘩みたいな感じですね。
三:いとこ同士で戦争やっている。
T:めちゃくちゃ迷惑な話ですね。(笑)
三:だから王室はハッキリしてる。 国教会もそうだけど、トップの王があって……公爵がある。公侯伯子男の、あの爵位。
三:そして、この公侯伯子男には全部騎士団がある。 で、この騎士団の中の、王……今で言うと女王陛下の騎士団が“ガーター騎士団”。要は、女王の前後を守るという武装組織な訳だ、騎士団はね。
T:ナイトの称号っていうのはそれですか? 騎士団に入れてあげる資格みたいなものですか?
三:ナイトはそう。で、騎士団っていうだけで、実は国なんだよね。だから、王様の騎士団、公爵の騎士団って領地持ってる。言ってみれば軍事組織なのね。それで、王様がいない騎士団もいるんだよね。
T:それは……?
三:マルタ騎士団。これ国でしょ? マルタ島にあるんだよ。
T:国土が無いんですっけ?
三:マルタ島のビルの一室にあるんだよ(笑) “マルタ騎士団国”っていう。でも、すごい力を持ってるんだよ、マルタ騎士団って。国連の中でも。
T:国としての歴史は古いですからね。
三:騎士団国って、そのナイトだとか、フリーメイソンみたいな……。
T:あ、なるほど。もし戦中にイギリスとかで陰謀的なことをやる集団が、仮にいるとすれば、そういう騎士団……?
三:たとえばある王様がいるでしょ? ヨーロッパの王族はみんな親戚だけど。その中で、島を領有してる人たち、自治国みたいな。 イギリスだと、マン島とか、アイルランドとか……あそこも一応自治領だよね。イギリス連邦の中には入ってるけど自治領。そういうところいっぱいあるかもしれない。 そういうところの王族がつくる組織がある。これが島のクラブ、すなわち“クラブ・オブ・ジ・アイルズ”で、けっこう国際的な権力をもっている。
T:島だと何かあるんですか?
三:民俗学も最後には島に行くんだよ。島の民俗学。古いものは島に残る。民俗学の基本。
T:興味深いですね。
三:だから、島には色んな神殿があるよね、マルタ島もそうでしょ? シチリア島も、そうだし。島なんだよ、ぜーんぶ島。
T:(笑)
三:だから、『キヘイ戰記』の最後の黒幕は、日本で締めればいい。
T:島だからですか!? 大叡博物館と見せかけて?
三:日本だって戦中いろんなところからものを集めてたしね。陸軍中野学校だって、旧日本軍はそうだよ。
【CHAPTER④】ギルガメッシュご本人登場!?
三:ちなみに、“ギルガメッシュ叙事詩”は読んだことあります?
T:ざっくり大筋は知ってますけど、詳しくは……。
三:あの中で、“ウト・ナピシュティム”っていう、不老長寿の伝説の人がいるんだけどさ。そのウトが、聖書に出てくる預言者ノアなんだよ。
T:そうなんですか!
三:“ノアの大洪水”のノアで、大洪水を生き延びた、それ以前の人なんだよ。だから大洪水伝説の、元だって言われている。まあ、ギルガメッシュ叙事詩よりも古いやつもあるんだけどね。
三:あと粘土板って、凄そうなことが書いてるように思うじゃない?
T:いかにもそんな感じしますね。
三:でも実際解読してみたら、「うちの息子が頭が悪くて、賄賂渡したのに全然よく成績が伸びない」ってごねてるよとか「あいつに金貸したのに返してくれねえ」とか書いてあるの。
T:それは雑な。(笑)
三:そういう愚痴を書いてる。
T:で、そんなのを書いた重たい粘土板を焼いてつくってたんですか?
三:日干し、日干し。
T:じゃあその愚痴を一日干したわけですね。(笑)
三:日記なんだよね、民衆の日記。
三:でも突然、シュメール文明って全部が完璧にできた状態で社会が始まる。 だから数学も完璧に出来てるし、文字もあるし言葉もあるし、大系として全部ある。社会システムもちゃんとある。建築の技術もちゃんと、全部そろった段階から始まっている。
三:だから先行文明があったに違いない、というわけだね。
T:シュメール人って異星人説もありますよね。
三:『キヘイ戰記』も異星人出てくるでしょ。単行本10巻ぐらいで出る。
T:断定!
三:もう1つのギルガメッシュの石板ってのがあって……。ギルガメッシュ本人が登場するかも。
T:あ、まだご存命で。(笑)
三:甦るんだよ!
【CHAPTER⑤】宇宙人黒幕説!?
三:あと三星堆で面白いのはね、目玉が飛び出た仮面がある。
T:そうですね。変わった形してますね。
三:あれはなぜでしょう?
T:あれは……??
三:ずっと謎だったんだけど、中国の古典のなかで“縦目”ってのが出てくる。縦の目。目が縦になっている風に描かれてきたけど、違うんだよ。立体的に縦だったことが、三星堆で分かった。
T:あ、そうなんですか!
三:だから中国の『封(ほう)神(しん)演義(えんぎ)』みたいなのってこういう縦目の顔で描かれる神様。実は違う、こっちになってるんだよ。これが縦目なんですね。
T:なるほど……。それは初めて聞きましたがそうだったんですか! でもずいぶんな異形ですよね。
三:だから偉人なんだよね。神々だから。それに、『封神演義』みたいのでも、目から手が出てるみたいなのもあるからね。
T:なるほど。
三:でも、神話ってそういうもんじゃん。実はこういう描写が元だったと。 “七支刀”もね、これは“メノラー(燭台)”だっていう話もあるしね。
T:ユダヤ式の燭台ですか。
三:ちなみに、三種の神器って、なんでしょう?
T:刀と勾玉と鏡じゃなかったですっけ?
三:これらは、すべてあるものをシンボライズしている。
T:シンボルですか?
三:鏡は分かりやすいよね、太陽。勾玉は三日月。剣はね、剣菱なんて言うけど星なんだよ。
T:なるほど。
三:つまり三種の神器で日月星を表す。日月星。日月星をもって、仏教では何を意味するのか!?
T:さて、なんでしょうか。
三:“三光”って呼んでる。で、この三光鳥を別な字で書くと……“斑鳩(いかるが)”になります。
T:ほー。
三:この星っていう字はね、こういう風に書いてるでしょ?でも、本来の字って、こんな感じなんだよ。(と言って“日”が3つ並ぶ字を記す三上氏)太陽が3つある。それっていうことは……。
T:昨日・今日・明日?
三:おっ、いいね! 近い
T:明日香?
三:そう、それぞれの文字に日が入っている。で、斑鳩に通じる。
T:ほ~~。
三:で、これを天台密教で言うと、“日天子”、“月天子”、“星天子”。この奥義はなんでしょう?
T:いや~~見当も……。
三:“日天子”、“月天子”、“星天子”っていう仏様は、奥義は合体すると、“明星天子”っていうんだよ。明けの明星。天台密教の奥義は、太陽でも月でもない、明けの明星、金星なんだよ。
三:だから、空海は明けの明星にのめり込んでいく。そして三種の神器も、実は日月星で最終的には明星なんだよ。
T:ほう……。
三:明星……。明けの明星。輝ける明けの明星。“ダビデのひこばえ”。
T:!?
三:そう。明けの明星は、“イエス・キリスト”なんだよ!
T:なんだってーッ!!
三:そしてこれがね、神様になってくるでしょ。これ(銅鏡)はアマテラス、これ(勾玉)はツクヨミ、これ(剣)はスサオノになる。これ合わせて、三貴子(みはしらのうずみこ)。っていうわけだよ。でもこの正体は、ジーザス・クライストなんだよ!
T:なんだって───ッ!!!
三:つまり、最終的にシュメール人になるということ。日本のルーツは、シュメールだ。
T:それはどういう……?
三:シュメール人て、シュメールって発音じゃそもそもないから。“スメル”なんだよ。でもスメルってやると“畏れ多い言葉”になっちゃうから、戦前の歴史学会はこれをシュメールっていう表記に変えたんだよ。だから昔は、“スメル学会”ってあったんだよ。
T:それは初耳です。
三:日本スメル学会というのが、日本のルーツは、シュメール人だって提唱していた。『天孫人種六千年史の研究』っていう分厚い本があったが、発禁書だった。
T:それは今でも出せないかもですね。
三:で、まあシュメール人のルーツはねえ、ご存知の通り、アヌンナキ。異星人。
T:な……なんだって──ッ!!!!!
三:ということは日本のルーツは、異星人ではないのか!? だから、絶対、異星人が出てくるからね! 『キヘイ戰記』の10巻で!
【CHAPTER⑥】全てはシュメールに、異星人に繋がる!!
三:シュメールはね、どうしてもいくんだよ、“アヌンナキ”に。その前に巨人出てくる。
T:アメリカのスミソニアン博物館に巨人の化石があるって話がありますからね。
三:スミソニアンは、マジ。あと、さっきの“ヴィマナ”は兵器だからね。だってこれに乗って神々が闘ってるんだもん。戦闘機というか。でこの兵器の中で一番凄いのは“アストラ”っていうんだよ。この“アストラ”が核兵器なんだよ。
T:えっ!?
三:古代インド核戦争。『マハーバーラタ』とか『ラーマーヤナ』(※5)のその記述は、100パーセント核。核爆発。だって黒い雨とか降るんだよ。体に着くと、すぐ洗い流さなきゃみたいな。で、髪の毛が抜けたとかさ。 でもあれは古代のことではなく、予言だって話もあるけど。すべからく神話は予言になる。読み替えとして。
T:なるほど……。
※5:『マハーバーラタ』、『ラーマーヤナ』…古代インドの二大叙事詩。
三:あと、作中に出てくる“ヴァジュラ(三鈷杵)”は元々はシヴァの武器。シンプルに言う所の“三叉(みつまた)”。だから、シヴァとはポセイドンだよ。
T:ポセイドンも三叉の“トライデント”を持ってましたね。
三:だけどインド神話って、インド・アーリア語っていうくらいで全部同じでしょ?ギリシア神話とか。たとえば、インドラはお隣のイランやペルシア行くと、“デーヴァ”って呼ばれる。これが、“デーモン”となってくるんだよ。で、アシュラは、“アスラ”でしょ? これは、ペルシア行くと“アフラ・マズダ”になってくる。
T:ほ〜〜〜。
三:特にデウス……あのインドラが“デーヴァ”、そして“ディアウス”っていうんだ。この“ディアブス”がゼウスだもん。で、この“ディアウスピテル”っていうのが“ジュピター”。だからデウスもジュピターも意味は同じ。
T:一緒なんですね。
三:そう同じ。そして、そのルーツは全部シュメールに集約される。北欧神話もみんなそう。
T:北欧神話もそうですか?
三:うん、“トール”もゼウスだ。で、全部シュメールになってくる。ってことで異星人だ!
T:シュメール人を絡めると、最終的には宇宙に話が行くんですね。『キヘイ戰記』も長期連載となったら、確かに異星人が出てくるかもですね。。。
三:間違いないね。
三上編集長、貴重なお話、どうもありがとうございました! 編集長には帯コメントも頂きましたので、『キヘイ戰記』の単行本をぜひご確認ください!
※インタビューに掲載しているモノクロ画像は本誌初出、コミックス第1巻に収録されているものです。カラーイラストはコミックス第1巻の書影です。